「焦土の刑事」「動乱の刑事」「沃野の刑事」「日本の警察」シリーズ平成編。父の道を継ぎ鷹となった息子たちの物語。「刑事は地べたを這いずる仕事だ。だが、空から全体を見る鷹の目を持て。」(P329)「刑事は、対象に似てくるんだ」「マル暴担当の刑事なんか、その筋の人間にしか見えませんよね」「公安は常に同じ相手の仕事だ。だが捜査一課の仕事は毎回、違う相手なんだ」「捜査一課は目先の事件を追う。公安は、未来を見据えて仕事をしている」捜査一課と公安一課。同じ警察でありながら相容れない二つの組織に身を置き、昭和を駆け抜けた二人の刑事。その息子たち捜査一課の高峰卓男と公安一課の海老沢利光は、父と同じ道を歩んでいた。昭和天皇が崩御し、60年余にわたる昭和の時代が終わりを告げた日に起きた鉄パイプによる乱闘殺人事件。高級マンションに住みポルシェを乗り回す被害者に見え隠れする、極左の過去。バブル景気の拝金主義に浮かれる世で、思想活動は衰退の一途をたどる中、その交錯点で起きた事件を、二人の刑事が追う。残念ながら大喪の礼と絡めた極左勢力のテロ懸念と重ねた設定、崩御直前と崩御後の混乱や喪失感の様子は体験した自分には違和感があり伝わらなかったように思う。ポケベルや内ゲバ、バブル景気や不動産高騰、地上げなどの言葉とともにあの頃を懐かしく思い出しながら当時の自分の過去思い出し懐かしく読めた。
2022年6月講談社刊
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