Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

スイスと周辺3国を巡る旅【4-2】標高3,000mは白の世界

2016年02月23日 | ■旅と鉄道

 宿で荷物を整理し、身軽になって再びツェルマットの街へ。相変わらずマッターホルンは雲の中だけど、少しでも近づいてみたいと、ゴルナーグラート鉄道のツェルマット駅へやって来ました。標高1,604mのツェルマットからさらに倍近い、3,089mのゴルナークラートを結ぶ鉄道です。
 通常は往復90フラン(10,740円)というかなりの運賃ですが、ウィンターハイキングチケットなる時期限定?の割引きっぷがあり76フラン(9,070円)に、さらにスイストラベルパスの半額割引で38フラン(4,530円)にまで下がりました。それでも、なかなかの運賃です。


 バーコード式の自動改札をくぐり、電車に乗ります。信用乗車が基本のスイスでも、登山電車となれば改札を行うんですね。運賃が運賃だけに、取るとすればとんでもない額の罰金になりそうです。
 ガイドブックなどで見るゴルナーグラート鉄道の写真は、どこかレトロな旧型電車のものが多いけど、僕らは往復とも新型の電車でした。窓が大きく、2両が大きなホロでつながれた車内は、どことなくトラムを思わせます。


 テーブルにプリントされた沿線案内は、スイスの観光列車のスタンダードです。




 発車すると間もなく、電車はぐいぐいと急こう配にアタックを始めます。トラムのような「すました」雰囲気の電車ながら、向かうは1,000m以上も上の、天空の世界です。
 1駅目のフィンデルバッハ駅で、早くも下車する人の姿が。橋の上に設けられた狭いホームは床が金網で、足場のようです。これなら除雪の手間は省けるかも。


 屋根という屋根が真っ白に化粧したツェルマットの街が、ぐんぐん遠ざかっていきます。床下からは、唸るようなモーター音が響いてきます。


 すれ違う電車には、湘南顔の旧型電車がまだまだ健在。見た目は古くとも、標高3,000mを目指す健脚は変わりません。
 100年以上も前の1898年から、このような場所に鉄道を敷設し、勾配をクリアしてきた先人の努力には頭が下がります。


 線路は、目で見ても分かるほどの傾斜です。歯車をかみ合わせ登っていくアプト式とはいえ、ケーブルカー顔負けの勾配。そのパワーはもちろん、安全に運行する技術も大したものです。
 もちろん雪深い場所だけに除雪の苦労も多いはずで、安易に運賃を「高い」なんて言ってはいけませんね。


 日本では見られないのが、電車をリフト代わりに使うスキーヤーたち。大きなスキー板やスノボを持ち込めるよう、出入り口まわりは広々しており、改札を抜ければそこはゲレンデです。
 酸素も薄く、吹雪のような風雪の中を、子連れのファミリーがスイスイと滑っていくのだから舌を巻きます。


 リフトに乗り継げる駅も。ウインタースポーツ好きの人にはたまらない環境なんだろうなと、職場の先輩や友人の顔がいくつか思い浮かびました。


 スキーヤーの数も半端ではなく、富士山に迫る高度だとは信じられません。より深くなる雪の中、電車はラストスパートをかけます。


 標高3,089mの、ゴルナーグラート駅着。午後4時をまわり、ゲレンデ閉鎖の時間が迫っているようで、スキーヤーたちは改札直結のゲレンデへと飛び出して行きました。


 この駅から望むマッターホルンと氷河の姿は、それは大迫力なのだそうです。運が味方してくれないかと一縷の望みをかけて登った標高3,000mでしたが、周囲は白の世界でした。
 駅に駅員の姿はなく、周囲の人影もまばら。電車が下っていくと、僕ら2人が取り残されたような気分になりました。


 マスコットキャラだけが、スキーをやるわけでもない場違いな観光客2人を歓迎してくれました。


 レストランやホテルも併設した駅だけど、冬の日帰り観光客の受け入れは3時頃までらしく、カフェもお土産屋も店じまいした後。暖を取るすべもないまま、さらに高い場所にある展望台まで足を伸ばしました。高山病の恐れもある高度、息が切れないよう、ゆっくりゆっくり登ります。
 展望台の絵に、雪空の向こう側の風景を想像しました。景色が見られなかったのは残念だけど、異世界に来られたことは満足です。


 5時過ぎの電車で、山を下ります。


 「逆かぶり付き」席に座れば、線路の間に敷かれたラックレールの様子がよく分かります。


 ホーム1面だけの無人駅。急こう配上にあり、ケーブルカーでもないのにホームは階段状になっています。
 切符は途中下車自由とのことで、気ままに降りてみたい衝動にかられますが、取り残されたらと思うと、ちょっとゾッとしました。


 観光地で従事する人の足でもあり、フィンデルバッハ駅では、駅から線路沿いを渡り、細い雪道を家路につく女性の姿が見えました。すごい通勤、すごい日常です。


 ツェルマットの街に戻ってきました。こことて登山電車を登りつめた、標高1,600mの高地なのに、人の営みがある風景になんだかホッとしました。
 夕暮れを迎えて、ところどころで灯るイルミネーションに温もりを感じます。


 中心街にある、マッターホルン博物館へとやってきました。何でも閉まるのが早いツェルマットにあって、19時まで開いている貴重な観光スポットです。
 スイストラベルパスを持っていれば、入場無料という特典もあります。


 博物館のテーマは、マッターホルンに挑んだ人々の足跡と、ツェルマットの観光開発の歴史。展示室は、昔のツェルマットを模したものになっています。
 観光開発も先人達の努力のたまもの。別府にこんな博物館があってもいいんじゃないかなぁと、油屋熊八さんの顔を思い浮かべました。


 地下の博物館を出れば、すっかり夜になっていました。


 駅前のCOOPで明日の買い出しをして、ホテルに戻ってきました。ホテルも、テラスに飾られた電飾がいいムードです。


 今日はヨメさんの誕生日。ちょっと贅沢して、夕食はホテルのコースディナー(65フラン=7,750円)を食べることにしました。
 レストランをのぞいてみると、紳士淑女ですっかり満席。断られるかなと覚悟しかけたら、ロビーの席を案内してくれました。シックなバーに隣り合い、キーボードの生演奏もあって雰囲気は上々です。


 料理も、いい素材を使っているのが分かります。乳製品を使ったソースもさすがにおいしくて、大満足。バースデーディナーとして申し分なしです。


 部屋に戻り外を見れば、雪が強まってきました。明日の出発は朝早いのですが、マッターホルンは姿を見せてくれるでしょうか。
 音をすべて吸い込むような山間の夜は、静かに過ぎていきました。

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