メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

グウェンの旅だち ヒルクレストの娘たち 4 R.E.ハリス/作 岩波書店

2024-11-23 11:27:57 | 
1995年初版 脇明子/訳 エマ・チチェスター・クラーク/カバー絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


引いて見ると、4姉妹と3人兄弟の出会いは
それぞれ年齢の近い同士でカップルになるのが必然的に決まってたようなものだな
昔はとくに男女が出会う機会も限られていただろうし

それにしても、牧師ってそんなに儲かる仕事なのかなあ?
父が軍人だったパーセル家より、全然いい暮らしをしてるのは、母親の資産のせいなのか?

トニーが飛行機に興味を持ち、年齢的に第二次世界大戦の時に入隊する姿が見えたのは私だけじゃないのでは?
みんな酷い経験をしてまだ間もないのに
またさらに過酷な戦争になるなんて、アホすぎるけれども
蘭とグウェンとの関係が大きな意味をもつエンディングに感動した

さて、ハリスさんはこのシリーズを6作まで書く予定だそうで
次はセーラのその後を執筆中とあるけれども
2024年の今もまだ本になっていないのか?

【内容抜粋メモ】

登場人物
パーセル家 ヒルクレスト ヒュイッシュ・プライオリ
フランセス 長姉 息子アントニー(トニー)
ジュリア 娘ロウィーナ 息子アンドリュー
グウェン
セーラ インド
アニー 家政婦兼コック 25歳 寝たきりの義母、義弟と義妹の面倒をみている

マッケンジー家
父 牧師

ガブリエル フランセスの夫
ジョフリー 戦死
アントニー 戦死
ルーシー

デニス 絵画のバイヤー 妻ポーリーン・ボンド
デヴィッド・エリオット少佐 ジュリアの夫
ホワイトロー ジェイムズ卿の園丁頭



■一 アントニー
母が亡くなって3年後、グウェンは庭を取り仕切るのを庭師ウィリスは嫌がっている
ジェイムズ卿の園丁頭ホワイトローは忙しい中を縫って、グウェンの相談役をしてくれている

1つ年下のアントニーは、みんなでクォントックス登山に行く際
庭を離れたがらないグウェンに「君が来ないとつまらない」と言って誘う

4姉妹で育ったグウェンは、いたずら好きで、からかってばかりのアントニーを最初好きになれなかった

グウェンは父母が亡くなった時に家を離れていたことから
留守にしてると何か恐ろしいことが起きそうで離れられないのかもしれないと打ち明ける
アントニー:君に辛い思いをさせることは二度と起こらない 僕がさせない

その日からアントニーはグウェンをいろんな場所に連れて行った

アントニーは将来、大詩人になる夢を話し、グウェンは結婚してそれを支える想像をふくらませる
アントニー:詩人は人生を経験しなくちゃならないからね

グウェンはペン画や水彩画が得意で、挿絵で身をたてようと思う

アントニーは農業資材店で働くジョージ・クロスと仲良しで
自転車を借りて、マインヘッドまで飛行機を見に行った話をしてグウェンを誘う
アントニー:人生、自分で切り開くことが必要だよ

たくさんの人が見守る中、飛行機は水に墜落したが、2人のパイロットは救助された



第一次世界大戦が始まる
ウィリスも入隊した

ホワイトローから見事な蘭を見せてもらい、1つもらう
ホワイトロー:生きていくには美しいものが必要ですよ こんなご時世ならなおのことです

アントニーは年齢に達しないのに入隊したと聞いてショックを受ける
アントニー:普遍的真実を探求するには、何かを体験することが不可欠なんだ

アントニーはほとんど手紙をよこさなかった
エジプトから甲虫(スカラベ)を送ってきて、それから2週間後に戦死する

アントニーの幻影を見るグウェン
アントニー:ぼくらの魂は身体をあとに残して飛んでいくんだ

グウェンは怒りを感じ、やがて罪の意識に変わる
(ヒトが悲しみを感じる段階だね 土いじりは感情消化に一番いい気がする

グウェンはアントニーが「うわついてる」と言った蘭を燃やしてしまう

人間は生まれ、しばしこの世にとどまり、また去って行く
人間をあてにしてもなにもならない 永遠に残るのは土地だけだ”

■二 蘭
(グウェン38歳! 急に飛ぶな

セーラは夫がインドに配属されて、そっちで子どもと一緒に暮らしている/驚
ビル・ロバーツは18年前に亡くなり、ジェイムズ卿は病気でロンドンに引きこもっている

ホワイトローは臨終間際にグウェンを呼び、蘭を全部譲るから育ててほしいと頼む

グウェンは戦闘神経症のウエイトを雇い、庭を手伝ってもらっている
ときどき“発作”を起こして休むことがある

アントニーから名前をもらったガブリエルの息子トニーはグウェンのお気に入り
夏休みにグウェンの庭仕事を手伝ってバイド代をもらいたいと相談する
なぜお金が必要かは話さない

ジュリアの紹介で、コール商店に行くと、活け花の客用に切り花を売って欲しいと言われ
グウェンはコヴェント・ガーデンの値段を参考にたくさん売るようになる

ホワイトローは蘭の交配もしていて、まだ花も咲いていないのを
「クエスチョン・マーク」と名付けるトニー

ガブリエルはまたヨーロッパの情勢が悪化しているのを心配する
マッケンジー:どうもよく分からない、あのヒトラーという男は・・・

ガブリエルはエベルト教授から急に手紙が来て、グウェンの蘭のコレクションについて書いた



自動車修理屋のジム・ハリソンはトニーがクルマのエンジンに興味を持っていると話す
アンドリューは鳥類学者になるのが夢
ロウィーナは亡命者に興味津々

ジュリアはミセス・メイヤーを紹介する
彼女は雑草まで使って斬新な盛り花を作り、病院やホテルにも売っている
自分は花屋ではなく、芸術家で、ヒルクレストに育つものを送ってほしいとグウェンに頼む
グウェンは自分の絵描きとしての勘も活かして選ぶことにやりがいを感じる

