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噴水の都 ・ ペテルゴフ 2015.07.10
サンクト・ペテルブルグから西へ29km、噴水芸術の都「ペテルゴフ」がある。
今回の旅行でエルミタージュに次ぐ訪問してみたいサイトである。土木工学の語源が築土構木なら、さしずめ築土構水、土水工学という言葉があってもいいのではと思うが。
しかし、原理は芝居小屋の水芸と何ら変わらないので、それを広大な大地をキャンバスに描いたところに面白さがある。
⇔ 噴水を詳述した日本語解説本 (黄金像は「獅子の口を裂くサムソン」)
フィンランド湾の南岸に夏の離宮としてピヨートル1世自らが宮殿建築のみならず、噴水庭園の設計・建設に加わったというペテルゴフ。創設以来、200年をかけて様々な時代に10棟を超える宮殿や1000㏊に及ぶ庭園と150基に及ぶ噴水が建造されてきた。
⇔ ペテルゴフ入口 夏宮の宮殿教会側から入る(宮殿内撮影禁止)
宮殿はエルミタージュ(冬宮)やエカテリーナ宮殿同様、夏の離宮として供せられ、よく似た内容だが撮影禁止である。
夏の観光客の興味は、やはり宮殿の外の世界にある。そこで、300年にわたり動き続けている噴水、そのメカニズムと水遊びの精神に少しでも触れてみたい。
まず、ペテルゴフの全体を鳥瞰してみよう。宮殿のある高台に設けられた庭園を上庭園、高台の下の庭園を下庭園と呼ばれている。
この地をペテルゴフ建設に選んだ理由は、南およそ20kmのところに地下水脈を源とする泉が沢山あること、そこから水を引き寄せることが可能であること、が主な理由。
(左)ペテルゴフの案内図 (右)ペテルゴフの上空写真 (いずれも日本語本より)
1721年、ロプシャ高地の泉から上庭園の貯水池へ水を引き込む閘門と掘割の工事が始まった。全く人為的力を加えることなく、水が流れ込み、上庭園の噴水に配水されるが、上庭園で創り出せる水柱高さは水圧の関係で大したものではなかった。 一方、高台の下庭園では16mの落差を利用した水圧で、多くの噴水にもかかわらず見事な飛沫となって空高く舞い上がっている。
15m高さまで噴き上がる噴水、一見贅沢の限りに見えるが、ここには節約の技術も取り入れられている。水柱の中は実は空洞となっており、噴射部の水管に円錐が逆さに嵌め込まれ、高い水圧の水がこの噴射部水管と円錐の間の円形隙間から勢いよく出る仕掛けになっている。
(左)「大滝とペテルゴフ大宮殿」1845水彩画 (中・右)宮殿前のテラスから大滝、海の運河を望む
何といっても圧巻は、カスケード「大滝」。現在我々が見ている大滝になるのに、100年ほどの年月が費やされているようだ。「海の運河」は1715年の宮殿建設と共に工事が始まり、離宮への海からの玄関として当初から構想されたもの。1723年ロシア宮廷付フランス大使は以下の言葉を残している。
「ピヨートルは我らを運河の岸で迎えり。この運河、宮殿と海を繋ぎ、長さが1000歩、横が20歩、伸びること一直線をなす。石を組んで作られしものなり。水門も擁す。船団の出入りに極めて便利なり。水は素晴らしき噴水よりとうとうと流れ込み、この噴水もまた、様々な金箔の像にて彩られし様、運河に相応しく豪華なり。」
(左)撮影スポットに必ずいます (中)16mの高低差を持つカスケード「大滝」 (右)大滝 下半円形プールからの眺め
(左)大滝の中心は5つの下洞窟(写真では3つが見える) (右)「獅子の口を裂くサムソン」下公園の最強噴水(解説本表紙)
(左)金色に輝く装飾彫像の一つ「カリビゴスのヴィーナス」 (右)時間をかけてゆっくり近くで見たい芸術作品です
海の運河によって102㏊の下庭園は、便宜上東・西サイドに分けられる。我々は、時間の関係で東サイドを中心に見学した。
大滝から東に進むとすぐに噴水「碗(フランス噴水)」がある。ここから斜めに海側に進むと噴水「アダム」があり、これは海の運河の反対側の噴水「イヴ」と対をなすものである。
(左)東公園の噴水「碗(フランス噴水)」(後方は宮殿教会) (右)噴水「アダム」(西公園には噴水「イブ」がある)
