宋斤の俳句「早春」昭和十年五月 第十九巻五号 近詠 俳句
満洲国皇帝陛下御来遊奉迎
御旅を地に満ち花の咲きにけり
紀伊南部
家’間を濱小田へ出る春日かな
春の砂に漁家の姥たち脚投げて
南部沖の鹿島
はなれ島に貝ひろふなる我が音
掌のうへの貝がものいふ霞かな
湯崎
春潮や濱一筋を温泉の往来
温泉の欄は春雨降って石蕗の崖
紀の濤にひと夜春雨沈みけり
温泉ながれの音と春雨蛙かな
千畳敷岩にて
岩燕いともむらさき濤を飛ぶ
東風霽れて太平洋の一線す
白濱
宿々や濱木綿植ゑて夏近し
鳥交る天地むかしに寂なり
蝶去ってあとに飛ぶなし古泉
潮風に扇をさむく持ちにけり
なほざりの菊と草とも根分け哉
籠の鳥わすれて飼へり花も過ぐ
淡路に高田屋嘉兵衛忌を修す
嘉兵衛忌の淡路島空雁北す
遊覧バスにて大阪市一日す 紅詠會銀行
我街や旅しめぐっって日の永し
竹秋へ沼みづ渡る小舟かな
若芝の露ひろゆけば家のうへ
春深し雲をはなして澄める月
行く春の焚火のけむり眞晝かな
明廿五日より甲信及北陸地方へ赴かんとす
浅春や明日を信濃の旅支度
舊正月
舊正の宵浅きなり村の口
朝照りに舊正月の野びろ哉
舊正や老がたのしむ縁日南
春の池
春の池小魚に雨のふりやまず
野の水のひとすじ入れる春の池
春の池みなぎり寺のうちとなく
早春社四月本句會
猫の子は椿落つるも嗅ぎにけり
櫻陰や夜にけだものゝ猫寝ねて
邸内や櫻陰潜る人忙し
跫音のわれにかへって櫻陰
早春社三月例會
双林の夕を二木糸やなぎ
荼昆寺の掛けふるしたる涅槃繪圖
春泥のなほもこまかき雨のふる
春泥を花ちるところ遷りけり
春泥を渡舟の舳にふみにけり
早春社立春例會
梅の枝に夕べ見えてぞ峡の風
城あとや梅とし潜る茶亭あり
早春社欸乃會総會 神戸一宮神社社務所
二羽三羽町に煤けて寒雀
野に散って果てしもなしや寒雀
早春社忘年句會
垣の外に遠き燈の師走かな
高窓に町を見下す師走哉
クリスマス雪の遠坂登り行く
電気局句會
水靄のひろき彼方や春耕す
水温む渡舟の中の小いさかい
水温む昨日の鳰のけふふへて
満洲国皇帝陛下御来遊奉迎
御旅を地に満ち花の咲きにけり
紀伊南部
家’間を濱小田へ出る春日かな
春の砂に漁家の姥たち脚投げて
南部沖の鹿島
はなれ島に貝ひろふなる我が音
掌のうへの貝がものいふ霞かな
湯崎
春潮や濱一筋を温泉の往来
温泉の欄は春雨降って石蕗の崖
紀の濤にひと夜春雨沈みけり
温泉ながれの音と春雨蛙かな
千畳敷岩にて
岩燕いともむらさき濤を飛ぶ
東風霽れて太平洋の一線す
白濱
宿々や濱木綿植ゑて夏近し
鳥交る天地むかしに寂なり
蝶去ってあとに飛ぶなし古泉
潮風に扇をさむく持ちにけり
なほざりの菊と草とも根分け哉
籠の鳥わすれて飼へり花も過ぐ
淡路に高田屋嘉兵衛忌を修す
嘉兵衛忌の淡路島空雁北す
遊覧バスにて大阪市一日す 紅詠會銀行
我街や旅しめぐっって日の永し
竹秋へ沼みづ渡る小舟かな
若芝の露ひろゆけば家のうへ
春深し雲をはなして澄める月
行く春の焚火のけむり眞晝かな
明廿五日より甲信及北陸地方へ赴かんとす
浅春や明日を信濃の旅支度
舊正月
舊正の宵浅きなり村の口
朝照りに舊正月の野びろ哉
舊正や老がたのしむ縁日南
春の池
春の池小魚に雨のふりやまず
野の水のひとすじ入れる春の池
春の池みなぎり寺のうちとなく
早春社四月本句會
猫の子は椿落つるも嗅ぎにけり
櫻陰や夜にけだものゝ猫寝ねて
邸内や櫻陰潜る人忙し
跫音のわれにかへって櫻陰
早春社三月例會
双林の夕を二木糸やなぎ
荼昆寺の掛けふるしたる涅槃繪圖
春泥のなほもこまかき雨のふる
春泥を花ちるところ遷りけり
春泥を渡舟の舳にふみにけり
早春社立春例會
梅の枝に夕べ見えてぞ峡の風
城あとや梅とし潜る茶亭あり
早春社欸乃會総會 神戸一宮神社社務所
二羽三羽町に煤けて寒雀
野に散って果てしもなしや寒雀
早春社忘年句會
垣の外に遠き燈の師走かな
高窓に町を見下す師走哉
クリスマス雪の遠坂登り行く
電気局句會
水靄のひろき彼方や春耕す
水温む渡舟の中の小いさかい
水温む昨日の鳰のけふふへて