ルーシーだけは昔と変わらず両親の世話に明け暮れて、結婚もせず家に縛られている

ルーシー:
クォントックスの遠足が私たちの人生の頂点だったじゃないかって気がする
あなたたちがすごく自由なのが羨ましかった

帰り道で猛スピードを出すバイクの後ろにトニーが乗っているのを見て驚く
運転していたのは、メアリーの息子ロバーツ

■三 トニー
グウェンは蘭の魅力にすっかり取りつかれる

ウエイトが発作で来なくなり、トーントンの下宿の家主をしている姉妹から手紙をもらい
見舞いに行くと、ガブリエルと同じ戦功十字章をもらった将校だったと知る

ガブリエルとフランセスはトニーをデヴォンへ連れて行こうと思い、グウェンを訪ねる
トニーは名付け親のメアリ・メレディスと息子ヘクターのもとで休暇を過ごしていると言っていたがいなかった

内戦中のスペインに行っているのかもしれないと心配したグウェンは
休み中に庭を手伝ってもらい、ずっと労賃を払っていたとガブリエルに話す

トニーは小さい頃、飛行機に乗せてもらった感動が忘れられず
将来、パイロットになる決心をして、教習を受けるお金を貯めて
トーントンの航空ショーを見に行き、サフォークの飛行場で使い走りをしていた

グウェンが以前、アントニーが「誰にも言わなきゃ心配の種にもならない」と話していたのを引き合いに出す
トニー:戦争になったら、空軍はありたけのパイロットを必要とするだろうな

トニーからグウェンが外の世界を全然知らないと言われて悔しかったのが
後にドイツ行きを決心させるきっかけとなる
ガブリエルはエベルト教授が蘭のコレクションを絵に描いてほしいと言ってきたと伝える

グウェンは婦人会の会合で蘭の講演を頼まれて、大成功に終わり
ホワイトロー夫人は涙して喜ぶ



クエスチョン・マークがとうとう花を咲かせ、アレグザンダーを訪ねると
コンクルールに出さないかとすすめられる

■四 ドイツ
汽車に乗っている時、鉤十字の腕章をした男に女が連れていかれ
子どもが泣き叫ぶ姿を見て驚くグウェン

女性客:通貨持ち出し制限に違反したんでしょうね 国外に持ち出すのは20ポンドまでと決まってる

ミュンヘンに住むエベルト教授の娘マグダの家でいったん泊めてもらうが
夫は病気で寝たきりで、家は貧しく、2人の子どもは笑顔もない

マグダ:
私が初めて恋したのは、ガブリエルでした
父が大切にしているのは花だけです
(蘭について)美しいなんて贅沢です

エベルト教授の温室にはありとあらゆる蘭が咲き乱れていて言葉を失うグウェン
グウェンは毎日訪ねて、自由に蘭を描く

クエスチョン・マークがコンクールで最優秀品種賞を獲得し
アレグザンダーは150ポンドで売ってほしいと手紙で言って来るが売るつもりは毛頭ないグウェン

最後の日、エベルト教授はグウェンを夜食に招く

エベルト教授:
娘の夫はユダヤ人で死にかけている
大学をクビになり、働いていないことを理由に逮捕された
収容所でとても持てないような石を運び、心臓をやられて返された
離婚すればいいのに聞かない 娘も職に就けないため、イギリスに行くしかない

エベルト教授は蘭を売った金でダイヤモンドをちりばめた大きなブローチを買い
グウェンにイギリスに持ちかえってもらい
それを売ったお金で娘と孫がイギリスに行った時の生活費にしたいと頼む

最初からそのつもりだったのだと分かり、騙された気がしたグウェンは怒ってホテルに戻るが
冷静に考えて、引き受ければよかったと後悔する

パーセル姉妹が両親を亡くした時、周りにはマッケンジー夫妻、ジェイムズ卿などがいて幸運だった

翌朝、エベルト教授はホテルを訪れ、グウェンはブローチを受け取る
それを堂々と身につけて汽車の税関を通る

ホワイトローの蘭をアレグザンダーに売り、マグダの子どもたちを育てる資金にしようと考える
クエスチョン・マーク改め、蘭の名前はホワイトローに決める

イギリスに帰り、ガブリエルらに相談し
亡命希望者はビザがもらえると知る

以前、個展を開いた時、場違いな思いをしたが、自信を持って臨もうと思うグウェン

“記憶は消し去ってしまってはいけないのだ
 まっすぐにそれに立ち向かい、受け入れなくてはならない”


エベルト教授はグウェンも隠遁者ではないかと言ったが、これからは違う
グウェンはヒルクレストに身を隠さなくても生きていけるようになっていた



訳者あとがき
ヒトラーについてはハンス・ペーター・リヒターの『あのころはフリードリヒがいた』をすすめる
身分階級制度が流動化しつつあり、とくに自動車や飛行機などに関わる分野で顕著だった

セーラとジェスの関係にも現れている
子ども時代は友だち同士だったのに、階級の流動化は女性まではなかなか及ばず
子守になるしかなかったジェスはセーラを拒むようになった










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