われらしんじんのこども

真人幼稚園の子どもたちの日々の様子や、
  楽しいエピソードなどをお伝えしています。

護摩堂山に登るまで

2005-09-21 11:03:23 | Weblog
 話せば長いのですが、今年の年長組親子遠足は護摩堂山登山と県立植物園探訪に決まりました。もちろん、登山は子どもたちのみで行い、保護者は先に植物園へ行き山を登って来た子どもたちの到着を待つ、という流れであります。
 なぜ、せっかくの親子遠足なのに子どものみの登山が行われるのか?事情をご存知ない方にはあるいはとても奇妙な計画であるように感じられるかもしれません。なぜ今、護摩堂山なのか、という点も理解しにくいことかもしれません。そこで今日は私達が護摩堂山に登ることになったいきさつについてお話しようと思います。

 そもそものはじまりは今年の夏に行われた年長組の真人キャンプまで遡ります。毎年この真人キャンプでは二日目に妙高山を登る活動があります。池の平のゲレンデを中腹の小屋まで歩くのですが、今年は台風7号の接近と上陸のため真人キャンプ始まって以来、はじめて登山を中止することになったのです。(詳細は7月のブログでお伝えした「キャンプ総集編」をご覧下さい)
 これは非常に苦しい決断でありました。登山はキャンプのメインとなる活動で、子どもたちも保護者も我々もとても楽しみにしていたからです。この登山にはとても重要な意味があります。たとえばマラソン大会が子どもにとって重要であるように。それは我々がしんじんの子どもに課した、乗り越えるべき壁なのです。それらをひとつひとつクリアしていくことによって、真人の子どもはより強く、たくましく、大きく成長を遂げていくと確信しているのです。ですからこのキャンプでの登山は年長児がなんとしても乗り越えていかなければならないはずの活動だったのです。
 キャンプが終わって、我々の中には漠然とした悔いが残っていました。担任たちはどうにかして登山を経験させてあげられないものかと考えていました。私も園長もそれは同じでした。このまま登山を経験させずに卒園させることが心残りで仕方なくなっていました。伝えるべきことを伝えずに、どうして小学校に送り出せましょう?台風が次々に発生し日本に近づいて来ること、これは仕方のない事です。けれど登山を通して培われるような力を培う機会を与えられずにいること、これは仕方のないことではありません。そこで夏休みの宿題として、いつ、どこに登ればよいのか、具体的な案を私達は考えることにしました。

 一泊二日で行うキャンプと違い、二学期の活動の中で登山をすることは多くの制約がありました。まず、日帰りで行って来れる場所であること。バスで片道1時間以内にあり、幼児がそれぞれのペースで登ることができ、遅くとも一時間半くらいで全員が登りきれること。キャンプの時ほど多くのスタッフを配置できないことが予想されるので、ある程度の人数でもきちんと子どもたちの様子を把握して指導できる場所。登山である以上、その行程にある一定以上の距離があり、勾配があり、山を登っているという実感が持てる場所。そしてできれば頂上からの見晴らしのよいこと。つまり、園の近くにあって、見通しがよく、安全で、しかも適度に辛く苦しみを味わいながら全員が登頂でき、眼下に広がる景色を眺めながら最後には登ったぞ~という達成感をみんなで分かち合える、そんな場所。
 そんな私達好みの都合の良い山が果たしてあるだろうか?私達の長く険しい山探しの始まりでした。

 私はまず弥彦山はどうだろうと考えました。これまでにも個人的に何度か登ったことがあり、年中児以上なら休み休みいけばどうにか登りきれるのではないかと思っていたからです。そこで実際に弥彦山に登って現地の調査を行うことにしました。ちょうど年長組の担任たちも登るつもりでいたということだったので、我々は休み明けにすぐ登ってみることにしました。(写真はその時の様子で、ちょうど5合目くらいのあずまやにて撮影)八月の終わり頃で、気温はまだまだ高く、蝉時雨が絶え間なく鳴り響いていました。少し歩くと背中からどっと汗が吹き出してきて、休みボケでなまった体にはとてもこたえました。登山者の数も多く、道すがらたくさんの人とすれ違いました。
 頂上に着くと幾つかの問題点を話し合いました。トイレのこと、移動のこと、ゆっくり食事をとるスペースはあるか、親子遠足でも来れる場所か?小さい子どもをつれて来れなければそれだけで対象からはずさなければならない。私たちはあらゆる角度から検証を加えました。あらゆる可能性を求めながら、同時にあらゆる可能性を否定しなければなりませんでした。それでも弥彦山の頂上から眺める景色はあいかわらず素晴らしいのでありました。それから、弥彦のとなりにある多宝山山頂(ここには気象レーダーがある)もついでに登り、子どもたちを連れて来るのにふさわしい場所がないかどうか調べました。しかし結論から言うと、弥彦山も多宝山も園児の登山には適切でないということがわかりました。家族単位で登るぶんには何の問題もないのですが、90人近い園児を限られたスタッフで一度に連れてくるにはかなりのリスクを伴うだろう、と。私達はそういう結論を出して園長に報告することにしたのです。

 それから様々な案を考えてみましたが、なかなかこれという場所がなく、登山は暗礁に乗り上げそうになっていました。新潟の山を紹介した本を調べたり、知り合いに聞いたりしてみました。あるいは登山ではなく、長い距離を歩く完歩大会にしたらどうかなどという案も浮かびました。しかしどれも今ひとつしっくりくるものがありません。いっそのこと、妙高へ日帰りで行って来ちゃったほうが早いかも!という声さえ出てきました。そんな中で浮上して来たのが護摩堂山でした。
 二学期の始業式も間近に迫ったある日、今度は園長夫妻と私の3人で護摩堂山に登ってみることにしました。あじさい園が有名で、その時期にはたくさんの観光客が訪れるということですが、私はまだ一度も登ったことがありませんでした。
 もっと早く登っておくべきだったと、登りながら私は思いました。そうすれば、わざわざ弥彦に登る必要もなかったのです。しかしまあ、それは言っても仕方のないことですね。人生とはすべからくそのようなものであります。好むと好まざるとに関わらず。寄り道、回り道のない人生というのもそれはそれで味気ないものです。
 というわけで、長い道のりを経て登山は護摩堂山に決まりました。誠にあっけなく。それはまさに、しんじんの子どもたちのためにあるような山でした。ここなら子どもたちを連れて来れる、私はすぐにそう思いました。(結局、詳しい調査のためにその後もう一回登りました)それから、実際に登山する日を考えましたが、時期的に考えて親子遠足と兼ねる以外に日がないことがわかりました。九月はマラソン大会を中心にすでに行事がびっしりあり、10月に入ると真人祭に向けた活動が本格化して、登山どころではなくなってくるからです。そのような事情から今年は異例の親子遠足となりました。年長組の保護者の皆様にはどうか、これらの事情を汲み取っていただき、御理解いただければと思います。

 さて、明日はいよいよその年長組親子遠足が行われます。子どもたちとようやく登山することができ、こんなに嬉しいことはありません。また、年長組の担任たちの粘り強さも大変なものでありました。ただひたすらに子どもたちのためを想ってここまでやって来た。それはこの私が自信を持って申し上げたいと思います。素晴らしい担任たちでありまするよ、と。
 何はともあれ、実り多い一日になることを願っています。
 いざ、護摩堂山!!


 (なお、もしうまくいけば、明日は護摩堂山頂上からこのブログを更新する予定です。登頂を果たした子どもたちの最新の様子をお伝えしますので、どうぞお楽しみに。)
 
 
 



 




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