コスモロジー教育のビフォー・アンド・アフター 1

2012年09月02日 | コスモロジー

 妻が見ている「ビフォー・アンド・アフター」(?)とかいうテレビ番組があり、時々付き合いで見るのですが、リフォーム前はかなりひどい状態だった家がみごとに綺麗になるのは、見ていてもう本当に驚きです。

 ふと、コスモロジー教育の学期初めと期末に似ているなと思いました。

 そこで、これからいくつか「コスモロジー教育のビフォー・アンド・アフター」をご紹介してみようと思いました(正確には、前期中間レポート時点と前期末レポート時点ですが)。

 これはアンケートの「授業を受けたことによって、人生観・世界観にプラスの変化があったと感じていますか。1から10までのスケールで表現してください。」という問いに対するスケールのパーセンテージでもわかりますが――10という回答が平均25パーセント前後――文章で表現されたものを読むと、「なるほど、こういう感じなんだ」とよく了解できます。

 今日はまず第1回目です。



 H大学社会学部1年男子

 中間レポート感想

 岡野先生の話を聞いて、とても自分が共感できる部分が多くて、特に『コスモロジーの心理学』は、少し大げさですが、まるで自分の取扱説明書を読んでいるかのような気分でした。

 しかし、共感できる部分が多いというのは、自分がニヒリズムやミーイズム、精神的荒廃に巻き込まれているということであって、自分は大変深刻な状況に置かれているのだということがわかりました。

 しかも、日本中の人間ほとんどがこんな自分のような状況に置かれているのかと気づいて、思わず無力感を感じてしまいました。

 ただ、岡野先生の話を聞いたり、本を読み進めていったりするうちに、その無力感を徐々に取り除けていけている気がします。

 自分が今見ている価値観、世界観が良い方向に変わっていってる気がします。

 これからも授業に出て、本を読み続け、この感覚を味わい続け、最終的には自分のニヒリズムというものも最大限に無くしていけたらなと思います。

 なので、よろしくお願いします。



 期末レポート感想

 僕が「生んでくれてありがとう」と思うのは、せいぜい両親、祖父母止まりでした。

 しかし、宇宙一三七億年の歴史、すべての事実は自分と関係があるという今回の話を聞いて、もしどこかのはずみでその歴史的事実が一つでも変わっていたら、僕はここに存在できなかったんだというゾッとした気持にもなりつつ、しかしその分、僕が今ここにいるということの重さを十分に受け止めることができ、一三七億年の宇宙の歴史に、言葉で伝えられない程の感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 そしてまた一つ、僕のコスモロジーにプラスとなるような変化があらわれたと思いました。



 学生たちの巧みな言語表現にはしばしば驚かされます。

 この学生の「まるで自分の取扱説明書を読んでいるかのような気分」という表現も、思わず笑いそうになりながら、実にうまく言い当てているなと思いました。

 相当多数の現代人の心の根底には、ばらばらコスモロジーが潜んでいます。

 それは根本的に欠陥があるOSを使っているコンピューターに似ていて、どんなにいいソフトを使って操作しても、結局はニヒリズム・エゴイズム・快楽主義という不具合が生じてしまうのです。

 コスモロジー教育=コスモス・セラピーの前半は、そのメカニズムの説明、インフォームド・コンセントという面があります。

 上記の学生の「取扱説明書」という表現は、メカニズムの説明を聞いて納得した感じを実にうまく表現しています。

 ところが、ばらばらコスモロジーをつながりコスモロジーというOSに取り替えると、ニヒリズムという不具合は生じなくなります。

 もちろんこれは比喩であって、コスモロジーの転換はOSの取り替のようなわけにはいきませんが。

 しかし、定着という課題が残るにしても、当面つながりコスモロジー的に物を見ることができるようになると、「僕が今ここにいるということの重さを十分に受け止めることができ、一三七億年の宇宙の歴史に、言葉で伝えてない程の感謝の気持ちでいっぱいになりました」という気持ちの大きな変化が起こります。

 これは、かなり見ちがえるほどの心のリフォームだと言ってもいいのではないでしょうか。

 これが徹底すると、コスモロジーのデコンストラクション(脱構築・解体)からリコンストラクション(再構築・再建)に到ります。

 そこまで行くと、ニヒリズムが最大限無くなってしまうはずです。

 それが、コスモロジー教育=コスモス・セラピーの目指す「ビフォー・アンド・アフター」なのです。

 この学生は、年度末にはどういうパーソナリティの変容・成長を遂げていてくれるでしょうか、楽しみです。







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