「今日はお出かけなんですか?」
という電話が入った。
「今日は夫婦とも出勤で、自分は仕事が終わり、今嫁さんを迎えに来ているところです」
「そうですか、困ったなあ」
「また、うちから大音響が聞こえてるんですか?」
「いや、6階の火災警報器が鳴ってるんですよ」
「えっ、うちからですか?」
「いや、どこの家なのかはわからないんですけど。一応在宅者のところは異常ないようです。で、今家にいないのが、しんたさん宅含めて2軒だったので、連絡したんです」
「そうですか。わかりました。急いで帰ります。でも小倉からだから、30分程かかると思います」
「わかりました。何かあったら連絡します」
間もなく嫁さんの仕事が終わり、家に向かった。
道中、
「テレビの後にホコリが溜まっていたので、そこに火がついたのかも」とか、
「まさか、この間はずしたガスファンヒーターの元栓が、完全に締まってなかったのかも」とか、
不安が頭をよぎってくる。
しかし、急いでいる時というのは、よく信号に引っかかるものだ。そのたびに、
「もしかしたら消防車が来て、辺りは騒然としているかも」とか、
「既に燃えていて、住む家がなくなっているかも」とか、
イライラが不安を助長する。
電話からおよそ30分後、マンションに着いた。
何事もないかのように辺りは静かだった。しかし、理事長が言ったように、火災警報器は鳴っていた。
もしかしたら、大音響の時のように、うちの玄関前に人が集まっているかもと思い、6階まで駆け上ってみた。が、誰もいなかった。
とりあえず、家の中に入り、気になるところを点検してみたが、まったく異常はない。
その旨を、理事長に連絡すると、
「そうでしたか。よかった。もう一軒の方も、異常なかったみたいだし、おそらく警報器の誤作動でしょうね」
と言った。
とりあえず、その日は警備会社が警報音を止め、原因追及は翌日ということになった。
ということで、昨夜、仕事から帰ってみると、すでに警報ランプは消えていた。結局、今回の騒ぎは、理事長が言ったように、火災警報器の誤作動が原因だったようだ。
しかし、その火災警報器、何に反応したのだろうか?
そういえば、十数年前、このマンションの最上階から飛び降り自殺があったのだが、確かゴールデンウィークの終わり頃だったような記憶が・・・。
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