Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

信州即興旅 其の①富士見駅付近

2014-08-18 19:47:48 | 旅行

13日に旧友たちと都心でおしゃべりしたあと、深夜日付が変わるころ座間から信州へと向かう。国道246号、秦野中井インター、御殿場までは主義に反して東名高速道も併用する。時間短縮の為のやむなき手段だ。足柄SAは午前の一時でも超満員、レジャーや帰省する人々の仮眠休憩のクルマでごったがえしている。旧盆にかかわるようなクルマ旅は初めてのことだ。ここでコーヒーを飲んで眠気を飛ばす。

信州への二日間の最初の寄り道場所は茅野や諏訪にも近い富士見高原とする。1990年代までは甲府にある「アローン」というジャズバーの野口さんと組んで八ヶ岳のジャズフェスティバルに関係していたことがある。小淵沢インターから近い公園のような草原のようでもある広場の野外ライブにはピットイン系のジャズマンが沢山出演していた。アメリカ帰りの大西順子の演奏を初めて聞いたのもこのフェスティバルだった。フェスティバルの前後に寄り道した場所には原村、清里、大泉等があって鱒釣りやハイキングも楽しめた。

しかし尾崎喜八等の詩作に登場する富士見高原は永いあいだ憧れの土地だったが立ち寄る機会はなかった。御殿場インター、須走、篭坂峠、山中湖、河口湖、御坂峠、御坂トンネル、ヘヤピンカーブが続く深夜の道では睡魔には襲われる閑もない。途中、闇の中の道路際で計三匹の鹿を目撃する。猿は寝ているが鹿は起きている。鹿は夜行性動物ということを再認識する光景だ。河口湖付近の「セブンイレブン」では夜行性若者のクルマに混じって2時間ほど仮眠する。駄菓子やコーヒーを買っているから店員も文句は言ってこない。持参のコールマン製羽毛寝袋の出番だ。仮眠後は夜も白み始める御坂の長い下り坂を一気に下って旬が終わりかけている一宮近辺の桃林の淵でその香りをたっぷりと吸い込むことで夜明け時間を過ごす。甲府から韮崎までの国道20号は生憎の小雨に霞んで左前方に連なっている南アルプスが拝めない。残念だが韮崎をすぎると豊饒な真夏の田舎道が白州にかけて広がってそのニュアンスが豊かな緑のある景色はどこまでもあきることがない。

富士見の手前には白州や上蔦木という集落があって付近の山村から集まってくる野菜や食材の「道の駅」がある。ジャージー種の乳牛から搾ったアイスクリーム、都会には出回ることもない硬い皮が特徴の桃、大粒のブラックベリーをつまんでから憧れの富士見駅へ向かう。小雨に煙る木造建築の駅舎は四季派の詩人に愛されてきた抒情の風格である。標高950メートル、明治37年には飯田町(今の飯田橋)始発の官鉄中央線の終点がこの富士見駅だったと駅舎の説明板に記されている。白樺の梢、旅人を送迎する向日葵、駅前の花壇には百合の香りがむせている。気温は23度、蒸し暑い関東の都市では信じられない冷涼な空気だ。

駅舎の待合室に接している蕎麦屋があってこれもJR東日本がやっている人を食っているような蕎麦屋かと疑わしかったが、どうも経営はちがうようだ。「かけ蕎麦」が280円、この熱い汁蕎麦に舞茸の天ぷらをトッピングしてもらう。太めの二八蕎麦は香りも腰もあってJR蕎麦チェーンの味とは高原の空気もプラスして格段の差を感じる。

満腹後は昔の結核療養所だった病院を眺めて駅付近を散策する。小雨が降ったりやんだりの入笠山牧場の裾野にある武智温泉で疲れをとろうと寄ってみたがなぜか休業している。そこで次の目的地松本・安曇野へ行く前に、富士見の福祉施設兼用温泉にて入浴休憩をとる。単純硫黄泉のかけ流し、地域外の客は時間制限もなく600円の入浴料だ。こんこんと湧きだす浴槽を独占できる喜び、入浴後も畳部屋で寝転ぶこともできた。ここから茅野、諏訪、塩尻、松本というコースは信州の即興旅のメインディッシュみたいなものである。


