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環境省の研究プロジェクトに「略称:脱温暖化2050」というものがある。2050年に日本の温室効果ガスの排出量を70%削減する方法を検討する意欲的な研究で、今日の低炭素施策の礎となっている。
この中で、目標を達成する社会の姿として、二つのシナリオが設定された。一つは、「ドラエモン」シナリオと言われ、高度技術によって未来を切り開いていくもの。目指す未来は「高度技術型社会」。ドラエモンが打出の小槌のようにポケットから出す、新技術に期待する。
もう一つは「サツキとメイ」シナリオ。サツキとメイは、スタジオジブリのアニメ映画「となりのトトロ」に登場する姉妹。昭和30年代の田舎を舞台に、もののけと共存するような社会をモチーフにしている。このシナリオが目指す未来は、「自然共生型社会」である。
2つのシナリオ、一方は都市を中心に、技術をもって、グローバル経済の競争に打ち勝ち、経済成長を遂げていく姿を目指す。もう一方は、都市から農山村にも人口を分散させ、第一次産業を活かし、地域経済における循環による生活の豊かさを実現していく姿を目指す。ハードウエアを重視するのが「高度技術型社会」、ヒューマンウエアを重視するのが「自然共生型社会」とも言える。
滋賀県の琵琶湖環境科学研究所が描いている持続可能な社会の二つの姿に具体的に示されていますので、そこから都市に関連する部分を抜粋させていただく。
「高度技術型社会」
- 都道府県を超えた大都市圏が形成され、まんべんなく都市インフラが行き渡る
- 都市近郊を中心にマンションや宅地が整備され、郊外型の大型商業施設が増える
- 車の走りやすい道路網が整備され、日常生活の行動範囲がさらに広がる
- 情報インフラが整備され、職場は遠くとも自宅で仕事をすることが可能となる
- 防犯センサー、警報システム、災害予測システムが各町内、各家庭まで普及する
- ハイブリッドカーや電気自動車など大幅に低燃費化した自動車が普及
- 再生可能なエネルギーの大規模な供給が主力となる
- 製品のリサイクル率が向上し、再生品が新品同様に市場に流通している 等
「自然共生型社会」
- 市街地に高機能で集中的な、郊外にはシンプルで小規模なインフラが整備される
- 都市はコンパクトにまとまり、住宅、学校、商店等が近い範囲内に共存している
- 自転車や徒歩で十分な範囲内で十分な範囲内に生活圏が形成される
- 市街地に緑地が増え、街路が子供の遊び場や交流の場となる
- 職場が家から近いところにあり、ちょっとした用事でも気軽に行き来ができる
- 住民が自主的に防犯、防災に取り組み、人のつきあいが地域の安全性を高める
- 市街地には自転車道が整備され、近場の移動では自転車が一般的
- 再生可能エネルギーが家庭や地域に小規模な形で普及する
- レンタル、リース、共同利用等の製品のサービス化が進む 等
さて、今日、国家事業として各所で進められているスマートシティ、環境モデル都市、環境未来都市のデザインにも、この二つのシナリオを当てはめることができる。
ただし、これらの検討がドラエモンシナリオに偏りすぎているように感じるのは私だけだろうか。
もちろん、どちらか一方でなければいけないわけではない。双方のいい所を組み合わせたり、両方を重ね合わせた都市を描いたり、地域の個性に応じた選択が必要である。
参考)
脱温暖化2050研究プロジェクト: http://2050.nies.go.jp/index_j.html
持続可能な滋賀関連パンフレット:http://www.lberi.jp/root/jp/31kankou/3115panphlet/bkjhindex.htm#jizoku