このごろ、「メタ(meta)認知能力」という言葉がだいぶ市民権を得てきたようです。
メタ認知能力(Metacognitive Ability)という言葉は心理学用語ですが、単語的には
① meta + cognitive に分解できる合成語
② metaは「met-a-」の連結語で、「・・・を超越した」「・・・より高度な」或いは“場所、状態の変化」”を表す接頭語
③ cognitiveは「認識の」を意味する形容詞
④ abilityはableの派生語で「能力、才能、手腕、実力、力量」などを表す名詞
したがって、直訳的には「・・・を超越した認知の能力」となりますが、これでは何のことやら解らない。持って回った言い方になりますが、心理学では以下を意味します。
現在進行中の自分の思考や行動そのものを認識することにより、自分自身の認知行動を把握することができる能力を言う。あるいは自分の認知行動を正しく知る上で必要な心理的能力(Knowledge Monitoring Ability)を言います。
つまり、
・私が知っているということを私は知っている
・私が理解しているということを私は理解している
・私にはできるということを私は分かっている
と表現できる自己認識力です。
少し平易な表現をするなら、メタ認知能力とは
・自分で自分のことを知り、それをコントロールする力
・認知していることを認知していると考える力
であり、
①「自分の心を知る力、自己モニタリング力」と
②「自分の心と行動を制御する力、自己コントロール力」
とから成ると考えられています。
<自己モニタリング力>
(1) 自分は何を知っていて何を知らないかを知る。(知識についてのメタ認知)
「○○について知っているか」と尋ねられ、知っていれば「知っている」知っていなければ「知らない」と即座に答えることができる状態。
(2) 自分は何ができて何ができないか。あるいはどの程度できるかをしる。(能力についてのメタ認知)
期限が定められている仕事に対して、「自分にはできそうにない」とか「何とかできそう」といった推測ができる状態。
(3) 自分の今の心の働きがどうなっているかを知る。(認知状態につい
てのメタ認知)
眠くなってきたとか、集中力が途切れてきたとかといった自分自
身の状況を判断 できる状態。
<自己コントロール力>
(1) 目標遂行と認知状態に応じた対処方略を選ぶ。(方略選択についてのメタ認知)
いくつかの対処方略が考えられるときに、一番よさそうなものを選択することができる状態。
(2) 対処方略を実行し評価し訂正する。(行為の実行と評価についてのメタ認知)
自分が望む方向に自分のしていることが向いているかをチェックし、まずければ訂正のための行為をする状態。
余談ですが、メタ(meta)とは、「のちに」「ともに」「変化して」を意味する英語の接頭語です。例えば、メタボリック(metabolic)もこのmetaと組み合わされた語と考えるなら、meta+bole+ticとなり、「大木の丸い幹のようになった」と表現しているのではないでしょうか。