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地球温暖化の影響・適応策の研究の一環として、石川県白山自然保護センターをたずねた。
ここは、白山高山帯をフィールドにした係る研究を、1999年度から実施している。これまでの研究は3段階で進んできている。
第一段階では、影響のシミュレーション。雪田といわれる高山の窪地の植生が2030年~2070年までになくなる(正確にいうと、雪田の分布適地の消失)、周氷河地形が2010年~2040年までに形成されなくなる(雪渓の減少)ことなどを結論づけている。
第二段階は、動植物・地形について実態を把握し、適応策が検討された。特に、キツネやテン、セイヨウタンポポ等の低地の生き物が温暖化に伴い高山に侵入する影響への対策が検討された。また、登山により低地の生物を高山帯に運び込まれる恐れがあるため、その影響が研究された。
第三段階では、温暖化影響のモニタリングで、石川県を象徴する花であるクロユリの開花時期、雪渓の規模等が調査された。この研究は2008年までだが、その後環境省のモニタリングサイトに指定され、別事業としてモニタリングが継続されている。
高山生態系は脆弱性が高い。温暖化影響を受けやすい(感度が高い)とともに、生物が他の場所に避難にしくい(適応力が低い)。特に、白山の高山帯のような他の山と接続しない場合、独立性が高いと、植物や動物の移動がなされない。また、人間が対策をとろうとも、アクセスが困難という問題もある。
このため、高山生態系への適応策は難しい。現在、実施されている対策は、人為による低地からの生物侵入を防ぐために、登山道にマットを引き、植物の種子等が持ち込まれないようにしているという。これは、適応策として明示された対策ではないが、適応策として位置づけられる。
気候変動の影響は、脆弱性が高いところで重大である。高山帯はまさにそのケースである。