Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

ホワイト・クロウ

2019-05-12 20:34:00 | その他の映画・ドラマ・舞台


ルドルフ・ヌレエフの伝記映画「ホワイト・クロウ」を見ました。

ヌレエフとは、ソビエト連邦時代に西側に亡命した伝説のバレエダンサーです。

私がその存在を初めて知ったのは「バレンチノ」という映画で主演していた俳優としてでした。

その後ロンドンはコベントガーデンのオペラハウスでヌレエフの写真パネルを見たんです。もう目が釘付けになってしまいまして。そしてヌレエフの写真集を買ったり調べたりしました。

パリで亡命するもイギリスのロイヤルバレエで当時プリンシパルだった(時代的な言い方をすると文字通りプリマドンナだった)マーゴット・フォンティーンとパートナーを組み、絶大なる人気を誇りアメリカや日本にも公演で訪れた。

彼は「野獣のような」とよく言われ、フォンティーンは逆に上品で本当にプリンセスのようなバレリーナ、しかもパートナーを組んだ時は実は彼女はもう引退を囁かれていたピークを過ぎたと思われていたタイミングだった。

ところがふたりのケミストリーはそれぞれに良い効果となって表れた。このことは映画の中でもオペラ座のベテラン女性ダンサーが言っていた。

「若い男性ダンサー上手く見えるし、年上の女性ダンサーは若く見えるもの。」

その後パリオペラ座バレエ団の芸術監督にもなり、監督しながらも自ら踊り続け、古典の新解釈版も発表。エイズにて没。


とまあざっとこんな程度の知識でした。

そして映画「ホワイト・クロウ」。こちらは、パリで亡命するまでのヌレエフの半生を描いた物語ということで、

そうです、冷戦の時代に西側に来てからの功績は私でも簡単にある程度は知れるくらいになっているけれど、知られざるソ連時代のヌレエフを知ることができる映画です。

つい最近、セルゲイ・ポルーニンの伝記映画も見たところですが、彼も脇役で出演しています。が!ほとんどヌレエフの同級生で寮で同室、ということ以外まったくスポットライトを浴びない役だったんですよ!思い出すと「くるみ割り人形」でもセルゲイの無駄使い!!と私は憤ったんですけど、再び。なぜなの???

で、セルゲイとは時代が違いますけれども、やはりヌレエフも貧しい家庭の出身で、バレエ界に入る=家族と離れ離れ、の図式です。

おそらくソ連時代の一般市民はみんな貧しかったと思われ。。。なんてたって農奴の国ですから。。。

それでキーロフのバレエ団員になっても反抗心の強いヌレエフを諭す時に、当局の監視員が

「君の行いは他の団員や故郷の家族にも影響するよ」って日本の学校の「みんなに迷惑がかかるよ」みたいに言うんですわ!ああ、もうやっぱ日本ってソ連並みの全体主義だわ!と思った瞬間でした。

話を元に戻すと、映画の見どころは、バレエです。

ヌレエフの話を辿りながら、ソ連時代のバレエクラスが大変面白かったです。

お恥ずかしくも、私はロンドン時代にバレエ教室に通い始め、日本に帰ってきてからはワガノワ式のバレエ教室に行き通算9年くらいレッスンの経験がありますので、

キーロフのバレエ学校(確かマンガの「アラベスク」もそうでしたよね?)でのレッスンシーンで

レイフ・ファインズ演じるプーシキン先生が「ではご挨拶から」とピアニストを促し、ピアノに合わせてレベランスから入る美しさ。豪華さ。そしてそれをよ〜く見えるように映したレイフ監督偉い!

「デミプリエ2回とグランプリエ1回ずつ」と先生が言って見目麗しいメイルダンサーたちが一斉にバーレッスンをする様子を見ただけで胸が高鳴ってしまいました。ううう、一流の人たちも私が通ったレッスンと同じことしてる興奮よ。

そして昔のソ連のレッスン着が白いTシャツに黒のタイツとソックス、というのにも萌えます。

はい、レッスンだけで萌えの固まりなんですよ。


それとフレエフ役のダンサー、オルグ・イヴェンコが写真を見たときにはヌレエフと全然違うと思ったのに、映像になるとフッとそっくりに見える時があるんですね。それもなんだかヌレエフがのりうつったような気がしてどきっとしました。

見栄えで言えばポルーニンが演じた金髪のダンサー、ユーリの方が、「きゃっ!ミノロフ先生!」(アラベスク)って感じで華やかですが、ヌレエフは野獣ですから仕方ない。


そして生意気ヌレエフがご指名したプーシキン先生は、物腰の柔らかい穏やかな人物で、スパルタ式とは反対に、生徒を内面から育てるタイプでした。野獣が生徒ですから、先生も力で押さえつけては逆効果なのですね。。。

それはわかるのだけれど、プーシキン先生は怪我をしたフレエフを自宅に住まわせたりしてご贔屓にしたのに、その後奥さんがしゃしゃり出てきてなんだかプーシキン先生はただのふがいない男に見えてきてしまったのが残念でなりません。

他のキャスティング、ロシア人のダンサーたちも昔のバレエの人たちってイメージ通りで美しかったし、

脚本がディヴィッド・ヘアーということで、ヌレエフの幼少時代、キーロフのバレエ生徒時代、今のバレエ団員になった時代を織り交ぜて、全てが絡み合いながら亡命の瞬間までシュッと回収される圧巻さがありました。

見たのが2日前なんですが、昨日、今日と職場で誰もいない時に

「トンベ、パドブレ」「アッサンブレ」と一人久々にジタバタやってみてました。