
そろそろ報道も落ち着いてきた頃だろうか。
4人が死傷した東武伊勢崎線竹ノ塚駅(東京都足立区)近くで起きた踏切事故。
トップニュースとして報道され、事故現場を番組でご覧になられた方も多いと思う。
目の前を時速90kmの列車が通り抜けていく映像に、驚かなかった人はいないはずだ。
今回の事故を風化させないためにも、思うことを書き連ねるとする。
今夜放送された報道首都圏(NHK総合)を見た。
放送内容は以下の通りであった(抜粋)。まずは概要を把握して欲しい。
実のところ、私は事故現場となった踏切を通ったことがある。昨年の夏のことだ。
トップの写真は、その時に撮影したもの。(その他詳細については、この記事を参照)。
報道では「ここは典型的な“開かずの踏切”」と紹介されていたが、実際その通りで、
私がこの踏切に差し掛かった時も、ラッシュ開始時刻の夕方5時過ぎであったためか、
5~10分程待つことを余儀なくされたと記憶している。ストレスが徐々に蓄積していく感覚。
それをリアルに体感できた場所こそ、まさに今回事故が起こった竹ノ塚の踏切であった。
では、今回の踏切事故を未然に防ぐことは出来なかったのか。
竹ノ塚の踏切に関しては、以前からその危険性が指摘されていたという。
事実、20年以上前から地元住民は線路の高架化を行政側に要望していた。
しかしながら、高架化には約300億円に上る費用が必要だと見積もられた結果、
行政側の財政的に厳しいという理由から、結局のところ高架化の要望は却下された。
また、遮断機を操作していた踏切保安係も危険性を認識していたという(以下記事)。
遮断機手動操作の危険「2年前に指摘」逮捕の保安係 (読売新聞) - goo ニュース
「ロックを解除して遮断機を上げるという危険な行為を続けたくない」――。東京都足立区の東武伊勢崎線竹ノ塚駅近くの手動式踏切で3月15日、4人が死傷した事故で、遮断機を誤操作し逮捕された係員が警視庁捜査1課の調べに、「約2年前に当時の同駅幹部に、内規に反しながら遮断機を上げて通行人を通らせている現状の危険性を訴えた」などと供述していることがわかった。
(中略)
また、小松容疑者の上司である竹ノ塚駅長も「踏切保安係が、普段から(ロックを解除して)遮断機を上げていたことは知っていました」と、内規違反を黙認してきたことを認める供述をしているという。
「会社が現場の状況を省みず、ダイヤを増発し、旧式のシステムを使い、金銭面から高架線化を先送りしていたのだとしたら、逮捕された係員と同罪か、それ以上の責任がある」。捜査指揮にあたる同課幹部は厳しい表情で語った。
現場の声は、いつ事故が起きてもおかしくなかった状況を物語っている。
今回の踏切事故は起こるべくして起こったと言っても過言ではないだろう。
しかしながら、早急に高架化を実現していれば事故は未然に防げた可能性が高い。
大車庫の存在など東武鉄道の設備的環境が原因で高架化が事実上不可能だったとしても、
運行ダイヤを改正したり、保安係に業務規範を徹底させたり、何らかの対策は取れたはずだ。
国や東武鉄道が十分な安全対策を怠ったのは明白である。責任を追及されて然るべきだろう。
私は、今回の踏切事故が単なる人為的なミスによるものだとは思っていない。
原因はもっと深いところにある。行政の対応の仕方に問題があるのではないか。
当然のことながら、国民の財産と生命を守るのが国家の使命であり、役割である。
無駄な公共事業に多額の税金をつぎ込むのではなく、本当に必要とされているところに
本当に必要なものを建設していく。この安全を供給する仕組みが国家財政の本質ではないのか。
我々の身近なところにある危険を取り除く。この基本理念を政治家や役人は全く分かっちゃいない。
また、企業に問題があれば、行政指導や業務改善命令を行い国が積極的に介入していけばいい。
法令により企業を管理し、国民の安全を確保することが国家の役割だ。それを怠ってはならない。
全国には手動式遮断機が、未だ数十箇所存在していると聞く。
あと何人人が死ねば具体的な対策が取られるのだろうか。
国や鉄道会社にはその姿勢を改めてもらいたい。
今日も竹ノ塚の踏切は動いている。
多くの人があの踏切を利用し、生活基盤を築いている。
今回の踏切事故を教訓に、行政には徹底した再発防止策を講じて頂きたい。
そして国家予算の歳出を見直し、税金の正しい使い方を学び、それを実践して頂きたい。
納税の義務を負う一人の国民として、この記事を通し、強くお願い申し上げる次第である。
最後になりましたが、亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
