友岡さんが次の本を紹介していました。
『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)
出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。
さっそく図書館で借りて読んでみました。
一部、引用します。
□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
□山本譲司さんインタビュー
□おわりに
第2章 変わる
変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
(つづきです)
このセミナーと前後して、検察の動きが徐々に見えてきた。
「トップセミナー」の余韻が残る11月16日。
雲仙岳のふもとにある南高愛隣会の施設に、スーツ姿の一団が訪れた。
最高検公判部長兼裁判員公判部長の岩橋義明、長崎地検検事正の小寺哲夫をはじめ、第一線の検事や検察事務官ら6人。刑務所を出所した累犯障害者たちを受け入れる更生保護施設「雲仙・虹」や、地域社会内訓練事業所「トレーニングセンターあいりん」を視察し、職員や利用者の声に耳を傾けた。
遡ること約1年前。
検察組織を根幹から揺るがす出来事が起きた。大阪地検特捜部を舞台にした証拠改ざん隠蔽事件である。
特捜部は、当時厚労省局長だった村木厚子を無実の罪で逮捕・起訴し、さらに、担当検事が証拠物であるフロッピーディスクの内容を検察に有利になるように書き換えていたことが発覚。前代未聞の不祥事。検察は解体的出直しを迫られた。
検察改革の目玉として、最高検につくられたのが外部有識者の意見を検察捜査に取り入れる6つの専門委員会。専門委の1つに「知的障がい専門委員会」があり、外部参与に愛隣会理事長の田島良昭が就いていた。
この日、雲仙市の施設を訪れたのは専門委のメンバーら。非公開で行われた施設側との意見交換の場では、「現場を見て福祉について理解が深まった」「罪を犯した障害者や高齢者の再犯防止や社会復帰に向け、刑事司法をどんなふうに変えていけばいいのか議論しているが、(今回の視察が)参考になった」などの意見が出たという。
累犯障害者対策への社会的関心が高まる中、最高検も試行錯誤を重ねていた。
2011年9月から、東京、大阪など都市圏の4地検で知的障害の疑いのある容疑者の取り調べの際、心理学専門家の立ち会いを試験的に始めた。
「知的障害者は質問者に迎合する傾向があり、うその自白をさせられてしまう恐れがある」。障害者の取り調べの録音・録画(可視化)や第三者の立ち会いを求める声は専門家の間に根強くあったが、同年11月、大阪で起きた放火事件で、検察官が、知的障害がある容疑者を誘導しながら自白調書を作成した疑いがあることが発覚。検察への「風当たり」はますます強くなっていた。
この年の夏から障害者の取り調べの可視化を全国一斉に始め、専門家の立ち会いにも踏み切った。同年12月には、全国の地検区検に対し、知的障害の疑いがある容疑者の事件がどれくらいあって、どんな処分を下したのかについて初の実態調査を指示した。かつてないスピーディーな動きは、崖っぷちに立たされた検察の危機感の裏返しでもあった。しかし、こうした動きはまだ「序章」に過ぎなかった。
(つづく)
【解説】
遡ること約1年前。
検察組織を根幹から揺るがす出来事が起きた。大阪地検特捜部を舞台にした証拠改ざん隠蔽事件である。
特捜部は、当時厚労省局長だった村木厚子を無実の罪で逮捕・起訴し、さらに、担当検事が証拠物であるフロッピーディスクの内容を検察に有利になるように書き換えていたことが発覚。前代未聞の不祥事。検察は解体的出直しを迫られた。
村木厚子さんの冤罪については私も以前、記事にしたことがあります。
村木厚子『私は負けない』 はじめに (2023-04-06)~
村木さんは、苦しい闘いに勝って、冤罪を晴らすことができました。
かつての連載記事が、今回の連載記事につながっています。
不思議な縁を感じます。
獅子風蓮