有名選手とコマーシャル

中国のインターネットは先日の北京五輪、陸上１１０メートル障害で棄権した劉翔選手を罵唐ｷる声で溢れ返った、と言う。「この脱走兵め」「意気地なし」「１３億人を傷つけた。新記録だ」等々。大手サイト掲示板には、万単位の書き込みが殺到したそうな。「がっぽり儲けて、最後はこれか」と言う「お金」絡みの批判が、非常に多いのが特徴だと言う。

これは、超格差社会の反映と言って良かろう。劉翔選手がＣＭで得た収入は昨年、推定６０００万～７０００万元（約９億６０００万～１１億２０００万円）だったと言う。中国メディアの報道によれば、アテネ五輪での金メダル獲得後に、商業活動が増え、自動車、不動産などの広告収入だけで８０００万元に達した、とか。高級外国製自動車を乗り回し２億円の豪邸を購入したことなども話題となった。「北京五輪に備えて練習に専念すべきだ」との意見は、以前から寄せられていた。

スメ[ツ選手が、本体の練習を怠り、コマーシャル活動に身を入れて、お金に執着していたとすれば、負けるのは当然である。「練習に専念せず、タレント活動ばかりしているからだ」「体調管理はスメ[ツ選手の基本中の基本」などと批判の書き込みが各ネット掲示板に寄せられており、「負けるのが浮｢から仮病したのでは」といった意見もあるそうな。「中国の名誉のためにも諦めてはいけなかった。這ってでもゴールまで行くべきだった」といった意見が多数あると言う。当然金メダルを取るだろう、と言う中国人達の期待を大きく裏切った劉翔選手に対して、罵唐≠ﾑせる気持ちはよく分かる。

魔ﾁて、日本人の選手達の活躍ぶりを眺めてみよう。私は「敗者にも暖かい眼差しを」と先に書いたが、もし敗戦が、当然なすべき練習を怠った結果だとしたら、「そうも行かなくなるなあ」と思い返しているところだ。実は、我が国でも、コマーシャルに出ている選手達は実に多い。中で、幸い北島選手のように２種目「金メダル」のような選手もいるが、評判唐黷ﾉ終わった選手の中には、案外、コマーシャル収入のお蔭で、リッチな生活に馴れ、厳しい練習を怠った選手もいるのではないか。誰と名指しする事は控えるが、しょっちゅうテレビに出ているタレント化された選手も、何人かいる。

それにしても、商業活動とは言え、よくもまあ、テレビ、新聞、で繰り返し流される宣伝、広告の多い事。全く関係のない場面や場所で、有名選手とか美人女優とか歌手とかがにっこり笑いかけ、如何にも、自分も使用している、便利している、そのお蔭でこうなっていると宣伝する。美味しそうに食べる食事風景を眺めながら、私は「あのタレントは、あれを食べる筈なんてないよな」と思っている。一流選手を蝕むのも、才能ある女優を駄目にするのも、すべて、ほんの短時間で、莫大な収入が得られるコマーシャルにあるのだ。ハングリー精神を忘れ去ったところに、栄冠はない。