奥山大史監督「ぼくのお日さま」(★★★★★)(2024年09月23日、キノシネマ天神、スクリーン2)
監督 奥山大史 出演 越山敬達、忍足亜希子、池松壮亮
傑作。
冒頭の初雪のシーン。とても美しい。透明な空気のなかの水分が結晶して、舞うように空から降ってくる。それが繊細で、美しい。純粋そのものが結晶になって舞っている感じ。みつめる少年の目が、同じように透明で純粋で美しい。
この印象が、最初から最後まで、まっすぐにつづく。
ひたすら透明、ひたすら美しい。純粋。
少女の嫉妬、そしてそこからはじまる「裏切り」さえも透明で美しい。この場合の透明は、何もかもがはっきり見えるということである。はっきり見えるから、それを否定できない。少女は自分の気持ちを裏切ることなどできない。純粋な気持ちが、嫉妬さえも貫くのである。嫉妬が間違っているといえない。嫉妬を間違っていると言えるのは、嫉妬をしたことがないひとだけである。
こんなことは、しかし、書く必要はないなあ。
なんの説明も必要としない。
透明で純粋で美しい、と書けば、それでおしまい。
この透明さ、純粋な美しさを、最初から最後までつらぬけるのは大変な技量である。人間をみつめる目がまっすぐなのだとわかる。カメラワークに演出がなく、それが映画をいっそう純粋なものにしている。
唯一、私が気に食わなかった点をあげるとすれば。少年の父親が少年と同じように吃音であること。これは、なんともいえず不自然だった。
しかし、傑作。今年のベスト1の映画。
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