腎臓内科の若い先生から、「この腹部CTをどう見ますか」といわれた。「虫垂を指摘できますが」といわれたが、画像を動かして繰り返して見たが、わからなかった。
その週の始めに市内のクリニックから、腹腔内感染症疑いで紹介されてきた50歳代初めの患者さんだった。血圧が80/60mmHgと低下していて、ショックバイタルだった。当方だったらFAXされてきた診療情報提供書をみて、直接基幹病院に紹介して下さいと返事をしただろう。
1か月前から下腹部痛があり、市販の鎮痛薬(イヴ=イブプロフェンとアセトアミノフェン)を飲み続けていた。下痢の続いていたということで、これは腸管の問題ではなく、腹腔内炎症による二次的な症状だった。
クリニックは初診で、白血球26100・CRP24.0と記載されている。簡易検査の器械をお持ちなのだった。1か月前からの症状と炎症反応高値ということは、膿瘍形成を示唆する。
右下腹部から正中に圧痛があり、腹膜刺激症状(反跳痛)もあった。右下腹部の所見が強いことから急性虫垂炎からの限局性腹膜炎・腹腔内膿瘍を疑っていた。
点滴を開始して、血圧108/66となったところで、腹部造影CTを行っていた。下腹部の子宮右側に径7㎝の腫瘤があり、多房性の嚢胞様の構造だった。
画像を見て、むしろ婦人科疾患(卵巣の膿瘍)かもしれないと思ったそうだ。直腸~S状結腸遠位に接して炎症像がある(下痢の原因)。
すぐに地域の基幹病院外科に連絡すると受け入れ可能で、救急搬送となった。後日の放射線科の読影レポートでは「卵管卵巣膿瘍」となっていた。
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