2日目(1月11日)の朝は、鳥取のはわい温泉で迎えました。せっかくの温泉旅館、ゆっくりと過ごしたかったのですが、バスの本数も限られているので、6時に早起きして朝風呂を浴びました。
街路樹にはヤシが植えられ「ハワイ」を演出するものの、現実は0℃近い寒さです。
東郷池が赤く染まり、朝がやってきました。
7時半の路線バスに乗り、倉吉市内へ。次のバスは9時半なので、やむを得ずの早起きでした。
倉吉駅前を通過して、白壁土蔵群の界隈へ。朝早い町に観光客の姿は皆無で、しっとりした町並みを独り占めしながら歩きました。
現在は駅からバスでのアクセスになる倉吉市街地も、85年までは倉吉線という支線が通じていました。廃止から30年の今も、旧駅前通りにはその匂いを感じられます。
駅跡にはC11(運転台まで上がることも可能)が保存され、記念館もあります。見学自由で、照明スイッチを自分で入れるというセルフサービスな記念館です。
9時をまわり、観光施設や食事どころもぼちぼち開き始めました。
市文化財の牧田家住宅は、見学無料。木を継いで修復した部分は色を変えており、現代の細かな技も見ることができます。
打吹公園からは、木々の間から赤瓦の土蔵群を俯瞰できます。さらに登れば展望台もあるようですが、軽いハイキングにでもなりそうな山道だったので、引き返しました。
赤瓦十号館の観光案内所に併設された、カフェ・天女のいずみで一休み。7年前に訪れた時は学生運営のカフェで、年末のためお休みで悔しい思いをしたものでした。
運営は変わっても、木にペンキの素朴な風合いは健在です。
倉吉駅は、こちらも橋上の駅舎に生まれ変わっていました。駅前にはチェーンの居酒屋も進出していて、都会のベッドタウンのようになっています。
駅に併設の複合施設は、名付けて「エキヨコプラザ」。言いえて妙ではあります。
スーパーまつかぜ5号に乗って、松江へひとっとび。わずか2両の特急列車ですが、高速化改良済みの線路を、振り子式気動車は怖いもの知らずの高速で飛ばしていきます。
わずか50分少々で、松江着。バスで宍道湖大橋を渡り、東京橋(!)で降りて、堀川沿いをそぞろ歩いてみました。
ゆうゆうと水面を走る「堀川めぐり」は、乗り切り制の遊覧船ではなく、1日乗車券方式。20分間隔で周回しているので、周遊バスのように観光地巡りに使えます。今度来たら、乗ってみたいな。
宍道湖の水面には、無数の水鳥が寒風に耐えつつ揺られていました。
JRは宍道湖の南を走りますが、北岸を並行するのが地元の私鉄・一畑電車。東の始発駅、松江しんじ湖温泉駅から、出雲大社に向かいます。
大社行きの電車は、主力として活躍する元京王5000系。一畑電車の旧塗装に復元された編成でした。
車内の吊り革は、今はなき「一畑パーク」の広告入り。路線図も昭和40年代のものが飾られ、「昔の電車」を再現していました。
今も昔も変わらないのは、宍道湖の穏やかな眺め。コースの前半はずっと、車窓の友になってくれます。
JR出雲市方面と大社方面へ分岐する川跡では、大勢の乗り換え客の姿が見られます。大社⇒出雲市方面の乗り換え客が優勢でしたが、我らが大社行きにもそこそこの乗り込みがありました。
川跡~大社間のみアテンダントさんが乗務。この区間を往復しているようで、出雲市行きの電車の乗客に手を振っていました。「線路をまたぐ参道」やワイナリー、出雲ドームなど、短い区間でめまぐるしく車窓案内が続きました。
1時間で、大社着。登録有形文化財にもなっているRC駅舎は、木材を多用してリニューアルされていました。
駅舎の横には、古豪として親しまれたオレンジ色のデハニ50の姿が。
