Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

誰もいない国/No Man's Land

2017-09-23 08:32:00 | その他の映画・ドラマ・舞台
パンフありました

No Man's Landというサー・イアン・マッケランとサー・パトリック・スチュワートが出ているこのお芝居は、つい最近やってたという印象を持っていたのに、

調べてみたら2016年12月15日の舞台がライブとして放送され、千秋楽は17日ということでした。

私の「つい最近」は9ヶ月も前だったのがショックですが、

この初演は2013年NYで、2016年にイギリスにはシェフィールド、ニューキャッスル、ブライトン、カーディフを経て故郷ロンドンに帰って来て、千秋楽の2日前に収録されたものだと知り、

本舞台の後のキャスト達のトークがなるほど達成感漂うなあと納得しました。(舞台は観客との共同作業で、場所によって違うものができるとの言及がありましたので)


さて、つい最近だと思った舞台の写真の印象は、二人のサーがスーツを着た紳士の役、というだけでももう面白そう!だったのですが、

初演1975年のコメディで、しかも老人2人がメインに、+青年2人も延々と過去をしゃべり続けるという不思議な、しかし面白い作品でした。



幕が開くとそこは円形ぽい整った青い部屋、第一印象はターディス(ドクター・フーの時空マシーン)。

スプーナー(サー・イアン)のスーツはポケットが膨らんで全体がシワシワ、足元はスニーカー、反核バッジをつけて反体制風でありながら、シャツは上までボタンを留めてタイをきっちり締めてるあたりは知識階級を思わせる。

ハースト(サー・スチュワート)の方は、家の主人でもあり、典型的なイギリスの保守的なジェントルマンと見える服装に、家のアルコールキャビネットとはこう使うのかというしつらえぶり。

この段階ではスプーナーの方がやたらとしゃべり、ハーストは聞き役を我慢してやってる感じですが、

話の内容から2人は初対面で外で知り合いハーストが自宅にお客を招いたことがわかります。しかも場所はハムステッド・ヒースで、70年代にはゲイのナンパエリアがあったことも語られます。

この時点では、2人はゲイなの?と思ったのですが、

モルトウィスキーとウォッカがどんどん2人の喉元を流れ、

やがて話し手と聞き手が逆転、しかも話の内容も昔の女性との交際暴露となり、この時点では2人その昔オックスフォードで同じコミュニティにも属し、クリケットをし、ハーストはスプーナーの妻と浮気をしていたことにまでなってる・・・ゲイではなかったのね。

しかも女性の話になると顔がニヤニヤと嬉しそうで、遠回しな表現かと思うと観客席がどよめく言葉まで使っていて

紳士とは巧みに服装と言葉遣いで偽装した男性ホルモンか、と思うほど。

話し言葉こそ二人とも流暢(高齢の俳優さんがセリフが覚えられなくなるって話はどこいった?!とびっくりするくらいセリフが多い!)ではあるものの、

やはりこれは酔っ払いの話・・・ではないか?と思い始める。

さらに混乱を極めるのは、ハースト宅の使用人の青年2人の登場で、2人とも素性は怪しそうな、70年代だからベルボトムのスラックスに茶色のレザージャケットに長髪なので、ぱっと見ハーストがハムステッドで拾って来たとしか思えないのです。

この2人も使用人のくせに偉そうだしよくしゃべるので4人の力関係が不明になり、またここでエイズ以前の70年代、ゲイコミュニティで家をシェアしてた話などを思い出してしまいました。

現実と嘘との区別もつかなく過去が語られても、ハーストが2度も「嘘だと思ったら写真がある。」と言いながらも、それを「人には見せない」と言ったのは、自分でも99%信じてる自分の作り話を、潜在意識の1%で写真には写ってないことを自分が語ってることを自覚しているのかなと思いました。

途中でスプーナーが朝ごはんとして、スタンドに乗せて運ばれた超薄切りのこんがりトーストとスクランブルエッグにコーヒーを食べるシーンがあり、

舞台ではよく見えないでしょうが、ライブではアップで映るので本物を本当に食べていることがわかり、無性に食べたくなりました!

そのことで、本編後のQ&Aで「1週間で8回も食べなくてはならなかったので、もう見たくもない」と言ったイアンWWW

あと、Q&Aでは、役者にとって観客の反応が大事と何度もなんども言っていたのが、ファンとしてはとても嬉しくなりました。

パフォーマンスする人というのは、やはり見られて初めて自分の業績を感じるのでしょうか。

演劇ファンなんて、ただ見る自分が楽しむだけで、実はこの日のNTLIVEだって「仕事が終わったあとの金曜日、ショッピングに行って気軽な楽しみも出来るのに」なんで疲れながらまで観に行くのか、と自分に問いかけてもみたのです。

でも見に行く人がいるから俳優がいる、という単純なことを俳優さんたちの口から聞くことができて、行ってよかったなあ~と思いました。

パンフレットには脚本翻訳者による解説があるのがよかったけれど、欲を言うと「NYではUKカルチャーに関するセリフへの反応はない」とQ&Aでもキャスト&監督が言ってたので、日本人にもおそらくわからないであろう、ロンドンの観客に受けて外国人が置いてきぼりになるセリフの解説も欲しかったです。