こちらも当直の時に、翌日の早朝に救急搬入された。96歳女性で、発語がないとして救急要請された。
発症時間が不明の脳梗塞かと思われたが、そうではなかった。施設に入所していて、午前3時に職員が排便の介助をしたが、その時はいつも変わりなかった。
午前6時に自室を訪問した時には、発語がなくなっていた。救急隊も「発語がない」とだけ言っていて、バイタルには異常がないと報告してきた。
搬入時、開眼はしているが発語はない。口唇をちょっと動かしていて、失語症が疑われた。両上肢を持ち上げたり、両下肢の膝立を行うと、右半身の麻痺があった。左側の脳梗塞だとすると失語症になる。
心電図で心房細動を認めたが、かかりつけのクリニックから抗凝固薬は処方されていなかった。心房細動があっても、96歳に抗凝固薬を出すかどうかという問題はあるだろう。
発症して長くても3時間経過しているかどうかだった。頭部CTは出血がないことを確認するのに行った。脳出血はなく、当然だが梗塞巣は指摘できなかった。頭部MRI拡散強調画像でも描出できるかどうかと思われた。
頭部MRIでは左中大脳動脈領域の脳梗塞がしっかり描出された。MRAは頭を小刻みに動かしていたこともあり、うまく描出されていない。心房細動があり、発症してすぐに症状が完成しているので、心原性脳塞栓症でいいのだろう。
診断がついて、後は当院で診るかという問題になる。年齢的に高次医療機関で受けてくれるかどうか。
連絡を受けた家族の娘さんが病院に来ていた。息子さんも駆け付けて来るが、地域の基幹病院の職員だった方で、定年になったばかりだという。
とりあえず基幹病院に搬送依頼をしてみることにした。電話を入れると、年齢を伝えてもすぐに受けてもらえた。引き受けた後で、ところで男性ですか女性ですがと訊かれた。どちらも空きベットがあったということか。(ちょっと拍子抜けするくらいのやり取りだった)
急性期の治療後に当院転院になるが、ほぼ完全麻痺なのでベット上臥床の状態になる。食事摂取もできないかもしれない。
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