読書備忘録

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堂場瞬一著「デモクラシー」

2023-11-21 | 堂場瞬一
直接民主主義か議会制民主主義かをそれぞれのメリットとデメリットを示しながら描かれたこんなことも有り得るかもしれない「未来」の実験的政治小説。政治システムを扱った超近未来ポリティカリティーフィクション。202×年、日本の政治システムは一変していた。憲法は改正され、20歳以上の国民から合計1000人の「国民議員」がランダムに選出され、総理大臣は直接選挙で選ばれる。国会は解散し、「国民議会」(二院制)を新たに結成。議会は完全オンラインで行われ、議員の任期は4年、年間報酬500万円、基本再選はなし。専用のデバイスを支給され、議員としての活動は全てオープンに。さらに、国民は常にそれらを確認、監視できるようになっていた。ランダムに選ばれたという大学生の田村さくらは戸惑いながらも議員となることを決意する。その後、実在する政党・政治家を想い起させる人物が登場し、直接民主制を地方にまで広げようとする勢力と議会制民主主義を復活させようと目論む勢力の駆け引きが展開される。直接選挙で選ばれた新首相の苦悩、国民議員の不正を監視する機関「国民議員調査委員会」、一気に権限が大きくなった官僚、現首相と旧政治体制に固執する女性現都知事らとの政権争い、議員による組織窃盗や傷害致傷。演説者への生卵投げ事件。談合汚職。過重労働による官僚の自死。退任大臣の党員名簿の持ち出しと関与した職員の自死、等々。民意の反映や少数弱者の保護、中長期視点での国益実現などデモクラシー変革の本質を抉る視点とは言い難いトピックやエピソードが続く展開で混乱の様子は今と変わらず。大いなる問題提起で政治について考えさせられた小説でした。
2023年6月集英社刊


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