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映画の日に『白夜行』を観に行く

2011-02-02 12:23:30 | 趣味人的レビュー
映画の日、東野圭吾の同名の原作を映画化した『白夜行』を観てきた。

原作は読んでいないが、本のあの分厚さを見ても、あれだけ長大な原作を2時間半程度で描くには相当な無理をしなければならなかっただろうことは最初からわかっていた。実際、映画は主要なエピソードを点描するようにして最後まで進んでいた。そうした描き方を批判する映画評もあったが、自分自身は原作を知らないということもあって、あまり気にならなかった。むしろ、主要なエピソードの合間に他のエピソードが折り畳まれるようにして入ってくるその描写は、長大な原作を短い時間で描ききる非常に上手い方法に思えた。

それにしても東野圭吾は本当に上手い。映画『容疑者Xの献身』を観た時もそう思ったが、今回の『白夜行』でも改めてそう思った。いい作品を書けるミステリ作家は少なくないが、コンスタントにいい作品を書き続けられるミステリ作家は多分かなり少ない。東野圭吾は紛れもなくその数少ない一人だ。その作劇術はまさに職人芸と言っていい。

19年前の廃屋での刺殺事件と被疑者の自殺とも思える突然の死。一見、単純に見えるこの事件の背後にある底知れぬ闇。『容疑者Xの献身』もそうだが、東野圭吾のミステリは華麗なトリックで魅せるのではなく、常に人という存在の持つ業(ごう)とか闇といったものと不可分に成立している。クライマックスに待っている大どんでん返しも、それなしには成立しない類のものだ。

そしてセリフがいい。『白夜行』では主人公・雪穂の語る「私はいつも夜だった。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから」という短いセリフによって、『白夜行』というタイトルの意味を含めたその作品の構造全体を表してしまう、その離れ業はどうだ。

ところで『白夜行』を観終わって劇場を出ながら、雪穂を演じた堀北真希のどこか人工的な容姿を思い返していてふと、この作品は浦沢直樹の代表作の一つ『Monster』と共通した物語の骨格を持っていることに気づいた。美しい容姿を持ち、人の心を操りながら上へと上っていく雪穂と、人の心を殺戮へと駆り立てていく美しい青年・ヨハン。ヨハンも雪穂も、そうした人格形成に幼年期の体験が大きく関わっている点も共通している。なるほど、自分の心を殺してしまった心を持たない人間とは、こうして生まれるのかもしれない。

さて今度はTBSのドラマ版『白夜行』をDVDを借りて視てみるか。放送は視てなかったからなー。ちなみに、こちらは雪穂を演じたのは綾瀬はるか。YouTubeでちらっと見た限りでは、堀北真希の雪穂より人間性が感じられそうな気がするがどうなんだろう。

それにしても『告白』『悪人』『ヘブンズストーリー』と、最近はそんな映画ばかり観てるな…。でも、この3本が『キネマ旬報』2010年日本映画ベスト10の上位3本になったんだよね。

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