穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

11-3:ギリシャ悲劇を幼児ポルノ風に解釈したフロイト

2018-10-29 13:00:14 | 妊娠五か月

 フロイトは二十世紀を風靡した天一坊のような男、精神分析学の太祖であります。彼の学説で一番有名なのはエディプス・コンプレックス学説でしょう。これはギリシャ悲劇を無学の悲しさから幼児ポルノ風に解釈したものでした。

古代ギリシャ、テーベの王子オイデプス(エディプス)は生まれた時の予言で父を殺すと言われて山の中に捨てられました。しかし、親切な羊飼いに助けられ隣国の王の養子として育てられました。

成長したオイデプスは旅の途中で通行を巡っていさかいに巻き込まれて相手を殺してしまった。これが自分の実父だったというわけです(これは劇の最後で明らかになります)。当時テーベは困難な時代でしかもスフィンクスに謎をかけられて、それが解けないために亡国の危機にあった。オイデプスは立ち寄ったテーベでスフィンクスの謎を解いて人民を救った。そこで国民に推戴されて王となり、前の王の妃(つまり実母)と結婚するという悲劇ですが、フロイトはこの悲劇を読んだことがあるのかどうか、母親を性愛の対象とする性癖が人間に本来的にあるとこじつけてエディプス・コンプレックスとなずけました。これが無学な、とくに前世紀のフランスの哲学者たちに大うけとなりましたとさ(現代でもそうかもしれません)。

つまり実母に性欲を感じたのではなく知らずに結婚させられたのです。また父とは知らずに相手を殺してしまった。だからこそ悲劇のテーマになるわけですが、これをフロイト先生は自分の無意識の欲動からか幼児ポルノに貶めてしまった。

 


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