伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

向日葵とRose-Noir

2010-01-04 21:40:33 | 小説
 元彼の似姿のマネキンを作り続ける姉レイカに毎夜抱擁される生活を送る尊大で反抗的な態度の16歳高校1年生佐藤守が、同級生の高ビーな美少女雛見雛と親しくなり肉体関係を持つがラリっているうちに雛が死んでしまい死体を隠蔽して何食わぬ顔で放浪し日常に戻る空想・妄想小説。
 主人公の自己認識は、授業は一切聞かずしかし成績は超優秀、髪を金髪に染め容姿端麗、しかし趣味はウサギの監禁で特技はクレーンゲームのぬいぐるみゲット、読む側から見れば身勝手で誇大妄想を持つオタクというところ。この主人公が、向精神薬でラリったりしながら、姉との怪しげな関係や同級生の美少女と肉体関係を持った末に死体処理と隠蔽・逃走を図るという展開ですから、全体として現実感は希薄です。主人公の行動も、自分のしたことも他人事の感覚で責任感などまるで感じられず、責任回避と自暴自棄の間を行き来するだけで、責任を回避できると見れば隠蔽と忘却へと流れていきます。
 かつての吾妻ひでおの漫画の世界を、ギャグとしてではなく小説化したような感じがします。こういう語り自体がギャグとして読むべきなのかもしれませんが、私にはそういう読み方ができず、世代のギャップを感じます。


鏡征爾 講談社BOX 2009年10月1日発行
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悪いことはしていない

2010-01-04 00:46:42 | 小説
 社交的でなく地味目の性格で飾り気のない26歳事務職の真野穂波が、美形で社交的で女の子っぽい同僚坂東亜衣やスポーツクラブで知り合った落ちついた40歳女性麻生潤、ワーカホリックのできる上司山之辺、体育会系の先輩営業職幸田らに囲まれながら、仕事上や人間関係での悩みを感じ乗り切っていく姿を描いたお仕事・友情小説。
 穂波が大手企業の営業アシスタントとして仕事にやりがいを感じ山之辺に引きづられながらワーカホリック気味に仕事にのめり込む「ピスタチオ・グリーン」と、独立した山之辺のベンチャー企業に付いていき予想外の業務に意欲を失い惰性的に指示に従って仕事をこなす「デビル・ブラック」の2本立てになっています。
 1作目の後半でそれまで亜衣の社交的な面や女らしさにコンプレックスを持っていた穂波と亜衣の関係が大きく変化し、同時に穂波には憧れの存在だった潤も素性が明らかになり、2作目では山之辺も変化し・・・と、穂波のまわりの人物像が変化していくあたりが巧い見せ方かなと思います。その中でも穂波の亜衣への友情が軸になるところが、腐れ縁っていう感じもするけど、和みます。
 1作目、2作目ともにミステリーっぽい部分がありますが、その部分は、ちょっと作りすぎの感じもします。1作目の方は展開が見えてしまうし、2作目の方は読めませんけど真相がわかってもスッキリしない感じですし。私は、ミステリーとしてではなく、穂波の仕事と亜衣への思いを描いた小説として味わう作品だと思います。


永井するみ 毎日新聞社 2009年3月25日発行
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Q&Aこれで安心! 改正特定商取引法のすべて[第2版]

2010-01-03 20:22:25 | 実用書・ビジネス書
 訪問販売・通信販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引(マルチ商法)・特定継続的役務提供取引(エステ・外国語会話教室・学習塾・家庭教師派遣・パソコン教室・結婚相手紹介)・業務提供誘引販売取引(内職・モニター商法)を規制する消費者保護法「特定商取引に関する法律」の解説本。
 規制対象商品・サービスの限定の撤廃、次々販売の規制、通信販売での返品原則可能化等を決めた2008年の法改正(2009年12月1日施行)を含めて、法規制の内容をQ&A形式で解説しています。法律の条文の意味内容については手際よく説明されています。
 本文ではクーリング・オフによる解除を積極的に呼びかけ、契約文書や広告の内容に問題がある業者とは取引しないよう呼びかけるなど、消費者個人向けを意識しているようです。しかし、最初の方の訪問販売ではやや具体的な例を出して解説されていますがそれ以外の部分は具体的なケースに乏しく抽象的な条文の解説に終始している感じで、法律の言葉や概念が説明抜きに使われる部分も割とあり、一般の消費者の読者が読み通すにはちょっときついように思えます。この種のものを読み慣れているか、業務の必要に迫られて読む人、つまり消費者相談員とか法規制に対応する必要のある業者側の担当者向きかなという気がしました。


村千鶴子 中央経済社 2008年11月10日発行 (初版は2005年)
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賢い皮膚

2010-01-03 12:37:52 | 自然科学・工学系
 皮膚のしくみについての入門書。皮膚については、皮膚の病気と治療法の研究は進んでいるが、健康な皮膚の機能についての研究者は少なく、著者のような企業の研究員と他の分野の研究者が関心を持っているという嘆きを交えながら、皮膚の機能についてわかったことを説明するというスタンスです。
 5感の作用のうち皮膚感覚(触覚)については、ほとんどわかっていないそうです。温度を感じるタンパク質装置が発見されたのは1997年、その後痛みを感知するタンパク質がいくつか発見されたが痒みについてはまだ想像の域を出ない(118~119ページ、130~134ページ)とか。表皮の細胞ケラチノサイトには痛みや温度の受容体、さらには光を感じるタンパク質なども発見され、表皮が様々な知覚に関与している可能性があるという指摘は刺激的です。皮膚が傷つけられたときの回復速度は、皮膚から蒸散する水分量や電位差(マグネシウムイオン等の分布)によって変わり、皮膚はこれらをモニターしながら回復させる程度を決めているというのも興味深いところです。
 冬の寒さは緩和されてきたのに冬の皮膚科外来受診者数は増えているそうで、それは低湿度では肌荒れが生じやすいところ皮膚は環境変化に応じてバリア機能を対応させることができるがその対応には数日はかかるのに、日本の都市の環境湿度は都市化(コンクリート化)により劇的に低くなり他方家屋の機密性が飛躍的に向上して室内の湿度は高くなって1日の湿度変化の急変動に皮膚のバリア機能が対応できなくなって破綻するためではないかとされています。
 マッサージやツボの再評価とかも含め、まだわからないことがとても多いという意味でも、いろいろ考えさせられる本でした。
 民間研究所の研究員という著者の立場を反映してか、ちょっとやっかみとか金儲け志向の表現が気になるのが残念ですが。


傳田光洋 ちくま新書 2009年7月10日発行
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