「占星術殺人事件」は真ん中あたりから小説らしくなってきた。ハカがいきだした、読むのが。現在387ページ、読者への挑戦というのがボールドの活字で印刷してある。
これは前半の四十年前の事件をノンフィクション本を見ながら説明するという制約から解放されたためだろう。作者の筆の立つところが見え出した。ところでこの小説の通奏低音は何だと思いますか。たいていの読者の答えは占星術と答えるだろうが、私は人形師だと判断する。人形作者と言ってもいいし、マネキン製作者といってもいい。アゾートという生体の人間の各部をつなぎ合わせて人形(マネキン)を作るなどと言うマッドサイエンティストもののホラー小説と言える。
ここで昨日読んだ彼のウィキペディアを思い出した。彼は武蔵野美術大学の商業美術デザイン科の卒業だという。中盤の「推理旅行」と「アゾート追跡」の章はワトソン役が京都の人形作者(プロとアマチュア)をたずねてまわる話だ。殺された画家が生きているという想定の下に巡礼するわけだ。島田氏は馬鹿に力を入れて書いている。人形作り、マネキン作りといえば、彫刻のような純粋?芸術とちがい、いかにも商業美術の分野だ。島田氏が詳しいのも分かる。
ウィキペディアによると彼は卒業後ライターやミュージシャンをしてから作家になっという。ミュージシャンは分かるがライターと言うのは何だろう。小説家と言う意味ではないから漫画でも書いていたのかな。
ま、とにかくこの小説の主たる通奏低音は人形遣いであることが分かった。人形師というのかな、には変わり者が多いそうである。人形というのは元来気持ちの悪いものだ。特に写実的なものは。呪術では主役だしね。そんなこんなで段々この小説が理解できて来たようだ。
この「読者への挑戦」にこんな言葉がある。『読者はすでに完璧以上の材料を得ている、、、、』。私はそうは思わない。それを証明するのが以降のアップとなるであろう。少なくとも作者は『フェアプレイ』を演じてはいない。