ハイキング登山が出てくるとまたか、と思う。使いまわしは一向に構わないが、漱石には山登りが書きやすいのかな。二百十日、草枕、虞美人草。
そして登山が出てくるとやたらに漢語を披露する。もっとも漢詩は自然しか歌わないからそうなるのか。人事の漢詩もあるが、ほとんど左遷の鬱憤をはらすものだ。
前にも書いたが、漱石の漢語は知っているぞ、と誇示しているだけで文脈にマッチしているようには思えない。もっとも、こちらの漢語に関する知識がないだけか。
ここで三人の年齢比較。明治元年をゼロとするとそれぞれの生年は、
森鴎外 マイナス6歳、夏目漱石 ゼロ歳、永井荷風 12歳。
明治の作家は皆漢文の素養があったから他の作家も比較する必要があるのだろうが、いくらか読んだのが上の三人なので。
うまいのは鴎外と荷風だろう。しかし、鴎外の格調は現代の無学なものにはなかなか分かりにくい。荷風はこなれているというか、工夫がある。センスなのかもしれない。
年齢からいくと、漱石は鴎外よりこなれていてよさそうだが。