急に譲り受け話のまとまった古い英国のビンテージスピーカー、バイタボックスの同軸型30センチ・オリジナルボックス付きのペア品が座間の部屋に収まった。そしてもう音楽が鳴り出して実に快適な気分になっている。この快適感は以前に所有したJBLのハーツフィールド、亡くなってしまった大岡さんから譲ってもらったグッドマンのアクシオム150等のスピーカーとしばらく過ごした頃と似た幸せな昂揚状態を招いている。音質のことで最初に気がついたことは、小さな再生でも音の浸透性に優れていることだ。深夜に絞って聴いていても音の表皮と奥行に遊離がない。ディフィーザーの如雨露みたいな同軸ツイーターがかなりナチュラルに繋がっているようである。
座間におけるデッカではチェット・ベイカーのヨーロッパ時代、つまり1960年代前期のものが独特なテンションで照っているのが気になっていた。これはそうじゃない。小さい気分の塵みたいな表情が積もって翳っていく。そんなチェット・ベイカーの懐かしい沈鬱音が細かい表情を帯びて伝わってくる。これで十分だと確信がつよまった。
持ち主だったTさんに発売時点に発行されたロンドンのバイタボックス名義の英文で印刷したギャランティーカードを見せていただいた。シリアル番号の数字記載はあるが、名称がどうも不明である。古い雑誌をめくってみるが、どうも同じイギリスのタンノイ社のようなシリーズ別のニックネームめいたものがないようだ。バイタ社のものではハーツフィールドと同じ位の風格と威容を誇るコーナー型のCN-191や更に大型業務用のバスビンスピーカー等については、実物をさんざん見聞しているが、これは初めてのバスレフ型珍品である。
日本では正規の輸入代理店を経由するようなまとまった数量が出なかった物だろう。旧所有者のTさん宅では自宅に溢れかえる古書籍数千冊に挟まれて、数十年に亘る不遇を囲ってしまったスピーカーのようである。Tさんは今、タンノイ社の新型GRFをプライマリの高級CDプレーヤー、上杉製の上級タイプの真空管アンプ等でクラシック音楽を淡く清らかに楽しんでおられる。ほんとは広い家屋が古書籍に占拠されて狭くなってしまい、くすんだ沁みが浮かんでいるサランネットも古風なスピーカーの処分を考えていた所に、自分との音楽談義が横に逸脱して持ち上がった急激極まりない嫁入り話である。
Tさんは音が出ないことを危惧していたが、運びこみを手伝ってくれた佐々木さんの手を煩わせてあっという間の模様替えが完成した。結線までこぎつけて再生音が死んでいたり、不定愁訴にもなっていないことも確認ができた。24時間拘束の勤めを挟んでいることが、気分的には焦燥感を倍増させたが、二日前に大ベテランの日置、出口、佐々木各氏が駆けつけて開いた長時間(8時間以上)のエイジング試聴会で得た印象はやはり今日も色褪せていないことが分った。勤務明けで帰って食べた朝食のパンの美味を味わうこともそこそこに、町田のレコファンで目星をつけてあるCDやLPをまとめ買いに向かうことにする。
ご入手のスピーカーは今井商事が発売したSP-121だと思います。
ミクシィの拙日記をご覧いただければ幸いです。
しました。そうかもしれませんね。サランネットのベージュは
昔、自分がちょこっと買ったARやスキャンダイナ等の質感
に似ていますが。多分、SANSUIがJBLからライセンスを
許可受けたみたいな例と同じように少量だけ作ったのかも知れませんね。保証書は左右ユニットが比較的に近い番号
でした。ありがとうございます。ミクシイ、飽きてしまい失礼
しています。
深夜にチェットを小音量で鳴らしてみたいものです。
こんにちは。そのとおりです!ご感想のような聴き方で
楽しんでいます。こんなにウットリとさせられるスピーカ
は滅多にあるものではないですね。