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朝昼晩、時間を問わず飲んで喰って面白おかしく過ごす人生を歩みたいです。※旧名「日が沈む前に飲む酒はウマい」

誠実さが込められた一杯 千歳烏山『榮じ』

2022年03月25日 | ラーメン、つけ麺など
以前記したが、世田谷区の千歳烏山にある図書館で、母校野球部の貴重な資料集を借りた。
借りた本は当然返すが、返却時にまた別の書籍を借りてしまい、数日後にまた返して借りて…と、
気付けば千歳烏山との往復を繰り返していた。京王線の特急(旧:準特急)が停車するので、アクセスは良好。
とはいえ、世田谷区の税金で購入した図書を、立川市民がタダで読むのは申しわけないので、
帰りは必ず、千歳烏山で飲食や買い物をし、微々たる額ではあるが、世田谷区にお金を落とすことにしている。
私がもっとも気に入ったのが、『中華そば 榮じ(えいじ)』。お店の場所は、最初に利用した『世田谷餃子』のすぐ隣であった。

※栄の字は旧字の「榮」

こちらは、店内や外壁に貼ってある、現在のメニュー一覧と、商品についての解説。


国内産の小麦粉だけの 自家製めんと 無化調 天然素材だけのスープです
化学調味料を使わず、天然の素材で麺とスープを作っている、お店の心意気は素晴らしい。
しかも驚くことに、基本の「中華そば」600円など、どの商品も安価なのである。
厳選食材を強調するラーメン店はいくつか知っているが、その大半が、
たいしてウマくなく(味が薄く)、そのくせ値段は高く、さらに店主のプライドも妙に高い、
イヤな店が多い気がするのだが、榮じさんは、それらとは一線を画す良店なのである。
そもそも今の時代、日高屋などの廉価チェーンを除けば、600円で食べられるラーメン自体が少ないよね。
ましてや東京23区内、しかも駅前という好立地で、この低価格は驚きだよ。
立川市には『鏡花』という、やはり厳選素材を謳う店があるが、一番安いラーメンが1100円である。
鏡花(きょうか)という屋号には、強気な価格の「強価」、あるいは「狂価」という意味を含んでいるのか。
※追記 22年6月には、1200円~とさらに値上げ
※追記その2 さらに23年2月くらいに、1250円~に上げた模様


さて、狂った店(←言い過ぎ)のことは忘れて、榮じさんのラーメンを紹介していこう。
店内はカウンター席のみ。小料理屋さんのような、落ち着きのある内装である。
私の訪問時は、夕方の時間帯ばかりで、厨房にいるのは、頑固職人風の店主だけ。
ただし、店主は見た目に反し、口調は常に穏やかで、エラそうな振る舞いなどは微塵も見せない、好人物であった。
こちらは、ワンタンメンが有名な浜田山の名店『たんたん亭』の孫弟子にあたるそうなので、
私も初訪問時は、「わんたんめん」700円を注文。数分後、麗しいビジュアルの商品が登場。


まずはスープ…と丼に顔を近づけると、魚出汁の生臭さは一切なく、芳香だけが鼻腔をくすぐる。
「これは熊本県天草市牛深産の節と煮干しだな…」と心の中でつぶやく。味オンチの私が、産地に気付いた理由は、
“牛深産 節・煮干し”と記され、くまモンも描かれた段ボールが、店内に積んであったから(笑)。


産地はさておき、スープは無化調ながら、香りだけでなく味もよかったのは間違いない。
自家製の麺は、細いけれどしっかり腰があり、のど越しなめらか。魚介系醤油スープとの相性も抜群。
ワンタンは、やや小さめが3個。中にはもちろん、ひき肉がちゃんと入っている。


本家たんたん亭とは、風味も大きさも異なるが、通常の「中華そば」+100円という価格は嬉しい(たんたん亭は+300円)。
ワンタン以外の具材は、大きめチャーシュー、ノリ、刻んだネギに赤玉ネギと少数精鋭。
チャーシューは甘味がなく、肉と醤油の旨味をダイレクトに感じるタイプ。
スープは熱々で最後まで冷めず、私の食欲も最後まで持続したままで、スープも残さず食べ切った。
角煮などたっぷりの肉や、背脂、ニンニクなどは入らず、大盛でも太麺でもなく、こってり濃厚豚骨スープでもない、
私好みのジャンクなタイプとは対照的なラーメンなのだが、満足度は相当高かった。
商品自体の素晴らしさもさることながら、こういう正統派のラーメンを美味しいと感じる自分にも驚いた(笑)。
もう一杯、別のラーメンも試したかったが、なんだか恥ずかしくて、結局断念。
ラーメンの替玉を何度も頼んだり(人生最高は6玉)、ラーメンを食べたあとにカツ丼を注文したりするのは平気なのに、
ラーメン自体のお替わりは、異様に恥ずかしいのはなぜだろう。
BGMがない静かな店内環境と、一緒に食事している、地元世田谷区民と思われる上品そうな客層のせいか。
腹具合はともかく、心はじゅうぶん満たされたので、この日はおとなしく退散。

2度目の訪問では、中華そばと同額ながら、煮干しや油の量を増した「コク旨中華そば」600円に「たまご」100円を追加。
数分後、コク旨中華そばがやってきた。前回のわんたんめんより油膜が多い。


初回に撮影を忘れた、横アングルがこちら。底が深い丼で、一見少なそうに見えるが、実際はそうでもない。


まずはスープをひと口飲んでみたところ、油分が多いのか、前回よりさらに熱々。お陰で舌をヤケドした。
なので、中華そばとの違いはさほどわからず。ちょっと煮干し感が強く、好みが分かれそうかな。
そういえば味玉は…と思い店主にたずねたところ、どうやら忘れていた模様(笑)。あとから別皿でやってきた。


