サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

省エネルギーの普及にかかる精緻化と転換策

2015年05月24日 | 環境イノベーションとその普及
 5月21日~23日に生駒市で開催された環境自治体会議に参加をしてきた。私は、省エネルギー分科会のコメンテータの役割もあり、同分科会に参加した。
 
 ひのでやエコライフ研究所の省エネ診断、1985アクションの地域工務店を拠点化した省エネアドバイスの展開、日本エネルギーパス協会の住宅の省エネ性能基準といった省エネに係る普及啓発事業の話しを聞くことができた。また、近鉄や大和ハウスのスマートハウスやニュータウン開発といったダイナミックな話しも聞くことができた。
 
 私なりに省エネの普及啓発に係る発表や議論を要約する。
 
1.省エネの普及啓発において、拡がりに限界があり、その打開が必要となっている。
 
2.省エネを進めることは目的であるが、多くの生活者からみれば省エネは目的とならない。省エネで楽しい暮らしのスタイル(スマートライフ)を目標として共有し、そのためにどのような施策が必要かを考えることが必要である。スマートハウス等は情報通信技術を使って何ができるかを考えがちだが、スマートライフの具体像を考え、その中で情報通信をどのように使うかを考えることが必要である。
 
3.省エネに係る設備や行動の普及においては、ハードウエア(都市構造、住宅、設備)、ヒューマンウエア(意識と関係性)、ソフトウエア(制度、情報)といった3つのウエアの効果的な組み合わせが必要であるが、必ずしも組み合わせによる事業展開が十分でない。例えば、省エネ住宅の整備において、もっと住民の参加と学習を促す仕掛けをしたり、省エネ条例等の仕組みを導入することが期待される。
 
4.普及啓発を支援するコンサルティング主体、不動産関連の企業・工務店、地域行政等が連携して、効果的に省エネ事業を展開することが必要である。特に、大手の不動産業は、ヒューマンウエアの形成を展開するため、もっともっと他主体との連携が期待される。
 
5.今後の省エネの普及においては、社会心理学やソーシャル・マーケティング等の研究成果を踏まえて、精緻化された普及施策を展開するとともに、ICT(情報通信技術)の活用などの新展開を図ることが期待される。精緻化された普及施策では、多様な主体の特性に応じたきっかけの提供、やインセンティブやモチベーションの仕組みづくり、
 
6.省エネだけで普及啓発をすればいいわけでもなく、再生可能エネルギーの普及とあわせて省エネ意識を高めるなど、エネルギーや気候変動などを一体化させた普及戦略が必要となる。住宅用太陽光発電の普及において、スマートメーターによる発電と消費の見える化が可能となる。
 
7.さらに期待されるのが転換策である。既存の大都市において、住宅や設備導入、ライフスタイル改善による省エネをやろうにも限界があり、気候変動の進展も都市における省エネのやりにくさをますます増大させる。このため、そもそも夏に熱くない場所に住むというような転換策を視野にいれていく必要がある。この際、省エネ移住を進める過渡的な段階においては、夏山冬街(普段は都市に暮らすにしても、夏は涼しい山で過ごすなど)を地域間連携で進めることが考えられる。
 
 
特に、普及啓発のひろがりに課題が生じているなか、手法の精緻化を進めるとともに、「転換的な普及啓発施策」をもっと具現化していくことに期待したい。
 
 
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