宋斤の俳句「早春」昭和十年六月 第十九巻六号 俳句
高田屋嘉兵衛忌俳句大會 昭和十年四月
嘉兵衛忌や淡路遍路の春さ中
早春社五月本句會
鷺ひとつ降りしまぎれて餘春哉
そこらあたり闇を歩いて餘春哉
釣しのぶ住めるが透いて鏡立
釣しのぶ夜更のしづくほつほつと
一二軒厨も川の釣しのぶ
早春社四月例會
わが影のあざやかに落花しくところ
落花また雨後の朝水ふみゆくや
朝の蝶とまって碑文彫りふかし
早春社初歩俳句會
草餅や夜に入るなる野のかすみ
雛の間に裏山筧ひびく哉
徴兵検査
郷国へ百里を徴兵検査かな
労働祭
メーデーも濟んで工場の庭躑蠋
幟市
妻の腹男であれと幟市
竹醉日
竹植ゑてこの壁に我窗の欲し
蘭湯
蘭湯や父がつれ浴る女の子
早春社郡山支社創立十周年記念俳句會
町の端や花に濁って金魚池
花に夜を待つに眺めて春の雲
城内外歩いて暑し春の雲
早春社長野例會
浅春や旅の戸にたち雲匂ふ
亭の燈の樹の間暈して春浅き
早春社無月例會
行雁や越路の虹をひたさして
引鶴のうららか雲の展けたり
三月例會
みち岐れ徑岐れして囀りへ
春あられ水打って亭ともりある
紅詠會一月句會
薄氷やところの梅の名のみなる
手の平らにひつきて失せし氷かな
涸池へ下りて行く道風の花
猪とれて犬のよろこび風の花
風花や茶店に飼われ雀鳴く
風の花遊里の背戸が枯芦に
風の花梢何かの花芽して
蠣の俵そこらこぼれて風の花
風の花池の中道沈みたる
風の花鳶が歩いてゐる畠
我が船につんざく汽笛風の花
高田屋嘉兵衛忌俳句大會 昭和十年四月
嘉兵衛忌や淡路遍路の春さ中
早春社五月本句會
鷺ひとつ降りしまぎれて餘春哉
そこらあたり闇を歩いて餘春哉
釣しのぶ住めるが透いて鏡立
釣しのぶ夜更のしづくほつほつと
一二軒厨も川の釣しのぶ
早春社四月例會
わが影のあざやかに落花しくところ
落花また雨後の朝水ふみゆくや
朝の蝶とまって碑文彫りふかし
早春社初歩俳句會
草餅や夜に入るなる野のかすみ
雛の間に裏山筧ひびく哉
徴兵検査
郷国へ百里を徴兵検査かな
労働祭
メーデーも濟んで工場の庭躑蠋
幟市
妻の腹男であれと幟市
竹醉日
竹植ゑてこの壁に我窗の欲し
蘭湯
蘭湯や父がつれ浴る女の子
早春社郡山支社創立十周年記念俳句會
町の端や花に濁って金魚池
花に夜を待つに眺めて春の雲
城内外歩いて暑し春の雲
早春社長野例會
浅春や旅の戸にたち雲匂ふ
亭の燈の樹の間暈して春浅き
早春社無月例會
行雁や越路の虹をひたさして
引鶴のうららか雲の展けたり
三月例會
みち岐れ徑岐れして囀りへ
春あられ水打って亭ともりある
紅詠會一月句會
薄氷やところの梅の名のみなる
手の平らにひつきて失せし氷かな
涸池へ下りて行く道風の花
猪とれて犬のよろこび風の花
風花や茶店に飼われ雀鳴く
風の花遊里の背戸が枯芦に
風の花梢何かの花芽して
蠣の俵そこらこぼれて風の花
風の花池の中道沈みたる
風の花鳶が歩いてゐる畠
我が船につんざく汽笛風の花