【追記】竹ノ塚踏切事故について取り上げた秀逸な記事
★ヒューマンエラー 竹の塚踏切事故を考える(大いなる夢)
★東武伊勢崎線竹ノ塚駅踏切事故から二週間が経った(極東ブログ)
★NHK 首都圏特報「開かずの踏切で起きた人身事故」……なにが問題か、またしてもぼかされている!(Letter from Yochomachi > TV, Cinema & Books > 余丁町散人の隠居小屋 - Blog)
★【竹ノ塚の踏切事故】踏切のおじさんを信頼して、感謝していた私が思うこと。(【あ。これ、おいしい!】)
いずれの記事も鋭い視点で書かれています。是非読んでみて下さい。(敬称略)
4人が死傷した東武伊勢崎線竹ノ塚駅(東京都足立区)近くで起きた踏切事故。
トップニュースとして報道され、事故現場を番組でご覧になられた方も多いと思う。
目の前を時速90kmの列車が通り抜けていく映像に、驚かなかった人はいないはずだ。
今回の事故を風化させないためにも、思うことを書き連ねるとする。
今夜放送された報道首都圏(NHK総合)を見た。
放送内容は以下の通りであった(抜粋)。まずは概要を把握して欲しい。
踏切はなぜ開いたか ~検証・東武鉄道手動踏切事故~
先月15日、東武鉄道伊勢崎線竹ノ塚駅近くにある手動式の踏切で4人の女性が死傷する事故が起きた。事故は、遮断機を操作する係員が、電車の接近に気づいていながらロックを解除して遮断機を上げ、通行客を踏切内に入れたことが原因と見られている。また、係員が、人や車を通すため、会社の規則を破って独自の判断で遮断機を上げ下げしていた実態も明らかになってきた。係員は、何故、遮断機を上げたのか。番組では、元保安係の手記や周辺住民の証言などをもとに事故の原因と背景を検証する。
実のところ、私は事故現場となった踏切を通ったことがある。昨年の夏のことだ。
トップの写真は、その時に撮影したもの。(その他詳細については、この記事を参照)。
報道では「ここは典型的な“開かずの踏切”」と紹介されていたが、実際その通りで、
私がこの踏切に差し掛かった時も、ラッシュ開始時刻の夕方5時過ぎであったためか、
5~10分程待つことを余儀なくされたと記憶している。ストレスが徐々に蓄積していく感覚。
それをリアルに体感できた場所こそ、まさに今回事故が起こった竹ノ塚の踏切であった。
では、今回の踏切事故を未然に防ぐことは出来なかったのか。
竹ノ塚の踏切に関しては、以前からその危険性が指摘されていたという。
事実、20年以上前から地元住民は線路の高架化を行政側に要望していた。
しかしながら、高架化には約300億円に上る費用が必要だと見積もられた結果、
行政側の財政的に厳しいという理由から、結局のところ高架化の要望は却下された。
また、遮断機を操作していた踏切保安係も危険性を認識していたという(以下記事)。
遮断機手動操作の危険「2年前に指摘」逮捕の保安係 (読売新聞) - goo ニュース
「ロックを解除して遮断機を上げるという危険な行為を続けたくない」――。東京都足立区の東武伊勢崎線竹ノ塚駅近くの手動式踏切で3月15日、4人が死傷した事故で、遮断機を誤操作し逮捕された係員が警視庁捜査1課の調べに、「約2年前に当時の同駅幹部に、内規に反しながら遮断機を上げて通行人を通らせている現状の危険性を訴えた」などと供述していることがわかった。
(中略)
また、小松容疑者の上司である竹ノ塚駅長も「踏切保安係が、普段から(ロックを解除して)遮断機を上げていたことは知っていました」と、内規違反を黙認してきたことを認める供述をしているという。
「会社が現場の状況を省みず、ダイヤを増発し、旧式のシステムを使い、金銭面から高架線化を先送りしていたのだとしたら、逮捕された係員と同罪か、それ以上の責任がある」。捜査指揮にあたる同課幹部は厳しい表情で語った。
現場の声は、いつ事故が起きてもおかしくなかった状況を物語っている。
今回の踏切事故は起こるべくして起こったと言っても過言ではないだろう。
しかしながら、早急に高架化を実現していれば事故は未然に防げた可能性が高い。
大車庫の存在など東武鉄道の設備的環境が原因で高架化が事実上不可能だったとしても、
運行ダイヤを改正したり、保安係に業務規範を徹底させたり、何らかの対策は取れたはずだ。
国や東武鉄道が十分な安全対策を怠ったのは明白である。責任を追及されて然るべきだろう。
私は、今回の踏切事故が単なる人為的なミスによるものだとは思っていない。
原因はもっと深いところにある。行政の対応の仕方に問題があるのではないか。
