午後から雨があがったが曇り空が続いている。おまけに関東地方の温度は14℃とある。さすが旧暦の「寒露」とはよくネーミングしたものだ。傷めた右腰のリハビリを兼ねて午前中にしていた内勤のPC入力を切り上げて、午後から戸外調査へ出る。JR保土ヶ谷駅の駅施設にはお決まりのチェーン食事処しかない。そこで、昔、古本屋の水野書店があった侘しい東口(東海道)の建て替え待機中といった趣きの商店街を物色する。
古い店だが毅然とした清潔を感じる日本蕎麦屋「高之家」へ入る。昼飯は「たぬき蕎麦」550円也。あっさりとした上品な味、雑節の強調がない醤油出汁が美味い。小学校低学年のころ、井土ヶ谷に住んでいたことがあった。そこから永田の台地を上がって保土ヶ谷の踏切がある線路際へ来て半日も往来する東海道線の列車を眺めていたことがあった。無窮風時間である。いまの真言宗「大仙寺」の境内を正面にみる「踏切」に来て特急「出雲」「さくら」「つばめ」等の通過を飽きずに眺めていたものだ。そのころ住んでいた井土ヶ谷上町からこの踏切まではどうみても片道2キロはある。少年の健脚を思い出しながら、クルマの騒音ばかりに包まれる旧東海道程ケ谷宿本陣付近を歩く。
表通りは国道1号線だが一歩裏路地へはいると、今井川が流れる閑寂な瀬戸ヶ谷町等という住宅街がある。由緒ある旧地主の庭に実る熟柿を仰いでいたら、生け垣の常緑樹の繁みに隠れるようにぶら下がっている「郁子(むべ)」をみつけた。「いくこ」ではなく「むべ」と読ませる先人の風雅なのだろう。いわゆる「あけび」の親戚で晩秋には熟すると甘い実がつまっている。「あけび」は熟すると果皮が裂けるが「郁子」は裂けない。朝鮮李朝などではこの「郁子」の特大品を貢上物にしていたようだ。業務用SDカードを外して自分用SDに変えて生け垣を撮らせてもらう。犬も歩けば棒ではなく郁子(むべ)にあたるという、ちょっぴりよい日になった。
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