車内に自由に入れるのも、嬉しいところです。
大社での時間もあまりないのですが、ちょうど定時ガイドツアー「むすぶらり」の時間だったので、参加してみることにしました。
地元ガイドとともに、名所を歩いて観光する「むすぶらり」は島根県各地で行われていて、500円で参加OK。2ヶ所を巡ると、宿泊券の当たるキャンペーンにも応募できます。
僕らの他に、一人旅の女性とご夫婦の、合わせて5人でツアーがスタート。ここは〇〇の実家の旅館、なんてガイドを聞きながら参道を歩き、鳥居の前に着きました。
出雲大社は3度目にもなりますが、4ヶ所の鳥居ごとに材が違うなんて基礎的な知識もありませんでした。RC、木、鉄、銅と続きます。
鳥居をくぐった参道が下り坂になっているのも、言われてみれば珍しいことに気付きます。
詳しく説明を聞いて、正しい作法で参拝すれば、ご利益も一層大きくなるような気がしました。
とにかく寒かったこの時間ですが、お社の後ろに回る頃には日差しが差してきました。後ろまで回る観光客は多くありませんが、八幡造りの荘厳さは正面からだけでは分かりません。
夕焼けの色を帯び始めた時間、軽々しく使いたい言葉ではありませんが、まさに神々しい空気に包まれていました。
出雲市行きのバスの時間が迫っていたので、最後の数分だけ切り上げてコースを離脱。超満員の路線バスに揺られ、JR出雲市駅へと出てきました。電車に比べてあまりに輸送力が小さく、時間があうなら電車を利用したいところです。
乗客の半分以上は若い女子旅グループで、「パワースポットブーム」は衰えることを知らないようです。
まともにお昼ごはんを食べていなかったので、出雲市駅コンコースのそば屋で、割子そばをかき込みました。
出てくるまで5分、食べるのに5分。3段なので、1段あたり90秒で味わった わんこそば…じゃなくて、割子そばでした。
「スーパーおき」で、さらに西を目指します。「まつかぜ」や「おき」など名前は違えど、車両はいずれもキハ187系。なんだか愛着が沸いてきました。
温泉津(ゆのつ)駅で下車。タクシーで温泉津温泉へと向かいました。
大型のホテルとは無縁に温泉街には、白熱灯の街灯が灯り、なんともノスタルジックな空気。ここは「石見銀山遺跡とその文化的景観」を構成する、世界遺産の一部でもあります。
今夜のお泊りは、木造3階建ての旅館・吉田屋です。老舗の雰囲気が漂いますが、今は若者らが経営を引き継ぎ、週末のみ営業しているとのこと。
お値段も朝食付き6,500円と良心的。お風呂は外湯利用ですが、せっかくの温泉なのだからそれもまた風情です。
温泉もいいけど、腹が減ってはなんとやら。夕ご飯を食べられるようなところは一軒だけと、昨夜と同じような環境です。
その「路庵(ろあん)」は、予想に反してカフェ・バーという形態。営業も夜のみです。
中も洒落た雰囲気でしたが、地元の御仁たちで盛り上がる様子は居酒屋のようでもあります。
メニューはよりどりみどり。地産地消ということで、石見ポークの鉄板焼きを頼んでみたら、あっさりジューシーでうまかった!
晩の風呂は、吉田屋さん真向いの薬師湯にて。道路側に突き出した、半円型のピロティ形式の休憩室がモダンな雰囲気です。屋上にはテラスがあり、電線が喧嘩する狭い路地を見下ろせました。地中化もいいけど、こんな風景もまたオツなものです。
建物だけではなくてお湯も素晴らしく、鉄っ気と塩っ気が混じった、浸透圧の強そうな「濃い」温泉です。温度はさほどでもないので長湯できそうですが、湯あたりを起こさない程度で退散。それでもホカホカ感は、夜中まで続いたのでした。