★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

大学での嬌声でも危険性あり

2013-04-14 23:12:24 | 文学


熱海へ下る九十九折のピンヘッド曲路では車体の傾く度に乗合の村嬢の一団からけたたましい嬌声が爆発した。気圧の急変で鼓膜を圧迫されるのをかまわないでいたら、熱海海岸で車を下りてみると耳がひどく遠くなっているのに気がついた。いくら唾を呑込んでみても直らない。人の物いう声が遠方に聞こえる代りに自分の声が妙に耳に籠って響くので、何となく心細くなってしまった。

――寺田寅彦「箱根熱海バス紀行」


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