宋斤の俳句「早春」昭和十五年二月 第二十九巻二号 近詠 俳句
近詠
橿原神宮寒夜参拝
大道の貫くあれば寒しろく
寒の星満ちたりあるは吊り合える
ともしびは他所に遠くて凍つるかな
霜白木神橋の夜をわたるかな
星の天うねびみやまに冴え清み
雲浮きて寒夜いよいよ蒼穹に
御まへの松夜を優ぐれ冬盡くる
拍手の谺愼れぬ霜だゝみ
西大寺のほとり
寒かすみ大和はぬくゝ寺の塀
寺小門寒降る木の葉潜るなり
枯れ堤寺から使ひ出でゝゆく
寒雀ものにをどろく寒の空
凍てゝゐる池の柳に名ありけり (百萬柳)
木挽く音へ寺門を出たり刈田ひろ
鴨と覺ゆ曇りに重く一羽去る
枯れしづか歩いてみだすことのあれ
冬の鳥丁々と鳴き誇りける
枯れ徑や媼が我を知るが風に
山眠るが朱をひと刷きの入日雲
むぐら枯れ鳥寐に入し戦ぐかな
寒凪や野奥の障子ほの燈る
奉慶紀元二千六百年
紀元節ありへし紀壽のなほとはに
孔舎衙吟行
村内
村の辻明日のとんどの料積みて
石車石積みすてゝ寒椿
貝塚にて
麥さむき畦に石斧ひろひけり
大龍寺にて
時雨そむ空にともして烏瓜
枯れの音空より時雨かすれきて
早春社新年本句會
人日や日南もとめて茶山ゆく
初富士に総身以て向ひけり
日の春や汀の鳥居磯馴れ松
近詠
橿原神宮寒夜参拝
大道の貫くあれば寒しろく
寒の星満ちたりあるは吊り合える
ともしびは他所に遠くて凍つるかな
霜白木神橋の夜をわたるかな
星の天うねびみやまに冴え清み
雲浮きて寒夜いよいよ蒼穹に
御まへの松夜を優ぐれ冬盡くる
拍手の谺愼れぬ霜だゝみ
西大寺のほとり
寒かすみ大和はぬくゝ寺の塀
寺小門寒降る木の葉潜るなり
枯れ堤寺から使ひ出でゝゆく
寒雀ものにをどろく寒の空
凍てゝゐる池の柳に名ありけり (百萬柳)
木挽く音へ寺門を出たり刈田ひろ
鴨と覺ゆ曇りに重く一羽去る
枯れしづか歩いてみだすことのあれ
冬の鳥丁々と鳴き誇りける
枯れ徑や媼が我を知るが風に
山眠るが朱をひと刷きの入日雲
むぐら枯れ鳥寐に入し戦ぐかな
寒凪や野奥の障子ほの燈る
奉慶紀元二千六百年
紀元節ありへし紀壽のなほとはに
孔舎衙吟行
村内
村の辻明日のとんどの料積みて
石車石積みすてゝ寒椿
貝塚にて
麥さむき畦に石斧ひろひけり
大龍寺にて
時雨そむ空にともして烏瓜
枯れの音空より時雨かすれきて
早春社新年本句會
人日や日南もとめて茶山ゆく
初富士に総身以て向ひけり
日の春や汀の鳥居磯馴れ松