当然のことながら、国民の財産と生命を守るのが国家の使命であり、役割である。
無駄な公共事業に多額の税金をつぎ込むのではなく、本当に必要とされているところに
本当に必要なものを建設していく。この安全を供給する仕組みが国家財政の本質ではないのか。
我々の身近なところにある危険を取り除く。この基本理念を政治家や役人は全く分かっちゃいない。
また、企業に問題があれば、行政指導や業務改善命令を行い国が積極的に介入していけばいい。
法令により企業を管理し、国民の安全を確保することが国家の役割だ。それを怠ってはならない。
全国には手動式遮断機が、未だ数十箇所存在していると聞く。
あと何人人が死ねば具体的な対策が取られるのだろうか。
国や鉄道会社にはその姿勢を改めてもらいたい。
今日も竹ノ塚の踏切は動いている。
多くの人があの踏切を利用し、生活基盤を築いている。
今回の踏切事故を教訓に、行政には徹底した再発防止策を講じて頂きたい。
そして国家予算の歳出を見直し、税金の正しい使い方を学び、それを実践して頂きたい。
納税の義務を負う一人の国民として、この記事を通し、強くお願い申し上げる次第である。
最後になりましたが、亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
【追記】竹ノ塚踏切事故について取り上げた秀逸な記事
★ヒューマンエラー 竹の塚踏切事故を考える(大いなる夢)
★東武伊勢崎線竹ノ塚駅踏切事故から二週間が経った(極東ブログ)
★NHK 首都圏特報「開かずの踏切で起きた人身事故」……なにが問題か、またしてもぼかされている!(Letter from Yochomachi > TV, Cinema & Books > 余丁町散人の隠居小屋 - Blog)
★【竹ノ塚の踏切事故】踏切のおじさんを信頼して、感謝していた私が思うこと。(【あ。これ、おいしい!】)
いずれの記事も鋭い視点で書かれています。是非読んでみて下さい。(敬称略)
トラックバックありがとうございます。
現在、地元では署名運動をしています。
踏切では、両出口と中央に人が配置されています。
竹ノ塚には事故のあった踏み切りの他にもう一つ
踏切がありますがそちらにも人が配置されています。
風化させずに現状を変えていこうと地元では動いております。
今回の踏切事故に関して、様々なブログを拝見致しましたが、
特に地元、竹ノ塚にお住まいの方の意見が非常に参考になりました。
今後の対策として、東武鉄道は保安係の人員を倍増する
という措置を取りましたが、根本的解決とは程遠いでしょう。
いい加減、手動式の限界に気付くべきだと私は思っています。
明るい未来のために、署名運動が功を奏してくれることを願います。
NHKの番組では10年・300億円の壁というのを最後に言っていましたが、お書きになっている方もいるように、もう20年以上も前からの要望ですから、自治体・東京都と東武鉄道が本気だったら、とっくに解消できてる問題なんですよね~
地権者さんたちの反対ももちろんありますが、設置しようとする側が本気になれば、納得できる補償交渉もできるはずですし、現に駅前の箱物事業は、高架の問題をさしおいて、どんどん進んでいるんですし。
地権者さんたちの根強い反対は事実としてあります。
ただ、だから高架化ができない・難しいというのは、地権者さんの反対をいいことに、結局は行政と東武が、実行責任のたらいまわしをしているようにも、地元民には見えてしまうのも事実です。
報道首都圏(NHK総合)を私も観ましたが、
あの放送時間内でやれることとしたら、
ああいう内容になってしまうだろうとは思いました。
50分枠以上の「NHKスペシャル」だったら、
事故の解明のあと、地元の事情や行政が放置してきた
経緯を追えたかもしれないかなと。
だったら、NHKお得意のシミュレーションCGで、
実際に高架化、道路のアンダーパスにした場合の
都市計画予想シーンによって、地元の反対の声が
どうして起こるのか等、地元でない人にもわかりやすく
なるのに、とも思いました。
亡くなられた方のご冥福をお祈りしています。
この不幸な事故が、なにかしらの解決を見出すきっかけ
になることも願います。
危険性を訴えたにも係わらず、黙殺した会社。
今回の事故の一番の責任は東武鉄道ですが、それを監督する国土交通省の責任も追求する必要があると考えます。
車に例えて言うならば高速道路を横断する人のために係員がゲートを開けるようなことを何故承認したのか?(電車なら許されるのか?)一度承認したとしても現場の状況を定期的に確認したのか?
