朝ごはんの焼き魚を宮城沖産の鯖干し、黒豆の砂糖レス煮、春キャベツと胡瓜の浅漬け、到来品のゼンマイ五目煮、等で和的にきめる。駅前にある小田急OXのスーパーは他店スーパーよりも全ての商品が二、三割高い。しかし干物、紅鮭などはどなたかバイヤーに目や舌が効く人がいるらしい。先日弁当のおにぎりに使った時鮭の甘塩の切り身からも昭和30年頃に食べた鮭の香りが珍しく舞い上がってきた。今回の鯖も塩加減が素晴らしい。身を覆う飴色の焦げ目をほぐす時の至福感は格別の390円である。
食後は湯河原産の柑橘種「はるか」が待っている。こういう献立の秩序が回復すると休日の散歩はよい形に連なっていくものだ。雨降りのお天気配分がよく公営住宅の空き地にも春を物語る草花が控え目に現れている。
ごみ捨て場の横にある椿の生け垣が植えてある地面の隙間には「つくし」が勢ぞろいしている。末尾に原という名称がつく昔の土の記憶を「つくし」は地下茎の根をとおして伝播しあっているのだ。この「つくし」をもいで沖縄陶器の「チョカ」に挿してみる。「つくし」をほのぼのと眺めていたら、前に住んでいた日向薬師付近の野原を眺めたくなった。日向薬師へ向かう最近のルートは国道246をやめて、座間から丹沢山系とまっすぐに対面できる相模川の「座架依橋」を通るコースが好きになった。厚木北部の三田、萩野の田舎混在景色を眺めながら、玉川の流れる小野地区、七沢温泉を通過して日向へ向かう。
このエリアは内陸のせいか桜がちょうど満開になっている。付近に連なる地山では雑木の青葉、山桜が淡彩絵模様、川の縁には菜の花、人家の庭先では連翹(れんぎょう)、ああ、春だと思う毎年の心境である。懐かしい日向薬師の地元住民の社になっている白髭神社もちょうど桜が満開、鱒釣り場の駐車場に聳える桜の大木も満開、桜の園へやってきた気分を満喫する。
いつもの散歩コース、菜の花畑と竹藪のある神社横のパサージュ(小道)は春の野辺の宝庫だ。カントウタンポポ、蛇イチゴ等の好きな野草の隙間では、薄紫色の菫・スミレ(学名ビオラ・マンジェ)にもであう。園芸品種などの近縁なスミレ類はごまんと溢れるが、野辺の和種スミレもほんとうに少なくなっている。園芸家、柳 宗民さんがスミレを愛でている言葉を思い出す。「スプリング・エフェメラル(春のはかない生命)」という響きのきれいな言葉どおり、今日のプチ散歩は桜といい、スミレといいまさに「スプリング・エフェメラル」を体感できるひと時になった。
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