読書備忘録

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大沢在昌著「欧亜純白ユーラシアホワイト」Ⅰ・Ⅱ

2010-01-22 | 大沢在昌
1巻2巻で1100ページを越える長編です。1997年4月~1999年11月まで「週刊プレイボーイ」誌連載されたものの10年越しの単行本化作品。
有名芸能人が覚醒剤所持・使用で逮捕され、学生が大麻草栽培で検挙されたり中学生までこの国に不法薬物が蔓延しつつある現状を憂いてか何故今頃の答えを求めて読み始めた。
1997年香港・マカオの中国返還という大変動を間近に控え、ヨーロッパ、アジアの覚醒剤、ドラッグルートに異変が相次ぎ、世界中の犯罪組織のあいだで生き残りを
かけた激しい抗争が展開されていた。
そのカギを握るのは、中国本土を経由し、香港からアメリカ国内に持ち込まれる「チャイナホワイト」と呼ばれるヘロイン。
世界最大のヘロイン輸出湊の香港が、中国公安局の厳しい取締を受ければ、ヘロインの流通地図が一変する。
そうした機に乗じて、「黄金の三角地帯」と「黄金の三日月地帯」という世界二大ケシ産地を抱えるユーラシア大陸をまたにかけて新たにヘロインビジネスを
牛耳ろうとたくらむ謎の人物「ホワイトタイガー」が出現。
その動きを牽制しながら虎視眈々とビジネスチャンスをうかがう、ロシアマフィア、シチリアマフィア、中国マフィア、日本の広域暴力団坂本組。
その野望を打ち砕くべく、熾烈な闘いのなかに果敢に挑戦していく、DEA(アメリカ麻薬取締局)のベリコフと厚生省麻薬取締官事務所の三崎。
二人の視点で壮大なユーラシア大陸を舞台にアメリカ、ロシア、グアム、台湾、香港、沖縄、東京などで広げられる日米潜入捜査官の苛烈な闘いを
描いたハードボイルド麻薬犯罪小説です。
ロシア、中国、日本―ユーラシア大陸に広がる“白い悪の連鎖”を潰せ!謎の男ホワイトタイガーを追いつめられるのか潜入捜査官三崎とべりコフ達。
国境・人種を超えた犯罪組織の熾烈な抗争と罠、謀略、暴力の渦。
それに絡む中国公安部、台湾人華僑、CIAなど。
グローバルな視野で見た政治や経済の流れと世界の動きを反映させてリアルな現実感のあるスリリングな展開の小説です。
『21世紀人類が直面するのは、犯罪との戦争だ。民族の軋轢、宗教の対立、そうしたものに加え、犯罪との戦争が人類の大きな課題となる。』(Ⅱ226P)
『いいか、どこの国の、どんな肌色の人間だろうと金と鉛玉のどちらをとるといわれれば、答えは決まっているんだ。・・・麻薬組織の連中にとっちゃ、国境も人種も関係ない。
銭がどこにあるか、誰からうまい汁を吸えるか、それだけが問題なんだ』(本文より)
暗脈する敵役の元CIAの二人のアメリカ人のサリー・ヤンとモートンの動きも複雑で面白い。
この本を読んでいて何度も出てくる場所を2004年タイ・ミャンマー・ラオスの国境が交わるメコン川の ゴールデントライアングルを目指したことを思い出していた。
バスとテンソウ(乗り合い小型トラック)を乗り継いで旅し、そこにあったタイ側の観光化された現実と反対にミャンマーとラオスの方は、家も人々も見えない緑と土との自然の風景だけの貧しそうな対比だった。
唯一ハウス・オブ・オピウム(麻薬博物館)などの施設で見た過去の阿片の吸引器や芥子栽培の写真の展示物がその過去の痕跡を残しているようだったが、今は表向き芥子栽培はなくなったようだが現実のその裏事情はどうなっているのだろうと感じた。
長編だが内容が面白いので長さを感じずに読了出来た。流石大沢ワールドよく取材調査され手いるように思えた。
2009年12月 集英社 刊

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