本日岩波書店の図書10月号が届いていた。さっそく目を通し始めたが、本日は以下の5編で目が疲れて終了。
・[表紙]魔術師 司 修
「『洪水はわが魂に及び』とか『河馬に噛まれる』のテキストを読んで、「アッ」と思った私は、催眠術にかけられて、徐々に思い出す男と似ています。‥トーマス・マンの『マリオと魔術師』‥。イタリアにおけるファシズムの嵐、ナチズムが、魔術師の舞台に繰り広げられていたのでした。夢なのか、私の無意識中にある永遠の謎なのか分かりません。」
・対話主義と価値多元論 桑野 隆
「今年はドストエフスキー生誕200年にあたる。‥ミハイル・バフチンとアイザィア・バーリンは「複数性」や「自由」を重視する点でも重なり合っている。‥両者ともに、時代の焦眉の問題を念頭において思想史再考を試みた貴重な範例となっている‥。」
・親父の枕元 原田宗典
・ヴァルター・ベンヤミン 危機のなかの世界史 小川幸司
・山桜の花のかげで 長谷川櫂
「「旅に病で夢は枯野をかけ廻る 芭蕉」芭蕉最後の句に漂う悲壮感の背後には「かるみ」への失望があったのではないか。最後の最後まで悩みつづける。人間であるかぎり安らかな死などないのだ。」
「谷崎潤一郎は俗に耽美派といわれるが、彼ほど時代の空気を鋭敏に写し取った作家はいない。(『陰翳礼讃』)に出てくる「純日本風」という言葉は、西洋化のはじまる以前の江戸文化がほんとうは中国などの外来文化の変容したものだったにもかかわらず、昭和初期の日本人はそこに純粋な日本の文化があったと錯覚し美化し郷愁を抱きはじめていたことを物語っている。この日本文化に対する幻想こそ昭和の国粋主義を生み出した時代の空気ではなかったか。『陰翳礼讃』は明治の国家主義が昭和の国粋主義に変貌する昭和初期の時代の空気をみごとに反映した名随筆なのだ。」