なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

アルコール性肝硬変、多臓器不全

2024年12月10日 | 消化器疾患

 12月6日(金)の午後に救急室を通ると、黄疸の痩せた男性がストレッチャーに横たわっていた。その日の救急は大学病院から来ている先生(非常勤の外科医)で、当方は入院時の当番になっていた。検査結果待ちで入院を依頼されるのかと思ったが、違っていた。

 患者さんは50歳代後半の男性で、10月末から消化器科の外来に数回通院していた。アルコール性肝硬変だったが、飲酒は続いていた。ふだんは缶酎ハイ2Lほど飲むらしいが、体調不良で飲酒量は減少していた。

 昨年消化器センターのある専門病院で食道癌のESD(内視鏡的粘膜剥離術)を受けている。10月には同じ病院で大腸ポリープの粘膜切除術(EMR)も受けていた。消化器科の外来では頻回の下痢を訴えていた。

 その日の午前0時過ぎに救急外来を受診している。転倒した際にできた左肩のかさぶたを剥がしたら、出血が止まらなくなったという。当直だった内科の若い先生が、oozing(しみ出るような出血)を圧迫止血した。血液検査で血小板数は正常域(下限)だったが、凝固検査は時間外はできない。肝硬変に関連した凝固異常と判断されたが、事情も分からず困ったらしい。

 バイタルは、血圧が88/53mmHg・脈拍82/分・呼吸数16/分・酸素飽和度94%(室内気)だった。いったん帰宅して、午前中に消化器科の外来を受診とした。

 

 消化器科の外来を受診したが、黄疸が進行していた。会話はできるが意識清明とは言い難いと記載していた。末梢の静脈から通常の採血ができず、大腿静脈から採血している。

 結果は、白血球23900・CRP6.3と炎症反応の上昇を認めた。10月の受診時からCRPは同程度で推移している。Hb7.3g/dl(MCV120)と大球性貧血があるが、血小板は17.8万と意外に正常域にある。

 PT-INR2.17・APTT63.7と延長している(Dダイマー6.7)。凝固因子欠乏からの出血傾向のようだ。(抗凝固薬も抗血小板薬も使用されていない。)

 10月の受診時は、AST 145・ALT 38・LDH 224・ALP 113・γ-GTP 1265・総ビリルビン6.1とアルコール性肝障害(肝硬変)らしい結果だった。その日は、AST 158・ALT 79・LDH 365・ALP 128・γ-GTP 188・総ビリルビン19.9となっていた。血清アンモニアは102(<75)。(アルコール摂取は少なくなっている)

 正常だった腎機能がBUN77.1・血清クレアチニン9.40と著しく上昇していた。血清カリウムが10月も2.3と低下しているが、1.8とさらに低下していた。

 胸腹部CTで軽度の胸水貯留もあるが、腹水は中等度に貯留している。肺炎はないようだ。原発性腹膜炎を来しているのか。

 昨年から内視鏡治療をしている消化器センターのある病院に連絡していたが、ひどい急性腎不全があるので対応できないといわれた。次に大学病院の救急科に連絡すると受けてもらえた。

 救急室で見た時は、搬送する救急車待ちのところだったようだ。後で消化器科医に訊くと、このままダメかもしれないが、何しろ年齢はまだ若いので、できるだけの治療は受けさせたいということだった。

 

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