3月31日に記載した83歳女性のその後。右大腿骨頸部骨折の保存的治療となり、当院リハビリ病棟に転院してきた。
1型糖尿病があり、内科で血糖コントロールをすることになった。Cペプチドは測定感度以下で枯渇していて、抗GAD抗体は陰性だった。
この患者さんは1型糖尿病以外にも問題があった。先方の病院の退院近くから軽度の炎症反応上昇が続いていた。(先方では整形外科ということもあり、気にされていなかった)
CRP5前後で白血球数は正常域にある。入院後に何度か再検しても同様だった。CRPは5~8mg/dL台で推移していた。体温は平熱から37.2℃くらいの間にある。
肺炎、尿路感染症、胆道感染症などの感染症は否定的で、血液培養2セットは陰性だった。膠原病のマーカーも特に異常値を呈するものはなかった。血沈が100近くに上昇していた。M蛋白は検出されない。
もともと自宅でもぼとんど動かない方だそうだ。今回は右大腿骨頸部骨折があり、亀背で常に左側臥位になっているが、自分で右側臥位にもなる。それでも動かされる時に右下肢以外も痛がります、ということだった。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)疑いとして診察を繰り返したが、診察上は確診が持てなかった。痛いといったり、痛くないといったり、自覚症状・他覚症状の判断がつかない。
たまたま37.5℃くらいの発熱があった時に、内科の別の先生(偉い先生)が診て、血液・尿検査と画像検査をオーダーしていた。単純に肺炎か尿路感染症かと思ったらしい。その後は何もいわれなかったので、これまでに経過をみたらしい。
通常ならばプレドニン15mg/日で診断的治療を試みる。しかし何しろ、1型糖尿病で血糖が不安定で糖尿病専門医がいる病院で手術をやめた人だ。
ずっと診断的治療を躊躇っていたが、そろそろ自宅退院を考慮する時期になってきた。ある程度の決着をつける必要があり、プレドニン10mg/日を開始してみた。
血糖は持効型インスリンを少量増量しただけで、今のところあまり変わらないようだ。病棟看護師さんの話では、動かしたときの痛がり方が軽快しているという。炎症反応は軽減してきた。もう少しプレドニンで経過をみることにした。
(3月31日の記載)
3月27日(水)に右大腿骨頸部骨折の83歳女性が地域の基幹病院から転院してきた。先方の整形外科から当院の整形外科への紹介だが、骨折は保存的治療となっていた(整形外科としてはあまりやることはない?)。
1型糖尿病で先方の病院の糖尿病科に通院している。インスリン強化療法をしているが、それでも血糖の上下が極端だった。内科に血糖コントロールを依頼された。
経過は2月13日から発熱があり、翌日にCOVID-19と診断された。その後、自宅で転倒骨折が起きたが、受診を控えていた(受けてもらえなかった?)。隔離解除の2月下旬になって、病院に連絡して、2月28日に入院となった。
当初は手術を予定していたそうだ。しかし、血糖が40~600mg/dl以上と変動していたこと、もともとのADLが自宅でやっとトイレに行くことから、保存的治療となった。
問題の1型糖尿病は2017年に発症していること、自己インスリン分泌能が高度に低下していわゆるブリットルな血糖変動、と記載されていた。食事量も不安定なので、食後に超速効型を使用していた。
76歳の1型糖尿病というのは何だろうか。1型は急性発症、緩徐進行型、劇症とあるが、どれに相当するのか。本人に訊いても、若い時は糖尿病がなかったらしい、ということしかわからない。発症の経緯も、どこの医療機関を受診してきたかも覚えていないという。
可能性としては緩徐進行型で、インスリン依存状態になってから受診して、糖尿病専門医へ紹介されたということではないか。
息子と二人暮らしだが、日中は一人になる。昼のインスリン注射はヘルパーさんの手助けでしているという。単位だけ合わせて本人に手渡すのだろうが、押す力がないと注射できない。本人の手を添えてヘルパーさんが押しているのかもしれない。
抗GAD抗体と血中Cペプチド測定を外注で提出した。
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