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映画は映画だ (2008/韓国)(チャン・フン) 75点

2009-04-01 14:23:27 | 映画遍歴
何か古く1960年代のノスタルジーを深く感じさせる映画を垣間見た気がする不思議な映画であるが、その甘さとは別に、映画を題材に、映画とは何かを主題にしたその突っ込みどころは、これが初演出のチャン・フンの映画構築の大きさを物語っており、なかなか微笑ましいものはあった。また映画への噴出力がそこには感じられる。

リアルな映画って、何? リアルな映画でもやはりそこにあるのは完全なる虚構だということ。僕たちはリアルな映画から虚構を通してリアルな思考、感情、夢、そして日常を体得している。

ギドクの影響は多少感じられる。二人の男の対照的な衣装、白と黒。ギドクの新作「悲夢」の白黒同色の世界。つまりこの映画の二人は一人の人間の分割であり、いわば双子であります。この視点で見ていると楽しく見ていられたのだが、ラストで急に「映画は映画だ」で吹っ切ってしまう。

何言ってんの? 一人の男の分割型、なんかじゃネエよ。ヤクザはヤクザ。映画スターとはまったく別の次元のブラックな世界さ。と、リアルとは虚構の延長線で生じるものなんだと僕たちに冷水を浴びせる。

とはいえ、このラストも映画という虚構のハナシだ。僕たちが映画館を出て映画の余韻に浸る気持ちを奈落に落とす現実の町並みの世俗の音。これと全く同じだ。そう、映画は虚構だ。僕らが常に感じている映画のリアルも、煎じ詰めれば各観客の個人的な主観に過ぎないのである。

全体的にこの映画は、映画への愛情は感ずるものの、何か映画に対するほとばしるような強い愛というほどのものは感じなかった。(ソ・ジソプが夜中にDVDを見ているシーンの映画少年ぶりだけは少々心情的になったが、、)映画に対する愛(オマージュではなく)というより映画をモチーフにした映画作成のための映画作りといったイメージが僕には強く感じられた。

まあ、でも最近の韓国映画では上質の出来であり、2時間十分楽しめたことは事実だ。映画の中の映画シーンも多く、その切り分け演技も(第三者である観客に納得させる演技で)二人の俳優も熱演だった。見事である。役柄的にソ・ジソプのほうがふた周りほど役得ではあったが、、。

少々文句を言えば、スターマネージャーの寝返りをあっと驚くように描写するとか、小さなところでの起伏が欲しかった。それと、二人の女優は如何せん、少々魅力が足りないかなあ。みんなに見られての喫茶店シーンが感動的にならなかったのもそれが一因ではないかとも思う。

まあ、でも、企画としては映画ファンの泣き所をよく知っている監督であることよ。これがデビュー作であることの驚きを僕たちは喜ぶべきなのかもしれない。期待できる監督である。

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