穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

さようなら、多崎つくる君

2013-05-03 15:37:34 | 書評
この小説はミステリーとして終わっていない。エンターテインメントとして終わっていない。

フィンランドへ高校時代のグループ仲間クロ(女性)に会いに行くあたり、正確には会って話したあたりから、冗長になる。ミステリーとしては一番避けなければならない退屈な説明調になる。

最終部は『深刻もの』あるいは純文学風というか文芸ものというか、として締めくくっているが、どう考えてもおさまりが悪い。

余韻を残す終わり方でもないし、ひょっとするとまだ続けるつもりで最初は書いていたのかな。

評価は以下の通り。

前半: 退屈

中盤:テンポ盛り返す。筆なめらか

結末:並、か。失速気味








多崎つくる君昨日はどうも

2013-05-03 11:00:33 | 書評
進行形書評つづき:

どうも昨日読んだところが境目だったらしい。以後大分よくなった。

ホラー、サスペンス味を交えて村上春樹得意のジャンルのごった煮となる。なかなか良質なエンターテインメントに仕上がってきた。

つくる君が「もちろん」と女学生言葉をよく発するのも村上春樹の文体ご愛嬌で気にはなるがだ。

80ページ以降チャンドラーばりの比喩を使いだした。近年数冊チャンドラーを訳したせいか、比喩が気の利いたものになっている。前の村上春樹よりかは洗練されてきた。前には彼の比喩はうまいとも思わなかったが。

ポジション・レポート:207ページ。