効率を安全より優先させてはならない原則はどこで逆転してしまったのか?
対策と捜査が早く進むことを願っています。
最後に、亡くなられた方のご冥福をお祈りします。
初めまして、こんにちは。
NHKの番組に対し大変不満に思ってらっしゃること、同感に思います。
今回の踏切事故に至った背景には様々な要因が絡み合っているので、
多角的に検証し、総合的に判断しなければ意味を成さないと思います。
NHKは公平な立場に立ち、地域住民の一部が高架化に反対した
という事実を盛り込むべきでした。反省すべき課題だと思います。
なお、NHKの番組に対し何らかの不満を抱かれた場合は、
遠慮することなくNHKに意見を寄せて欲しいと思います。
https://www.nhk.or.jp/plaza/mail_program/syutoken.html
>kisaraさん
初めまして、こんにちは。
地元住民の方の意見という意味でも、
kisaraさんの記事は大変参考になりました。
危険性を認識しながら問題解決を先送りにしている現状。
この姿勢自体が、もっといえば民主主義の崩壊に繋がるのではないか
と私は危惧しています。意見が反映されないことがどれ程危険か・・・。
今回の踏切事故に関して言えば、金額の大小ではなくて、
命の重さ、尊さを第一に考えて欲しいです。安全を優先すべきです。
地元の声が行政側に届いて欲しいと願って止みません。
>tzuccaさん
初めまして、こんにちは。
NHKの番組に対する不満は確かにありますよね。
出来ることなら、再編集してもう1度放送して欲しいと思います。
この国を代表する報道機関、マスメディアなのですから、
NHKには公平・中立の立場で事件の事実関係を検証して欲しいです。
ただし、責任を追及する場面では厳しく取材して下さることを望みます。
再発防止のためにも、もっと世論が高まって欲しいし、然るべきです。
>tatsuoさん
初めまして、こんにちは。
保安係も犠牲者だという意見、同感です。
もっと広く言えば、足立区竹ノ塚の周辺住民を始め、
あの踏み切りに関わる全ての人が被害者ではないでしょうか。
怠慢な鉄道会社、政府により、危険な生活を強いられてきたのですから。
特に、保安係の方が感じていたストレスは相当なものだったと推測します。
事件や事故が起きた場合、責任を取るべきは上の立場の人間です。
監督責任があるからです。今回の例で言えば、竹ノ塚駅長の他、
国土交通省のトップら関係者、鉄道担当者にも反省点はあるでしょう。
責任の所在を明確にして、事故の再発防止を徹底して欲しいと思います。
>職人快速さん
初めまして、こんにちは。
謙遜する必要は全くございません。
当事者だけではなく、より多くの人間が
この問題に対し関心を抱くことが何よりも重要だと考えます。
今回の踏切事故を始め、日本の交通事情には危険な点が多々あります。
世論を高め、少しでも現状を改善していこうとする姿勢。
これこそが今を生きる私達に問われているものではないでしょうか。
ブログで積極的に意見を発信すること。大いに効果があると思います。
地道な作業かも知れませんが、やがて実を結ぶと私は信じています。