1,
高校の頃、友だち数人で南九州にキャンプに行ったことがある。
その旅で特に印象に残っているのは、宮崎で食べたパイナップルだ。
それまでパイナップルは、パイ缶でしか食べたことがなかったのだが、その時初めて生で食べたのだ。
そのパイナップル、輪切りにはしてなかった。芯を抜いたものをたて切りにして、割り箸に刺して売っていた。
価格は100円くらいだったと思う。味のほうはシロップにつけているわけでもなかったので、それほど甘くは感じなかった。どちらかというと酸っぱかった。さらにえぐい。
これを食べて、パイ缶というのは砂糖菓子だといことに気づいたのだった。
しかし、このすっぱさとえぐさで、充分にのどの渇きが癒えたのを覚えている。
2,
小学生の頃の話だが、駄菓子屋に「パインアイス」というパイナップルを輪切りにした形の氷菓子が売っていた。価格は5円で、お粗末なビニール袋に入っていた。
けっこう人気商品だったので、みんなが一度は手にとっているらしく、ビニール袋はいつも汚れていた。
ぼくはこれが好きで、夏になると毎日食べていた。しかし、6年生の頃、人工甘味料問題が沸騰し、「パインアイス」は駄菓子屋から消えていった。
それから数十年「パインアイス」にお目にかかってなかったのだが、40代の頃にセブンイレブンで売っているのを見つけた。懐かしさのあまり、思わずそれを手に取り、さっそく購入した。
しかし、食べてみてがっかりだった。ぼくが小学生の頃食べていたものに比べると、甘さが違うのだ。
それが入っていた袋を確かめてみると、そこには「砂糖」と書いてあった。ぼくが覚えている甘さというのは、小学生の頃に問題になった人工甘味料「チクロ」の甘さだ。上品な砂糖の甘さではないのだ。何か寂しい思いがした。
当然その後は、「パインアイス」を一切口にしていない。