書評をするにあたって著者に対する敬意が必要である。この場合出版社から涙金をいただいて書評をしている職業的書評家をのぞく。
彼らに必要な技術は、ゴマスリであり、ヨイショである。どんな本でも褒めてなんぼという世界である。ここで言っているのは報酬をもらって歯の浮くようなコピーや解説を書く連中ではない。
著者に敬意を払うということは、ゆっくり読むということである。著者の中には夢遊病患者のように書き流している連中もいる。流行作家というのは大体そう言う者である。こういう連中は論外であるが、数年かけて長編を書き上げる作家の作品については、ゆっくりと読むのが礼儀である。
よく、長編を徹夜で読んだ、面白いから、というヤツがおるが論外である。7年ぶりの小説を同じく七年かけて読めと言っているのではない。せめてワン・シッティング20頁くらいのペースで読むのが礼儀であろう。
一般読者は作者に対する敬意を払うという義務があると同時に支払った書籍代で批判権を購入したということも言える。文庫で700円、800円を払ったら、それだけの批判権が発生する。これを作者、出版社は否定することは出来ない。