ここから更に森の中を東に進むとピヨートル1世像のある十字路に着く。不思議なことにこの辺りに生息するカラスが何と灰色と黒のツートンカラー。十字路の近辺には悪戯の噴水がいくつかある。「パラソル」や「小さなエゾマツ」等がそれである。
(左)この公園に生息するカラスは、ツートンカラー (右)ピヨートル1世像
(左) 悪戯の噴水「パラソル」 (右)悪戯の噴水「小さなエゾマツ」
また、東側海の突端のモン・プレジール宮殿近くの噴水「太陽」は、極めて珍しい技術的にも複雑な噴水で、弧を描いて水を放つ16頭のイルカに囲まれた柱の頂部には黄金の回転円盤がありそこから放射状に飛沫が上がり太陽光線を思わせている。
(左・右) 噴水「太陽」 技術的にも複雑な回転噴水
ピヨートル像を南へ、離宮側に戻ると二つの「ローマ噴水」がある。大理石台座の上に巨大な円盤が鎮座し、5筋の水飛沫が上がっている。噴水に気を取られてスリの被害に会わぬよう注意看板が目につく。
(左・中)「ローマ噴水」大理石台座の上の巨大円盤から5筋の噴水(対で形成している) (右)スリに注意の看板
そして、そのすぐ南側にカスケード「チェス盤の丘」がある。ローマ噴水に水を送っているのもこの「チェス盤の丘」だ。上下両端に洞窟への入口があり、上の入口は3頭の龍で護られている。一瞬バルセローナ・ガウディのグエル公園が脳裏を横切った。両脇階段にはイタリア製の古代神の大理石像10体が立ち並ぶ。
(左・右) カスケード「チェス盤の丘」(上のローマ噴水に給水している)
ここから離宮出口方面に向かって坂を上っていくと、右手下の方に大温室が見える。この温室の前に温室庭園が整備され、その中央に「温室噴水」がある。トリトンに口を割り裂かれた海獣の口から勢いよく噴水が上がっている。
(左)大温室と温室庭園 中央に温室噴水 (右)出口すぐの売店 アイスクリームもよく売れる
午前のエカテリーナ宮殿、そして午後のペテルゴフと結構歩いた。今宵はこれからサンクト・ペテルブルグに戻り、夕食の後、本場バレーの観賞である。
噴水の都 ・ ペテルゴフ 2015.07.10
サンクト・ペテルブルグから西へ29km、噴水芸術の都「ペテルゴフ」がある。
今回の旅行でエルミタージュに次ぐ訪問してみたいサイトである。土木工学の語源が築土構木なら、さしずめ築土構水、土水工学という言葉があってもいいのではと思うが。
しかし、原理は芝居小屋の水芸と何ら変わらないので、それを広大な大地をキャンバスに描いたところに面白さがある。
⇔ 噴水を詳述した日本語解説本 (黄金像は「獅子の口を裂くサムソン」)
フィンランド湾の南岸に夏の離宮としてピヨートル1世自らが宮殿建築のみならず、噴水庭園の設計・建設に加わったというペテルゴフ。創設以来、200年をかけて様々な時代に10棟を超える宮殿や1000㏊に及ぶ庭園と150基に及ぶ噴水が建造されてきた。
⇔ ペテルゴフ入口 夏宮の宮殿教会側から入る(宮殿内撮影禁止)
宮殿はエルミタージュ(冬宮)やエカテリーナ宮殿同様、夏の離宮として供せられ、よく似た内容だが撮影禁止である。
夏の観光客の興味は、やはり宮殿の外の世界にある。そこで、300年にわたり動き続けている噴水、そのメカニズムと水遊びの精神に少しでも触れてみたい。
まず、ペテルゴフの全体を鳥瞰してみよう。宮殿のある高台に設けられた庭園を上庭園、高台の下の庭園を下庭園と呼ばれている。
この地をペテルゴフ建設に選んだ理由は、南およそ20kmのところに地下水脈を源とする泉が沢山あること、そこから水を引き寄せることが可能であること、が主な理由。
(左)ペテルゴフの案内図 (右)ペテルゴフの上空写真 (いずれも日本語本より)
1721年、ロプシャ高地の泉から上庭園の貯水池へ水を引き込む閘門と掘割の工事が始まった。全く人為的力を加えることなく、水が流れ込み、上庭園の噴水に配水されるが、上庭園で創り出せる水柱高さは水圧の関係で大したものではなかった。 一方、高台の下庭園では16mの落差を利用した水圧で、多くの噴水にもかかわらず見事な飛沫となって空高く舞い上がっている。
