綿雲、鱗雲、南からの湿った風が寄せてきて雲の表情が豊かに変わる秋空だ。お袋への湖月堂「栗饅頭」差し入れを迷っていたが、この雲に曳かれて伊勢原までバイクを走らせる。体感温度は夏に戻ったみたいで真夏のフリマで買った「ウールリッチ」製木綿半袖シャツのみでも片道15キロを走る心細さはない。海老名、河原口に近い相模川「あゆみ橋」付近では真夏に見かけた川に立ちこんで釣りをする鮎師の姿も消えている。やはり十月である。内陸部の畑ではサトイモ、サツマイモの類が実ってきて大きな葉が揺らいでいる。
お袋との面談は1時間半、施設側では差し入れ品を忌避する傾向があるが、仏壇の上で追熟させておいたミカンを払い下げて一個、栗饅頭と松江の「薄小倉」を各一個、早生の「フジ」林檎も小カットして塩水に浸したものをお土産にする。昼食の後なのに「栗饅頭」の中身の白餡に包まれた本物の栗を半割にしながら「美味いね」としきりに称賛する。どんどん干からびて小さくなって現在体重は36キロ、それでも味覚は衰えることもないようだ。施設員の外来食品検閲にもめげないように、もうひとつの松江名物をズボンの内側へ隠して何度もその所在を確認している。きっと明日の小腹がすいたときの備蓄にしようという戦前、戦後社会を生き抜いてきた知恵は今も生きているようだ。施設の二階エレベータで別れを惜しむお辞儀をしているお袋の肩をポンと叩いて、今度は柿でも持ってくるからな!とぞんざいな口をきいてから戸外に出る。
青空が眩しい。施設に近い田舎道で伊勢原らしいコスモス風景を愛でてから久しぶりの「わくわく広場」へ顔を出す。しばらく「わくわく」感を喪失してしまったこのスーパーでは農産品のスローものを選ぶ。熱海産原木シイタケ、わけぎの種、足柄狩野産放し飼い鶏の「青玉子」等にちょっぴりわくわくしながら帰路へつく。
国道129号から厚木旧市街地を抜けることはいつもと同じだが、海老名の国分南付近のやはり田舎道を「目久尻川」に沿って座間の自宅へ近い栗原中央辺りに抜ける間道を覚える。川べりの秋風はやはり心地がよい。
成瀬監督の作品、昔子供時代の記憶にはありますが朦朧としています。こんどDVDであの時代の映画見てみたいと思っているところです。厚木図書館も覗いてみたいですね。村上春樹がモンクですか?彼の手になればモンクの孤高はちゃんとした絵や音を帯びることでしょう。「ヒムセルフ」
「ソロ」などは不滅です。