伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

絶望キャラメル

2022-07-27 21:25:06 | 小説
 前市長時代にテーマパーク建設に市の未来を賭けたが破綻し、今は地場産業が衰退して価格の下がった土地を前市長が手を結んだ不動産業者や電力会社に買収させて太陽光発電用地や廃棄物処理用地に転用する工作を進めている地方都市葦原に流れ着いた生臭坊主放念が、小学校の同級生だった現市長に無理強いして学校に手を回したりわずかばかりの資金を出させて、隠れた才能のある地元の高校生4人を口説いて市の再生を図るプロジェクトを進めるという小説。
 放念の永平寺での修行過程の描写で、「やがて、性欲は遠ざかり、女性の姿も灯籠の形も等しく愛でることができるようになり、一輪の百合の花にも勃起するようになった。性欲はただ抑えるのではなく、あらゆる事象と心を通わせ合うのに利用することもできるのである」(22ページ)というのがあり、斬新な悟りの捉え方かとちょっと考え込んでしまったのですが、これはやはり単なる冗談なんでしょうね。
 見出された高校生たちの活躍は、例えば石投げ好きの帰宅部の黒木鷹が元プロ野球選手のコーチを受けると140キロを超える速球にカーブ、スライダー、フォークを投げられるようになりというのを見ると「タッチ」(野球漫画じゃなくて恋愛漫画だから許されるんじゃないか…)の上杉達也かと思うような荒唐無稽さですが、シリアスな小説ではなくてエンタメ小説なんで、それはそれで楽しめるというところでしょう。
 諸悪の根源とも言うべき前市長の名前が「武中塀蔵」というのは、作者がかなりの確信を持っていることを感じさせます。


島田雅彦 河出文庫 2022年2月20日発行(単行本は2018年6月)
コメント
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