「まもなく『お盆』ですね。会社も夏季休暇があることだし、子供達も夏休み中なので、家族旅行なんかで混雑する時期でもありますね。」
「そのことだけど、何も考えずに『休みだ~!』てんで遊びに行ったりするけど、『お盆』って本来仏教のものじゃないのかな? 以前からこの点がモヤッとしてるんだよ。」
「あぁ!それなら『お盆』について少し話をしましょう。“モヤッ”が“スキッ”になると思いますよ。」
お盆とは元来、旧暦(和暦:太陰太陽暦)の7月15日を中心にした日本で行なわれる祖先の霊を祀る行事です。
一般的には仏教の行事と認識されていることが多いのですが、そうではありません。
江戸時代に、神道における先祖供養の儀式・神事と仏教行事の「盂蘭盆」(うらぼん)が習合して現在の形が出来たと考えられています。
また、時期や行事の方法は違いますが、ヨーロッパでも一定の期間、一斉に、故人の墓前で酒盛りをしてお祭りをする地域があります。
したがって、『お盆』は、一定の期間を定めて、祖先の霊をお祀りする行事と考えるなら、仏教に限定されたものでなく、宗教、宗派を超えた行事と云うことができます。
『お盆』を行うのは7月、いや8月と地域によって区々ですが、これは明治6年(1873年)1月1日のグレゴリオ暦の採用によって齎された混乱です。伝統的には、旧暦7月15日に行われていました。
この新暦採用以来、新暦8月15日を中心に行われるところが多く、一般的になっていますが、旧暦7月15日(旧盆)、新暦7月15日などを中心とした期間に行われる地域もあります。
お盆の始まりと終わりはいつなのかという疑問もあります。
お盆の始まりは13日が一般的で、お墓に行って掃除などをする「留守参り」をしたり、夕刻に迎え火と呼ばれる野火を焚いたりします。
お盆の終わりは16日と一般的に考えられています。午後にお墓参りをしたり、夕刻に野火を焚いたり、灯籠流しを行う送り火をしたりします。
送り火では京都の五山送り火(大文字焼き)が有名です。
なお、仏教では、お盆は1日から24日を指します。これは、地獄の王である閻魔王と対になる地蔵菩薩の縁日が終わる24日までがお盆になるからです。
仏前のお供えで基本となるのは、お香と華とお灯明です。これらを備える仏具の香炉、華瓶(花立て)、燭台(蝋燭立て)の三つを「三具足」といいます。香炉は真中に、華瓶は向かって左、燭台は向かって右に配置します。華瓶と燭台を左右各一対とし、香炉を中央に一基備えることを「五具足」といい、荘厳な本式のお供え形式となります。
また、人が亡くなり49日法要が終わってから最初に迎えるお盆を初盆(はつぼん)又は新盆(しんぼん、にいぼん、あらぼん)と呼び、特に厚く供養します。地方によって違いますが、初盆の家の人は門口や、お墓に白一色の提灯を立て、特別の儀礼を行います。
七七日(49日)がお盆(13日)までに到来しない場合は、翌年のお盆を初盆(新盆)とします。
お盆は、わが国では祝祭日や国民の祝日になっていませんが、8月15日前後は企業の多くが休業日としています。非公式の「ナショナルホリデー」と言っていいでしょう。
祖先の霊を祀る宗教行事の側面に囚われず、国民的な休暇、帰省の時期として位置付けられています。
その土地のお盆の期間に関わらず、全国的に8月15日を中心とする3~5日間とすることが多く、企業では夏季休業日としています。
「盆踊り」もあることだし、単に『お祭り』と考えて休暇を楽しむのもいいのではないでしょうか。