味玉はくっきりとした味付けで美味しかった。黄身ちゃんの柔らかさもちょうどよかったし。

もはや図書館よりも、榮じ訪問がメインになってきた3度目は、「貝出汁そば」800円をオーダー。


出汁だけでなく、貝そのものも具材としてラーメンに入っている。あと今回も、これまでと異なる器でやってきた。


いつもの和風魚介スープに、貝の旨味も加わっており、今まで食べた3種の中では一番ウマく感じた。
すぐに麺を食べ切ってしまったため、「かえ玉」100円を初注文。この手のラーメンで、替玉があるのは珍しい。
数分後、替玉が追加用のタレと同時に提供された。麺が意外と多いのに驚く。


一般的な九州ラーメンの替玉は、茹でる前で100グラム程度だが、ここは130グラム以上はありそう。丼のせいか、多く感じなかった。
しかも、すでにスープを結構飲んでしまい、麺自体もスープを吸うため、途中で汁っ気がなくなった。


最後の方は油そば状態の麺に、追加用ダレをかけながら食べた。
替玉よりは、最初から麺が多くてスープともなじむ、「大もり」100円の方がオススメかも。
無論、健啖家かつ大胆不敵な方には、ラーメン自体のお替わりを推奨する。

今月22日、東京でもようやく「まん防」が解除され、飲食店の営業時間も延長。
ネット情報によると、以前の榮じさんは、15時から18時まで中休みだった模様。
HPはなく、SNSもやってなさそうなので、やむを得ず電話で直接営業時間をたずねたところ、
まん防期間と同様、「11時半から中休みなしで19時くらいまで」とのこと。
ならば、と昨日の夕方、返却図書とともに、4度目の訪問を果たした。
注文したのは未食の「つけめん」800円に、メニューに記載はないが「わんたん」100円をプラス。
相変わらず店内は静かで、聞こえてくるのは麺茹で釜の中で、湯が煮える音のみ。
しばらくすると、これまた豪勢な器で、ワンタン入りのつけダレと、冷水で締めた麺がやってきた。


通常よりやや太い、つけめん専用の麺だけを食べてみたら、これぞ国産小麦の風味(←わからねえくせに)。
具材は、ノリがない以外は、初回のわんたんめんと同じ。つけダレは、魚介の風味より酸味を強く感じた。


酸味のあるタレは、ワンタンとは好相性。途中で卓上のミル胡椒を振りかけた。
冷たい麺で温かいタレが冷めないよう、ほぼハシを止めることなく一気に食べ切った。

※麺の下には水切り用の金具ザルがあった

この日は珍しく、私以外に客がいなかったので、店主榮じさんと「昨夜は電話してすみません…」などと、少しだけ会話。
昔は酒類や焼餃子も提供していたこと、21時までの営業だったが、時間内に入店すれば対応していたこと、
さらに安すぎる価格について、「他店のことは知らないけれど…」と前置きしつつ、
「小麦粉だけでなく、いろいろ値上がりして苦しいけど、もう少し(現状の価格で)頑張ってみる」と語ってくれた。
誠実そのものといった印象の榮じ店主。その姿勢が調理作業や商品価格、そして味にも込められている。
彼のためにも、小麦粉など各種食材の高騰が早く収まることを、願ってやまない。
こういうラーメン店が駅のすぐそばにある、千歳烏山はいい街だよ。



中華そば 榮じ
東京都世田谷区南烏山5-17-11
京王線千歳烏山駅西口改札より徒歩約30秒
営業時間 現在は11時半~20時だが、19時頃には閉店
定休日 日、月

※残念ながら、22年8月頃? に閉店なさったようです
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ブログ主)
2024-04-27 20:43:46
峠七十郎様
コメントありがとうございます。

『榮じ』の前は『Age』、どちらも「エイジ」だったわけですね。
榮じの店主さんは、『たんたん亭』出身の『めでた屋』で修業したそうなので、
孫弟子にあたるはずですが、味自体はオリジナリティが強いですね。
繁盛店だったので、突然の閉店には驚かされました。
返信する
Unknown (峠七十郎)
2024-04-27 15:26:10
去年(2023)に久しぶりに訪れたら閉店してて呆然としてました。なんとなく思い出して検索してみたらここが見つかってうれしいです。
元は奥の場所で「Age」というおしゃれなカフェ風居酒屋をやってました。黒塗りの店内に赤と黒のビビットなテーブルが印象的でした。「Ageバーグ」というハンバーグが絶品でしたがあるとき中華に目覚め、大皿料理を出すようになりました。その後締めのラーメンまでだすようになり、「井の頭線の○○で修行してる」と言ってましたから
>ワンタンメンが有名な浜田山の名店『たんたん亭』の孫弟子
ここだったのでしょうか?ほかにも「仙川のめでた屋でも修行してる」ともいってました。最初の頃は魚粉が強すぎて、「大丈夫?」「賛否両論」って言ってましたね。引っ越してから足が遠のいてしまったのが悔やまれます。
病気とかでなければいいのですが。
返信する
Unknown (ブログ主)
2023-04-11 01:23:19
れい様
コメントありがとうございます。

私が『榮じ』さんに通ったのは、ほんの数ヶ月だったので、
閉店を知ったときは本当に驚き、そして落胆しました。
記事に同意していただき、感謝すると同時に、
今後も、お店のファンの方たちに認められるような投稿を心がけますので、
どうかよろしくお願いします。
返信する
Unknown (れい)
2023-04-10 19:00:20
榮じさんを懐かしんで検索してこちらのブログに辿り着きました。
記事を読みながら思わず「うん、うん、そう!そう!」と相槌を打ってしまいました。
素敵な思い出を記事にしてくださりありがとうございます。
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