15m高さまで噴き上がる噴水、一見贅沢の限りに見えるが、ここには節約の技術も取り入れられている。水柱の中は実は空洞となっており、噴射部の水管に円錐が逆さに嵌め込まれ、高い水圧の水がこの噴射部水管と円錐の間の円形隙間から勢いよく出る仕掛けになっている。
(左)「大滝とペテルゴフ大宮殿」1845水彩画 (中・右)宮殿前のテラスから大滝、海の運河を望む
何といっても圧巻は、カスケード「大滝」。現在我々が見ている大滝になるのに、100年ほどの年月が費やされているようだ。「海の運河」は1715年の宮殿建設と共に工事が始まり、離宮への海からの玄関として当初から構想されたもの。1723年ロシア宮廷付フランス大使は以下の言葉を残している。
「ピヨートルは我らを運河の岸で迎えり。この運河、宮殿と海を繋ぎ、長さが1000歩、横が20歩、伸びること一直線をなす。石を組んで作られしものなり。水門も擁す。船団の出入りに極めて便利なり。水は素晴らしき噴水よりとうとうと流れ込み、この噴水もまた、様々な金箔の像にて彩られし様、運河に相応しく豪華なり。」
(左)撮影スポットに必ずいます (中)16mの高低差を持つカスケード「大滝」 (右)大滝 下半円形プールからの眺め
(左)大滝の中心は5つの下洞窟(写真では3つが見える) (右)「獅子の口を裂くサムソン」下公園の最強噴水(解説本表紙)
(左)金色に輝く装飾彫像の一つ「カリビゴスのヴィーナス」 (右)時間をかけてゆっくり近くで見たい芸術作品です
海の運河によって102㏊の下庭園は、便宜上東・西サイドに分けられる。我々は、時間の関係で東サイドを中心に見学した。
大滝から東に進むとすぐに噴水「碗(フランス噴水)」がある。ここから斜めに海側に進むと噴水「アダム」があり、これは海の運河の反対側の噴水「イヴ」と対をなすものである。
(左)東公園の噴水「碗(フランス噴水)」(後方は宮殿教会) (右)噴水「アダム」(西公園には噴水「イブ」がある)
ここから更に森の中を東に進むとピヨートル1世像のある十字路に着く。不思議なことにこの辺りに生息するカラスが何と灰色と黒のツートンカラー。十字路の近辺には悪戯の噴水がいくつかある。「パラソル」や「小さなエゾマツ」等がそれである。
(左)この公園に生息するカラスは、ツートンカラー (右)ピヨートル1世像
(左) 悪戯の噴水「パラソル」 (右)悪戯の噴水「小さなエゾマツ」
また、東側海の突端のモン・プレジール宮殿近くの噴水「太陽」は、極めて珍しい技術的にも複雑な噴水で、弧を描いて水を放つ16頭のイルカに囲まれた柱の頂部には黄金の回転円盤がありそこから放射状に飛沫が上がり太陽光線を思わせている。
(左・右) 噴水「太陽」 技術的にも複雑な回転噴水
ピヨートル像を南へ、離宮側に戻ると二つの「ローマ噴水」がある。大理石台座の上に巨大な円盤が鎮座し、5筋の水飛沫が上がっている。噴水に気を取られてスリの被害に会わぬよう注意看板が目につく。
(左・中)「ローマ噴水」大理石台座の上の巨大円盤から5筋の噴水(対で形成している) (右)スリに注意の看板
そして、そのすぐ南側にカスケード「チェス盤の丘」がある。ローマ噴水に水を送っているのもこの「チェス盤の丘」だ。上下両端に洞窟への入口があり、上の入口は3頭の龍で護られている。一瞬バルセローナ・ガウディのグエル公園が脳裏を横切った。両脇階段にはイタリア製の古代神の大理石像10体が立ち並ぶ。
(左・右) カスケード「チェス盤の丘」(上のローマ噴水に給水している)
ここから離宮出口方面に向かって坂を上っていくと、右手下の方に大温室が見える。この温室の前に温室庭園が整備され、その中央に「温室噴水」がある。トリトンに口を割り裂かれた海獣の口から勢いよく噴水が上がっている。
(左)大温室と温室庭園 中央に温室噴水 (右)出口すぐの売店 アイスクリームもよく売れる
午前のエカテリーナ宮殿、そして午後のペテルゴフと結構歩いた。今宵はこれからサンクト・ペテルブルグに戻り、夕食の後、本場バレーの観賞である。
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