学生には、本というものは選んで買ってもいいが眼つぶって手に触れたものを買うエネルギーと勇気をも持たなければならない、と説教しているわたくしであるが、最近はわたくし自身にそんなエネルギーが徐々になくなりつつあるのは非常に遺憾である。
というわけで、左翼関係の研究から出発した癖に、どうも代々木の本となると妙に尻込みしていたわたくしの旧弊を破ろうと、不破哲三の妻(上田七加子さん)の自伝を買ってみた。
不破哲三と上田七加子は10代にして既に共産党の同志であったが、夫婦になる前には大して接点もなかったと書いてあった。しかし一度、通学途中の電車で彼女が座っていたら前に不破哲三が大量の本を風呂敷に包んで目の前に立っていたので、「本を膝の上に乗せてもいいわよ」と言ったことがあったらしい。なんだ、ロマンスの匂いがぷんぷんするではないかっ。実際どうだったかはともかく。