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8 コメント

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ご無事で何より。 (金柑頭)
2014-08-19 09:29:59
夏の信濃路。気温23度の富士見駅。よく伝わってきます。こちら横浜は蒸し暑さが続いています。みんなに「涼風献上」といったところですね。
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「スキタイ組曲」は知ってますか (さがみ国分辻書房 飯田基一)
2014-08-19 15:05:29
突然ですが、村上春樹の話です。恥ずかしながら私は彼がまだカウンター内で客のリクエストに応えてターンテーブルにサキソフォン・コロッサスとかのっけながらフライパン振り回してピラフとか作ってるころのデビュー作からの「元祖追っかけ」でして、文学映画音楽等々多くの影響を受けてしまっています。ですが、幸いにも彼のような、もはやどうしようもないビニール・ジャンキーにはなっていません。それとクラシックに関しては全く門外漢。が、この本(新潮文庫「村上ラヂオ2」)のP.196のエセイに関してはとても興味深く感じ入りました。もしも輪廻転生出来うるならば、アナログレコードも集めてみたいと願っています。まあ今生のよすがとしては古本を集めるので精一杯なので・・・。とどうでもいいようなことをたらたらと失礼しました。夏期講習で缶詰めになっていると、話が分かる人にこんなメールを送っては悦に入るというわけです。秋になったらご一緒に古本漁りに行きましょう。私の目当てはもっぱら文芸と映画です。 辻書房亭主(海老名市国分で私塾経営の傍ら来春一部開店予定です)
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信州即興旅① (なかやま)
2014-08-19 20:47:06
辻書房亭主様

まだまだ蒸し暑い夏が続いていますね。春樹さんとは
彼がデビューする前から知り合いでした。よく千駄ヶ谷
の店ではビスケットを粉末にしてチーズケーキの素地を
作っているところを目撃していました。デビュー直後に
ジャズ専門誌のお初インタビューを務めたのもよい思い
出になっています。彼と学生時代に和敬会館?で同室
していた奇人として描かれている岐阜のSさんとも知り合いでした。春樹氏はえらぶったところのない稀有の感性を保持している人です。秋は古本漁りでもしましょう。
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Unknown (なかやま)
2014-08-19 20:55:58
金柑頭さん

なかなか涼風がよせてきませんね。
先日はYさんとの再会を手引きしていただき感謝です。
こんどは座間で時事放談といきましょう。
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おそれ入谷の鬼子母神 (辻書房)
2014-08-20 16:25:00
もしかして、ピーターキャットとかいう店のことですか。ということはハルキさんの奥さん(布団屋の娘さんでその親が春樹さんの店のために資金を貸したとかいう・・)もご存知?もしかしてその頃にその店に飲みに来てた中上健次さんも。本や雑誌の紙面だけでの追っかけとしてはまるでシャーロキアンがコナンドイルの精霊に会ったくらいの興味と驚きです。伝説の和敬会館の同室の方の話、これまた垂涎ものの逸話です。 *ちなみに、鎌倉の若宮大路の海側わきの公文堂書店さんの適度の放置具合が私の理想とする古本屋です。綺麗に分類されてあってパラフィンとかかけてあるのは性に合いません。
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信州即興旅1 辻書房亭主様 (なかやま)
2014-08-21 07:42:08
店でよくみかけたのは当時中央公論社在籍の安原顕、小野好恵(各故人)さん等でした。春樹氏は猫好きで近所の住まいに猫の様子をみに時々帰っていました。ライブもやっていて当時台頭してきたラテンバンドのスピック&スパンのときには何度か行っています。ピーターキャットの放出LPで思い出に残っているのはコルピックス盤のコールマンホーキンスのレコードを買ったときでした。西海岸のエディ・コスタが事故死にあってそれを偲ぶライブでした。裏面のホーキンスがズルズルと「アイム・コンフェッシン」という苦い曲を吹き続ける姿勢に感動したLPでした。コルトレーンっぽいジャズの知恵熱モードが全盛のときに、こういう守備範囲をしこしこと掘り下げている春樹さんの本格性を当時感じた次第です。
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その手を食いたい焼き蛤 (ある時は辻塾塾長)
2014-08-21 15:13:38
ヤスケンですか・・・。金に困って春樹さんの原稿を売りぬいた編集者ですね。 いうところのトレーン知恵熱に学生時代の私も浮かされて高田馬場のイントロや新宿のディグに入りびたりでした。あのころはアーチー・シェップが脚光を浴びてましたね。ちなみにトレーン信者だった私は楽器もオーディオも門外漢です。ただただ、熱に浮かされたかった若気の至りの20代でした。   ところで、秋にこういうのはどうでしょう?曰く「若気の至りの遠足ツアー」 よく小倉ノーボッキ(信興)やほかの友人を誘って飯田企画のブラインド遠足ツアーを企画実行してます。今まで言えば、ひなびた日帰り温泉、レコード数万枚の洋楽喫茶、頑固おやじの港の定食屋、田舎のデパートの催事場古書市など。私のエコカーであちこち連れて周るんです。定員3名の無料ツアーです。乗りますか。乗るならのぶサンにも声かけときます。行くとしたら土日の日帰りとなります。ツアーは本厚木発着で夕方着後にそのままホンアツの巷で酔いどれますが・・・。
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信州即興旅2 (なかやま)
2014-08-24 23:37:35
ある時は辻塾塾長さん
お誘い有難うございます。秋の色が濃くなってきましたら日帰りツアーに乗らせてください。どのへんが面白いのかお任せします。
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