なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

一発診断 第14回~単純性紫斑、腹部片頭痛

2019年12月22日 | Weblog
CareNeTV
一発診断
第14回 右膝に思い当たらないあざができた30歳女性
 
Illness Script 27 30歳女性
現病歴:
2日前に右膝下内側にあざができていることに気づいたため受診 あざができる理由に思いあたることはない 長時間の立位なし 外傷歴なし 家族歴なし 内服薬なし
 
身体所見・検査所見:
バイタルサイン 異常なし
血液検査 血小板、凝固系に異常なし 右膝内側に浸潤を触れない紫斑
 
一発診断:単純性紫斑
 
単純性紫斑
定義:
・とくに誘因なく、四肢(主に下肢)や臀部に好発する
・上肢・胸部にみられることもある
病因:
・血管の脆弱性が原因と言われているが、はっきりわかっていない
疫学:
・基礎疾患のない若年~中年女性に多い
・家族性にみられることもある
・春や秋の季節の変わり目に多い
・月経時や疲労時にみられる
症状:
・軽度圧痛を伴うことがあるが、紫斑の周囲には炎症所見を認めない
・色素沈着を残すこともある
・そのほかの症状(発熱、関節痛、出血など)はみられない
血液検査:
・異常は認めない
治療・予後:
・良好で、1~2週間で自然消褪する
・血管強化薬(ビタミンCを含む)をしようすることもあるが、効果は一定ではない
紫斑を主訴に受診した患者の約3割が単純性紫斑
鑑別疾患:
1.心因性紫斑病
・四肢や顔面に多くみられる有痛性の紫斑
・紫斑の出現前に、焼けるような、針でさされるような知覚異常があり、続いて熱感・腫脹・紅斑、かゆみなどの症状が現れる
・外傷、手術、ストレスなどが契機となる
・ほとんどの症例で女性である(男性は約5%のみ)
2.起立性紫斑病
・長時間の立位で血流がうっ滞し、血管内圧が上昇することでかしに出現する紫斑
3.特発性血小板減少性紫斑病
・血小板減少を来す自己免疫性疾患んで、浸潤を触れない紫斑が出現
・PA-IgGは感度91%、特異度27%
→除外診断にはある程度役立つが、確定診断には使えない
4.アレルギー性紫斑病(アナフィラクトイド紫斑病)
・関節痛、腹痛、腎炎を伴う、浸潤を触れる紫斑を来す 血管炎によって生じる
・溶連菌の先行感染の有無を確認する
5.怒責性紫斑
・激しい咳き込み、嘔吐、排便などの力みにより血管内圧が上昇することで生じる
・顔面、頚部に多い
 
一発セオリー:
とくに誘因なく、若年女性の下肢に触知しない紫斑を認め、ほかに症状がなく、検査所見で異常がなければ
・・・単純性紫斑
 
これは診たことがある。血小板・凝固検査で異常がないので、経過観察としただけだった。自然消退するので、それでも問題なかったと思うが、患者さんにそういうことがあることを説明して、安心させられればよかった。
 
Illness Script 28 26歳女性
 
現病歴:
・腹痛、嘔気・嘔吐を訴えて受診
・同様のエピソードを数か月前から週2~3回の頻度で繰り返しており、ここ数週はさらに頻度が増えている
・前医での採血、上部・下部消化管内視鏡検査、腹部CTでは異常なし
・腹痛はいつも6時間ほどで改善
・痛みがない時はまったく症状がない
 
身体所見・検査所見:腹痛のためうずくまっている、発熱なし 腹部じは平坦・軟、臍周囲に軽度圧痛を認める、反跳痛なし
 
経過:嘔気・嘔吐に対して制吐薬を使用し、外来で経過をみているうちに、いつもより早く腹痛が改善したようであるが、明らかではない
 
追加問診:
・片頭痛の家族歴あり
・発作時にトリプタン製剤をしようしたところ速やかに改善
予防投与:カルシウム拮抗薬→腹痛発作はみられなくなる
 
一発診断:
腹部片頭痛
 
腹部片頭痛
概念:
・機能性腹痛の1つで、中等度以上の腹部正中の痛みを繰り返すもの
・小児に起こることが多いが、せいじんでも発症することがある
病因:
・はっきりわかっていない
疫学:
・女性に多い
・90%で片頭痛の家族歴がある
誘因:
・ストレス、食物、睡眠不足など
・はっきりしないこともある
診断基準:
A:腹痛発作は5回以上あり、B~Dを満たす
B:痛みは以下の3つの特徴の少なくとも2項目を満たす
1.正中部、臍周囲もしくは局在性に乏しい
2.鈍痛もしくは漠然とした腹痛
3.中等度~重度の痛み
C:発作中、以下の少なくとも2項目を満たす
1.食欲不振 2.悪心 3.嘔吐 4.顔面蒼白
D:発作は、未治療もしくは治療が無効の場合、2~72時間持続する
E:発作間欠期には完全に無症状
 
治療:
・確立した治療法はない
・発作時にトリプタン製剤を用いて診断的治療を行う
急性期
・トリプタン製剤を用いる
・メトクロプラミドが有効なこともある
予防投与
・発作回数が多い場合(カルシウム拮抗薬・三環状系抗うつ薬・抗てんかん薬・Β遮断薬など)
 
機能性胃腸症、過敏性腸症候群、食物アレルギーなどと誤診されている可能性があるので、片頭痛の既往・家族歴を確認する
 
一発セオリー:
片頭痛の既往もしくは家族歴のある患者で繰り返す腹痛、悪心・嘔吐がみられたら・・・
腹部片頭痛

これは診たことがあるかどうか、わからない(思い出せない)。診ていれば、機能性胃腸症、過敏性腸症候群として対処していたのかもしれない。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« サナダムシ | トップ | 今日は搬送の日 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事