Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

オックスフォード連続殺人事件

2015-03-04 17:51:00 | その他の映画・ドラマ・舞台

スペインのポスター

モースのシリーズですっかりオックスフォード好きになったのと、主演がホビットのフロドことイライジャ・ウッドなので見ました映画「オックスフォード連続殺人事件/The Oxford Murders(2008)」。

原作はアルゼンチンの数学者/作家ギジェルモ・マルティネスによる同名小説です。彼は実際に数理論理学の博士として2年間オックスフォードに留学したとのこと。その時の経験がもとになっていそうですね?!

イライジャの役は、アメリカからオックスフォード大学に留学してきた数学専攻の大学院生マーティン。物語は彼がオックスフォードの町で下宿先を訪ねるところから始まります。家主は年配の女性で、彼女の部屋にはタイプライターのようなものと男性ふたりの写真が飾られていて、それはエニグマ・マシーンのコピーでした。「写真はアラン・チューリングよ。彼の最後は白雪姫と同じだったわね。毒リンゴで。」そして写真にチューリングと写っているのは彼女と彼女の亡くなった夫でした。

「イミテーション・ゲーム」もまだこの世に出ていない2008年には、エニグマ・コードなどという台詞はさぞミステリアスに聞こえたでしょうね。しかし日本では来週に公開を控えたこのタイミングでも驚きました。

ここで上のポスターをご覧ください。何か見覚えはありませんか?数式で埋め尽くされた黒板・・・はい、「ホーキング」のDVDジャケットを思い出させるので、あえてこのスペイン版のポスターをはってみました。ちなみにこの映画はイギリス、スペイン、フランスの共同製作で、プルミエはスペインです。原作はスペイン語ですし、監督/脚本もスペイン人のアレックス・デ・ラ・イグレシアだからかと思います。

マーティンの留学の目的は、憧れの数学者セルダム教授に会うためでした。実は下宿先も家主がセルダムの知人と知って決めたのでした。しかしセルダムは今自分の研究のみで学生に教えていないと、大学の研究室に案内された時に大学スタッフの人から聞かされます。

このおじさんが、いかにもイギリス、オックスフォードって感じで、とても丁寧な言葉遣いで「直接会って教えてもらえるようたのみたい」と言うマーティンに「もちろん誰と話そうとそれは君の自由だが、忠告しておかねばなるまいね。教授は突発性のようなことを好まない。もし私の助言をお聞きになるなら現実的に研究を進めるべきだ。君の研究を理解してくれる別の良い教授がいるだろう。」とニッコリ微笑んでキッパリと言うのです。アメリカ人から見たイギリス人を強調したのかと思いましたが、見た後で原作者がオックスフォードに留学していたことを知り、きっときっと作者の実体験なのだな!と確信しました(笑)。

実はこのおじさんだけでなく、作品中、登場人物が非常にイギリスらしい人と外国人の2チームに分かれます。

家主もシャキシャキした老婦人で実の娘にも毒舌。腹の内を見せないセルダム教授ももちろんイギリスチーム。家主の娘ベスも、マーティンに気があるのだけど大胆になったりそれを恥じてみたり、感情的になるのは自尊心が許さないと言ったどちらかというと男性的なイギリスらしさにとらわれています。

外国人チームは主役のマーティンと、スカッシュで知り合ったスペイン人看護婦のローナ。この彼女がもう、髪も目もダークとは言え、ムチムチセクシーすぎる体型で、モースシリーズで見慣れたオックスフォードにすごい違和感が!私でもどこを見ていいかわからないフェロモンを放出してまして・・・でもたぶんスペイン人やアルゼンチン人、そしてアメリカ人から見たらエキセントリックなイギリス人の中でオアシスな存在なのかしら?!後にマーティンの恋人になるのですが、ふたりのベッドシーンもローナの裸にエプロンだけでクッキングする姿にもただ目が眩みました!

事件は家主が自宅で殺されたことから始まります。そしてその第一発見者は、マーティンと、彼を断ってバカにしたセルダム教授でした。セルダムもちょうど家に婦人を訪ねて来ていたのでした。そしてそこから2人の数学者(マーティンはまだ院生ですが)が探偵となるのです。

そして事件を担当した警部さんがカーソンさん・・・の中の人ジム・カーターが演じています。彼はエキセントリックではない外国人から見ていい意味でのイギリス紳士的な雰囲気を持っています。ああ楽しい。

2番目の犠牲者が出て同一犯による連続殺人と数学者コンビが推理、警察と共に犠牲者を増やさないよう捜査に出ます。

ローナが働く病院には、元数学者で発狂した難病患者とか、連続犯人からの予告メッセージが数字を意味する記号だったり、スクラブルに残された単語が暗号めいていたり、怪しい出来事や人間がいっぱい・・・

でも主要人物、アメリカ人スペイン人は謎めいてないし、謎だったとセルダム教授でさえもローナの恋人だったと判明、有名な教授もお色気には弱いただのおやじかい?!と思った時点で、ミステリーでサスペンスなのだけど、あっけらかんとした空気さえ感じました。

そこに陰を差すのは、意外にも外国人チームの、マーティンと研究室をシェアする東ヨーロッパからの留学生ユーリ。彼もセルダム教授目当てにオックスフォードに来ていたのだけれど、彼は別の学者に自分の理論を盗まれたと怪しい行動・・・この人、どこかで見たことあると思ったら、「The Hour」でも怪しさ150%のキッシュを演じていたBurn Gormanという役者でした。この人、「クリムゾン・ピーク」にも出演しているけど、やっぱり暗くて怪しい役なのかしら?!

3番目には犠牲者も大勢でて、そして謎解きもちゃんと意外な真相も提示され、モースのシリーズで慣れた「淡々とした人々による淡々とした展開」とは全然違うオックスフォードのミステリーでした。

しかし話の展開よりも、モースと同じ町を舞台に「ロード・オブ・ザ・リング」の妖精イライジャが肉感的な看護婦とベッドシーンを演じる・・・ことが気になって気になって、ラテン民族にかかったらミステリアスな暗くアカデミックな世界もこのようになるのか・・・ということに心を動かされてしましました。


「オックスフォード連続殺人事件」は、DVDの他に現在hulu、ひかりTVでも視聴できます。