2020年2月9日(日)(日本時間:10日(月) )に行われた第92回アカデミー賞にて、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)の4部門で受賞する快挙を成し遂げた。非英語作品が作品賞を受賞するのは初めて。
そこで、これまで作品賞にノミネートされた非英語作品の一覧を表にまとめてみました。
年度 | 回 | 題名/原題(米国題) | 監督 | 主な製作国 | 言語 | 他部門など |
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1938年度 | 第11回 | 『大いなる幻影』 La grande illusion | ジャン・ルノワール | フランス | フランス語など | 作品賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは10本。 |
1969年度 | 第42回 | 『Z』 Z | コスタ=ガヴラス | フランス=アルジェリア | フランス語など | 編集・外国語映画賞を受賞。 作品・監督・脚色賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは5本。 |
1972年度 | 第45回 | 『移民者たち』 Utvandrarna (The Emigrants) | ヤン・トロエル | スウェーデン | スウェーデン語など | 作品・監督・主演女優・脚色・外国語映画('71年度)賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは5本。 |
1973年度 | 第46回 | 『叫びとささやき』 Viskningar och rop (Cries & Whispers) | イングマール・ベルイマン | スウェーデン | スウェーデン語など | 撮影賞を受賞。 作品・監督・脚本・衣装デザイン賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは5本。 |
1995年度 | 第68回 | 『イル・ポスティーノ』 Il postino | マイケル・ラドフォード | イタリア=フランス | イタリア語など | 音楽賞(オリジナルドラマ)を受賞。 作品・監督・主演男優・脚色賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは5本。 |
1998年度 | 第71回 | 『ライフ・イズ・ビューティフル』 La vita è bella (Life Is Beautiful) | ロベルト・ベニーニ | イタリア | イタリア語など | 主演男優・音楽(オリジナルドラマ)・外国語映画賞を受賞。 作品・監督・脚本・編集賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは5本。 |
2000年度 | 第73回 | 『グリーン・デスティニー』 臥虎藏龍 / Crouching Tiger, Hidden Dragon | アン・リー | アメリカ=中国 | 中国語 | 撮影・作曲・美術・外国語映画賞を受賞。 作品・監督・脚色・衣装デザイン・編集・歌曲賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは5本。 |
2006年度 | 第79回 | 『硫黄島からの手紙』 Letters from Iwo Jima | クリント・イーストウッド | アメリカ | 日本語など | 音響編集賞を受賞。 作品・監督・脚本賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは5本。 |
2012年度 | 第85回 | 『愛、アムール』 Amour | ミヒャエル・ハネケ | フランス=ドイツ=オーストリア | フランス語など | 外国語映画賞を受賞。 作品・監督・主演女優・脚本賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは9本。 |
2018年度 | 第91回 | 『ROMA/ローマ』 Roma | アルフォンソ・キュアロン | メキシコ | スペイン語など | 監督・撮影・外国語映画賞を受賞。 作品・主演女優・助演女優・脚本・美術・音響編集・音響調整賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは8本。 |
2019年度 | 第92回 | 『パラサイト 半地下の家族』 기생충 (Parasite) | ポン・ジュノ | 韓国 | 韓国語など | 作品・監督・脚本・国際長編映画賞を受賞。 美術・編集賞にノミネート。 この年の作品賞ノミネートは9本。 |
以上の11本です。
上記のように『グリーン・デスティニー』と『硫黄島からの手紙』は主な製作国にアメリカ合衆国が入っています。米国以外の映画で非英語作品に絞ると9作品が今までのアカデミー賞で作品賞にノミネートされたことになります。
『パラサイト 半地下の家族』より前の10本のうち作品賞受賞に一番近かったのは、主演男優賞を受賞した『ライフ・イズ・ビューティフル』と、監督賞を受賞した『ROMA/ローマ』でしょうか。
『ライフ・イズ・ビューティフル』は1999年2月9日にノミネート発表までは週末集計だと全米で最大228館で上映されていました。ノミネート発表を受けて週末興行収入がトップ10入りして8位になり、上映館も685館まで増えました。3月21日の授賞式のあとには2週に渡ってトップ10に再び入り、上映館も1,136館に増えました。
『ROMA/ローマ』はアメリカではNetflixが配給だったため、数字が発表されていません。
『パラサイト 半地下の家族』は、全米の週末興行収入では今のところ11位が最高位。10月と11月と2月に1週ずつ、計3週で記録してます。週末ではなく1日ごとの集計では11月に8位を1日、10位を2日記録し、授賞式の翌日からは4位を連日記録しています。今週末に週末興行収入で初めてのトップ10入りは確実そうです。上映館数は2020年1月13日のノミネート発表までは11月の620館が最大で、ノミネート発表後は1,060館までに増えています。
なお、これまでの作品賞の受賞作には英語作品ながらインドが舞台の『ガンジー』 Gandhi (1982年) や『スラムドッグ$ミリオネア』 Slumdog Millionaire (2008年)、中国が舞台の『ラストエンペラー』 The Last Emperor (1987年、監督はイタリアのベルナルド・ベルトルッチ) があります。
『ラストエンペラー』は作品・監督・脚色・撮影・作曲・美術・衣装デザイン・音響・編集賞の9部門で受賞し、アメリカ資本ではない映画の最多受賞記録となっています。
また、フランス映画だが無声映画の『アーティスト』 The Artist (2011年) も作品賞を受賞してます。無声映画で作品賞を受賞したのは、第1回の『つばさ』 Wings (1927年) と第84回の『アーティスト』の2本のみです。
最後に、アカデミー賞の作品賞のノミネート作品数について書きます。
アカデミー賞 | 本数 | |
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第1回 (1927年/1928年) | 1回 | 3本 |
第2回 (1928年/1929年) | 第4回 (1930年/1931年) | 3回 | 5本 |
第5回 (1931年/1932年) | 1回 | 8本 |
第6回 (1932年/1933年) | 1回 | 10本 |
第7回 (1934年度) | 第8回 (1935年度) | 2回 | 12本 |
第9回 (1936年度) | 第16回 (1943年度) | 8回 | 10本 |
第17回 (1944年度) | 第81回 (2008年度) | 65回 | 5本 |
第82回 (2009年度) | 第83回 (2010年度) | 2回 | 10本 |
第84回 (2011年度) | 第86回 (2013年度) | 3回 | 9本 |
第87回 (2014年度) | 第88回 (2015年度) | 2回 | 8本 |
第89回 (2016年度) | 第90回 (2017年度) | 2回 | 9本 |
第91回 (2018年度) | 1回 | 8本 |
第92回 (2019年度) | 1回 | 9本 |
3本×1回、5本×(3+65)回、8本×(1+2+1)回、9本×(3+2+1)回、10本×(1+8+2)回、12本×2回となり、全92回で合計563本となります。
第84回(2011年度)からルールが改定され、現在は獲得票の比率によってノミネート資格が与えられ、5~10本の映画が作品賞にノミネートされることになってます。
参照: